潜入
愛歌がいなくなった後、俺も調査を始める。
まずここから見て取れるもの。
何かを作ってる……、なんて当たり前のことは置いておいて……。
「ライン作業をしている様子はないな。ってことは危険な武器を量産してるって感じじゃない。何かでかいものを作ってるって感じか」
なんだろうな。
空母、とか? いや魔法がある世界だと、航空機は不利にさえなることがある。墜落させることも簡単にできるから。
この世界での大陸間の移動に飛行機が使われなかったのはそれが理由だ。
「だが、テスラニウムを使えばあるいは……」
テスラニウムの兵器でも作ろうとしてるってことか?
「もう少し近づいてみるか」
隙を見て一階に降り影に。
スーツを拡張ステルスモードに切り替え、小さいロボットを放った。
暫く待つと、話し声が聞こえてくる。
『結局これって何のパーツなんだ?』
『さぁ? 噂では、城みたいな戦車作ってるんだって』
『それって実戦に役に立つのか?』
『威嚇にはいいだろ』
『なるほどなぁ』
その後声が遠のく。
「作ってる奴らも何させられてるのかわからないのか……。ん?」
また、違う声が拾われた。
『マールズ様って怖いよな。何考えてんだかわからねぇ』
『し。その名前を誰かに聞かれたら、殺されるわよ』
「あーあ、ごめん、聞いちゃった。ま、口は硬い方だから許してよ。アルノ辺りにしか言わねえから」
今度は知っちゃいけないことを知ってる奴らの会話らしい。
……マールズって誰だ? 王の名前はノスラだし……。
愛歌なら何か情報持ってるかな。
『でもよ、王に隠してこんなもの作ってるんだぜ? バレたらどうなるか……』
『いいのよ。あの方は王より権力持ってるんだから』
『マジか』
『だから静かに。これは秘密にしてよ。あのね、アルア様いらっしゃったじゃない?』
アルアは、ノルアの母親だったはずだ。
『ああ、優しい方だったな』
『そう、その―――で―――に―――って話なの』
あーくっそ。大事なとこが何処かの作業音で消えちまった。
なんだ? 嫁姑問題の逆バージョンでも起こってるとかそんなんか?
『それは、また……』
『とりあえず、殺されたくなきゃ手を動かしときなさい』
『でも、完成したら完成したでヤバそうじゃないか?』
『その時はその時よ。何とかするしかない』
『マジか……』
その後の会話は意味のない物になる。
とりあえず、片方の詳しそうな方を捕まえて、何か聞き出すか。
そこまで考えた所で後ろから声がした。
「おい!」
あちゃー。話を聞くのに夢中になっちゃって、見つかっちゃったらしい。




