恨みの記憶
―――クラウノ、フラエル大使館・地下の隠れ家
「で? あんたらはどうして助けてくれたんだ? 何で俺の処刑を聞いた?」
「聞くまでも無いでしょ。そりゃフラエル皇国にだって暗部とか、大使とかいるでしょうし、そういうとこから情報は得られるでしょう」
愛歌が言った。
「それもありますし、エルリフィ様はあなた方をとても気にかけているようでして」
「なるほど」
同じ超人同士ってのもあってシンパシー感じてくれてんのかね。
「わざわざ公開処刑になってくれたのは助かりました。助け出すのにも苦労しませんでしたから」
「それはありがたかったけどさ。いいのか? エルフがやったってバレたら、それこそ国際問題だろ」
「いいんですよぉ、戦争にでもなっちゃえば。こんな国」
「ディーナ。国に仕える者が、あまりそういう事は言うもんじゃない」
俺を助け出してくれたエルフの内の一人の女の子が毒づくと、それをレイが窘めた。
「どういうことだ?」
「……あなたがたは別世界の人間ですから詳しくありませんよね」
「ほら、フラエル人……、主にその中のエルフとクレルラル王国のクレイ族って、基本的にあまり仲良くないのよ。表向きの国家間の関係は良好なんだけど」
愛歌が知ってる知識を話してくれる。
日本人と中国人とか、イギリス人とフランス人みたいな感じってことかな?
「あれか、昔、エルフが攫われて人身売買させられてたっていう……」
エルフは人に比べて長命だ。
歴史を越えた種族内間での記憶や恨みは、人間よりも濃く残りやすい。
「昔じゃありません! 今だってあるんです!」
女の子が言った。
「もちろん政府は廃止してますし、無いとは言ってますけど」
「何百年も良い対策をしていない。それは黙認してるともとれてしまうんですよね」
レイが言葉を選びながらもそんな事を言った。
「だから我々エルフはあまり、クレルラル王国に対していいイメージは持っていないんです」
「エルリフィ様も帰ってきたことですし、潰してしまえばいいんです。こんな国」
まあ仕方ない気はしてくるよな。
んで女の方はだいぶ思想が過激だな。
「ま、そんな戦争が起ころうが、俺たちの知ったことじゃないがな。俺の仕事には関係ないし、この世界の事はこの世界のやつらが知ればいい。それよりもだ」
本題に入ろう。
「テスラニウムについて、教えてくれ」




