火山の街タイトム
知らない天井だ、なんてそんな事、寝起きに考えられないでしょって思ってたけど、意外と考えてしまうこともあるんだね。
「あ、夜空チャン。起きた? 丸一日寝てたんだよ」
「え? ホント?」
「うん。夜空ちゃん、魔力の保有量が多いから。回復に時間かかってるんじゃないかってノアチャンが」
うう。たしかに頭がまだボーっとしてるなぁ……。
体を起こして周りを見渡す。ここは円形の部屋。外を一望できる大きな窓がついている。
雰囲気的にホテルっぽいけど。
「あ、そっか。私たち、クレルラルから逃げ出して……」
この町に飛んできてすぐこのホテルを見つけてここに泊まったんだった。
「そういうこと」
ベッドから出て窓の外を見る。
周りには煙が立ち上る煙突が多く見えた。あと大きな火山がある。
「ここは?」
「タイトム。トナクノイド大陸の北北東に位置している町。人口の殆どがALE-SとALE-Aで構成されている、世界一、冷たい町だよ」
ノルアちゃんが悲しげに嘲笑する。
この国の人工知能が搭載されたロボット、いやアンドロイドっていった方がいいかな? スマホじゃなくてね。
そんな存在をこの国では"ALE"と呼ぶ。エールじゃない。
ALE-Sは同じ仕事を繰り返す作業用ALE。ALE-Aが人間の生存が難しい過酷な環境での仕事をするためのALE。
「なんでALEしかいないの?」
「あの火山ではトナクノイドの特産、青金鋼が多く採れるの。でも、マグマ付近で作業することが多くなるから、人からALE-Aへと仕事が移行していった……。結果ALEばっかになっちゃったってわけ」
「なるほどね」
そこまで話すと部屋のドアが開いてノアちゃんが入って来た。いつも以上に深くフードを被っている。
「おかえり。どうだった?」
「この街の出口は封鎖されてた」
「……え?」
「いいものあげる」
そういって見せてきた三枚の紙には、それぞれ私たちの写真が載ってる。
下には何やら金額らしき数字も。
「な、なにこれ……」
「私たちの手配書。合計3億フルかけられてる」
フルはフラエル皇国だけでなく世界共通通貨となっている。
「さ、3億?!」
円換算したら35億越えだよ?!
「そう」
「うっそぉ……」
現実味ない……。某海賊ですら最初は3000万だよ。
「ここもバレるのは時間の問題、早く離れたほうがいい」
「とは言ってもさ、この町を見つからずに出る方法はあるの? 出入口、封鎖されてるんでしょ?」
「一応あるにはあるんだけど、危険なんだよね」
その方法っていうのは、火山のトロッコを使う方法らしい。
そう。マグマの上を滑走するトロッコ……。
「確かに危なそう……」
「やっぱりそうだよね」
と二人で悩んでいると、ドアを勢いよく叩く音と大きな声が聞こえてきた。
「やっぱり、見つかったみたい」
どうやったのか知らないけど、ここをかぎつけられたらしい。
ノアちゃんが魔術を使ってドアを凍り付かせた後、土属性魔術を使いドアを抑えて侵入を妨害した。
「ど、どうする?」
私たちがあたふたしていると、ノアちゃんが呆れたようにため息を吐いた。
「少しは頭を使って。出口ならもう一つある」
そういうと同時に、ノアちゃんはどこからともなく取り出した銃で窓を撃って割った。
「え、嘘……」
それって、頭使ったことになるのかな。
ここ最上階なんだけど?
「行くよ、火山に」
「いや、まだそうと決まったわけじゃ……」
「何にしても早くこの町から出ないと何もできない。時間はない。方法はある。ならそれを使うまで。私は一人でも行く」
そういってノアちゃんは飛び降りていった。
「しょうがない。行こうか」
「だね……」
機械色の町に飛び込む。




