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来客

 翌朝。


「おはようございます……」


 朝のシャワーを浴びてあくびをしながら階段を上がると、朝食のいい香りが鼻をくすぐった。


「おはよう。目は覚めた?」


 アルノが聞いてくる。


「まあ少しね。あ、朝ごはんの準備手伝えなくてごめんなさい……」

「いいんだよぉ。気にしなくて」


 本当に優しい人。

 それはそれとして、エネルギーとか関係なしに朝は弱いんだよね自分って。


「ノアちゃんは?」

「倉庫また見せてもらってるってさ」

「あたし自信何があったか完全に把握しきれてはいないもんでね。持っていっていいものがあれば、持ってっていいよって言ったんだよ」


 ふーん。

 ノアちゃんたら熱中できるものがあるんだなぁ。本当に意外だったな。

 席につきながらそんなことを思った。


 コーンッ。


 部屋にベルが響く。来客を知らせるものだったはずだ。


「来客ですか? こんな森の中に朝早くから……?」


 不思議に思って訊いた。


「時々あるんだよ。森に彷徨った果てに、煙突の朝の煙が見えて駆け込んでくる冒険者やら、賞金稼ぎなんかがね」

「泊めてあげてるんですか?」


 そういいながらアバスさんが席を立ち玄関に向かって歩き始めた。


 コーンッ。


 2度目ベルが鳴る。


「はいはい、今行きますよ。全くどれだけ腹を空かせてるのかね」


 そうドアに手をかけた時だった。


 ダッダッダッダッ!


「ダメ!」


 下から走る音が聞こえたと思ったら、ノアちゃんが出てきてアバスさんを制止した。

 しかしもうドアを開けようとしていたアバスの動きは止められず、開いてしまう。


「な、なに?!」


 その瞬間爆音が聞こえ、玄関の方は粉塵が舞いあがる。


「どうやら道に迷った旅人じゃあなさそうだね。いきなり何すんだい」


 アバスは少々乱暴な言い方をするが、言葉とは裏腹に冷静にバリアのような物を貼り、その攻撃を防いでいた。


「ふっふっふ。流石はかつて勇者のパーティメンバーだった女。よくやるじゃないか」

「サインはやらないよ」

「いるかぁ! んなもん! 我らの狙いは後ろの小娘どもだけだ」


 赤い全身タイツの男とアバスが言い合う。

 家が吹き飛んだせいで見えるようになったが、あの私たちが脱獄した日にいたなんか愉快な5人組全員集結してくれやがっちゃっているみたいだ。


「まったく。どうやって私たちを見つけたんだか……」


 そう呟きながら刀を抜いた。

 正直、圧とか動きとかさっきも魔術を見た感じ、正直私が遅れを取る相手だとは思えない。

 だけどこいつらがどんな能力を持っているかもわからないし、油断はできない。

 それに相手は5人。どうなるか……。


「あんたらはお逃げなさい」


 そういってアバスさんが振り返る。


「え? でも……」

「あいつらは嬢ちゃんたちが狙いなんだろう?」

「そうです! だから!」

「でもあんたらにはそんな時間はないはずだ」

「こいつら蹴散らすくらいなら何とかなりますよ、ノアちゃんもいるし」

「それはむり」

「は?!」


 戦闘行為に対して初めて消極的な言葉を口にしたノアちゃんに驚いて振り返る。


「冗談でしょ?!」

「冗談じゃない。あいつらは全部魔界の者。私は魔界の者に対してだけには勝てない」

「そんなこと言ったって!」

「夜空ちゃん」


 アルノが小さく言う。


「逃げよう」

「アルノまで?! 何言ってるの。ここで逃げたらきっと!」


 アバスさんは殺される……。


「わかってる。でも、今は逃げないと」


 ぐぅっ。

 そ、そうなんだけど……。


「う、くっ、わかったよ。私は敵がいるのとは反対の森に駆けだした」

「逃がすか!」


 そう言って敵が放った攻撃をまたもアバスさんがバリアで防いだ。


「婆様……」

「どうした? あんたも早くいかないかい」

「……」


 後ろでアルノがまだアバスさんの後ろに立ったままだった。


「会えてよかった」

「あたしもだ。アルノ?」

「なに?」

「今は泣いてちゃいけないよ。すべきことをなさい。泣くのはその後でいくらでもできるさ」

「……ありがとう」


 それだけ言い残し私たちは森の中へ駈け込んでいった。

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