するべきことをしないと
森を抜けるまでの1日半近く、私たちはほとんど言葉を発さぬまま歩いていた。
その後森を抜け荒野地帯になったころ。
「それにしても……、なんで私たちの居場所がまたバレたんだろ。まだあの液体が体についてるのかな?」
そう訊いてみた。
フェイサートに私たちの居場所がバレた理由はわかってる。
私がリラル族の集会に潜入した時、どうやら髪の毛が落ちちゃったらしくて、フェイサートに侵入者がいたことがバレた。そこからDNAをたどって私が街にいることもバレ、あの襲撃の瞬間までに泊ってる場所を見つけたらしい。
リラル族たちには私がいたことは言っていなかったらしいけど、いやはやこの国の科学力は恐ろしいね。個人でDNAを調べられちゃうなんてさ……。
ってか私の危機管理もダメダメだったな。髪の毛なんて人によってはそれを悪用した魔法が使えたりするかもしれない。気を付けないと……。
って違う違うそうじゃない。今はなんでアバスさんのとこに私たちがいたのがバレたのかってとこだった。
「それはないよ。フェイサートにも確認したでしょ。あの通信機は機能していない」
あ、そうだった。
「フェイサートが賞金首を捕まえたことをクレルラルに報告して、その通信を賞金稼ぎに傍受された、んだと思う。それで襲撃の様子をドローンか何かで確認してて、落ちた場所からあの森を捜索したとかじゃないかな」
とアルノが予想を立てる。
「まあそれなら、今いる場所がバレる可能性は低いか」
「まあね。予想くらい立てられるかもしれないけど」
それなら少しは安心かな。少なくともしばらくは追手が来ないだろう。
「アルノ、大丈夫?」
前とは少し雰囲気が違う。
王になってとか押し付けちゃった上に、幼少からの知り合いが亡くなった可能性があるのだ。
そりゃ気持ちも沈むよね……。
「大丈夫。ただ少しずつ気づいてきただけだから」
「え?」
何に?
「リラル族とかクレルラルの国を救いたいとか言ってたけど、それって結局上から目線の同情だったよね」
静かに言う。
「夜空ちゃん、フラウロウでの事件の後から少し雰囲気変わったなって思ってたんだけど、やっとわかったよ。ボク、このままじゃダメだって」
「……大丈夫?」
「うん。婆様に言われたから。ボクはやるべきことをやらなきゃ。この国を救うために」
「……うん。そうだね」
吹っ切れたのとは違うと思う。
今はこのまま歩いていないと折れてしまいそうだから止まれないといった様子だ。
しっかりと私が支えてあげないと。
「で、この後どうしよ?」
「安心して、計画はある」
そう言ってたね。
「まずはサーザの街に行こう」
「サーザ? えっとどっちの自治区?」
一応事前の情報を聞いておきたいと思ってきいた。
「どっちの自治区にも属さないんだ歴史的にあいまいでさ」
「へ、へえ。どんなとこなの?」
「金と欲望が支配する、この国で一番治安の悪い街だよ」




