フェイサートの技術
「で、あいつの能力、どうにかならないの?」
何とか離れたとこまで逃げてきてアルノに訊いた。
「能力じゃなくてアーマーの機能だけどね」
アルノが答える。
「さっきも言ったけど、物体の密度を変える技術をもった装置、量子状態制御モジュールをアーマーに搭載して、攻撃を無効化する技術だよ」
本当に、科学力が進んだ国だなここは。
「本来そんなものを人体に使用すれば、原子の結びつきが失われて……、つまり体がばらける危険があるんだけど、それをアーマーと本人の判断力と腕で制御してるんだ」
もし失敗したらって考えると怖いね。
「弱点があるとしたら、膨大なエネルギーが必要になることかな。このアーマーを作って、船にエネルギー発生装置を設置、離れた場所からエネルギー供給する、って狩りの技術を生み出したのは他でもないフェイサートだから」
よくまあ思い付くなそういうこと。
「でも、あの船硬かったよね。破壊は無理じゃない?」
船ってのは多分あの上空に浮いていたSEL-Sの事だろう。
「うん、あれは虹金鋼だと思う」
それはなに?
「武器によく使用される金属である黄金鋼、青金鋼、紅金鋼、これらをとある一定の量で混ぜると出来上がる、魔法金属だよ。あらゆる分野に応用できて、どんな金属の上位互換にもなる特殊な金属。シンノミヤで作り出されたんだ」
いわゆるオリハルコンとかなんか、そういう類のものかな。
「そんなことはどうでもいい」
ノアちゃんが話に入る。
「私たちはなんで見つかったの?」
と確かに気になった事を訊く。
「一人にならまだしも二人に見つかっている。偶然では片づけられない」
「えーっとなんでだろ……。あ、捕まったとき、何か変な液体かけられなかった?」
「あ、かけられたよ。黄色のねばねばしたやつ」
それがどうかしたのかな。
「それには粒子状のマイクロチップが入っててね。たぶんそれで追跡されてるんだと思う」
え、なにそれこわ。
「なるほど」
「でもシャワーで洗い流したよ?」
「そんな簡単に流せちゃうものなら使ってないよ。完全に流しきるには時間がかかるはず」
そっか……。
「とはいえ、かなり広い範囲でしかキャッチできないはず。だから、今すぐに見つかる可能性は低いと思うけど」
大体の居場所はバレちゃうってわけか……。
そんな事を考えていたらノアちゃんに何かをかけられた。
「冷た! 何するの?!」
「私の特性で白から少し分けられていた水闘気力を使って洗い流した」
あ、なるほど。
「今すぐ確認できる装置がないからわからないけど、これで多分追跡は困難になったはず」
それならいいんだけど。
不安だな……。
「とにかく街に急ごう」
「うん」
私たちは荒野を急いで歩いて行った。




