電子世界
―――クラウノ・インターネット内・愛歌―――
「あーもう! しつこいなぁ!」
追いかけてくる敵に攻撃を当てるが、一体撃破しても一匹また一匹と敵が増えていく。
そいつらの攻撃を電子の海を逃げ回りながら回避しながら応戦する、その様はさながら航空戦のようだった。
海と言っても観測者である愛歌のイメージでしか無いのだが。
今追いかけてくるのは、とある場所を守っていたセキュリティソフトみたいなもの。
ちょっと気になってつついたのは好奇心旺盛な愛歌には仕方がないが、少し手元を狂わせて解除に失敗したのは不味かった。
あーあ、つい先日、ウイルスをやり過ごしたばっかりなのに……、と愛歌はため息を吐く。
(同じ電子世界と言えど世界が変われば勝手も違って、どうも上手く行かないことが多いわね。とにかく今は何とかやり過ごさないと)
「あ、やっば……」
調子に乗って上に飛び過ぎて、いつの間にか電子の海から出てしまっていたらしい。
本当の海で例えるなら魚が海から飛び出してしまったような感じ。
まだ情報が詰まっていない電子世界、とでも言うべき場所。
電子の海にいた生物がここへ出てしまうと、情報化された体が溶けだしてしまう。
早く戻らないと。
「とは言っても、あいつらが帰る道塞いでるんだよね……」
下を向きながらつぶやく。
しかし躊躇していたら消えてしまう。白の所に帰ればいいだけなのだが、それは愛歌のプライドが許さない。
気力を溜める。
「これでどう?」
自分の周りに気力を放射し攻撃しながら、海に飛び込む。
セキュリティソフトのたちは、愛歌の闘気で爆散していった。
「上手くいった。やっぱり私、天才」
追いかけてきた敵は今の攻撃で倒せた。残ったのも電子世界の外海に溶けたみたいだ。
そのまま暗い海の底を目指す。
そして、しばらくたって……。
ドンッ
という鈍い音が海に響いた。
黒い海底に立っている。
この下はより深い情報の世界。地球で例えるならダークウェブ、と言うべき場所。
「さーて、せっかく来たんだから、この中も見ていかないとね。どうしようかな」
なんてゆっくり考えていられるような愛歌じゃない。
思い立ったら、とりあえず行動するタイプだ。
左手をダークウェブの表面に置き、少しづつ中に入れていく。
その腕が、何やら聞き覚えのある人物に関する情報を感知する。
「え?! 白、逮捕されてるの?! 国家転覆の容疑?! 何それ?!」
途中から魔力が供給されなくなったと思ったらそういう事か……、と呟く。
一度ダークウェブから離れ、もう一度サーフェスウェブに戻り情報を集めなおす。
「あいつ何やってんのよ! もう!」
愛歌はダークウェブを諦め、電子世界を抜け出した。




