新たな旅立ち
「で、あんたは今後どうするんだ?」
今後の方針が固まった頃、白がエルリフィに訊いた。
「というと?」
「またどっか別の世界に行くのか? それとも帰ってきた天帝として君臨するのか?」
「そ、そうです。相の様な小娘より、やはりあなた様の方が」
「嫌じゃ!」
エルリフィがミファの言葉を切った。
「でも……」
「妾は天帝からは引退したのじゃ。その時にしかと次の天帝に引き継ぎも行った。今も天帝がエルリフィであるとなっていることに驚いたほどじゃ。あんなつまらない仕事を何百年もさせられるのはごめんじゃ」
自分で作った国なのに……。
「かといって、他の世界めぐりも飽きたのでの。数百年はまたこの国で暮らしてみようと思うでな。必要であれば、アドバイザーくらいにはなってやってもよかろう」
「! あ、ありがとうございます!」
とのことだ。
まあ、これでミファが楽になるならよかった。
*
「なんじゃ? こんな時間に呼び出して、妾に求愛でもするつもりなのであれば、1000年早いぞ?」
その夜俺は、個別で話したいことがあったため、人目の付かない場所へエルリフィを呼び出した。
「ああ、そりゃ、物理的に本当に早いよな」
エルリフィのジョークを受け流す。
「あんた、世界を自らの意思で渡れるんだろ?」
「ああ。その通りじゃ。妾の魂源、飛翔は空だけでなく、世界の間ですら翔けることができる」
「それ、俺にも使えるのか?」
エルリフィが驚いたような表情を見せた。
「む? なんじゃ? 過去に行った世界に想い人でも置いてきてしまったのかの?」
「ああ、そうだ」
からかうように聞いてきたエルリフィにそう返した。
「む? そうか。まあ、超人であればない話でもあるまい。そういったことに興味ないようで、そなたも隅におけぬな」
そういって少し真剣な表情になった。
「が、すまぬな。妾の飛翔は妾自身限定の能力じゃ。そなたを他の世界に送るというようなことはできぬ」
「……そうか……」
「そう気を落とすでない。いつか必ず、世界を渡る方法も見つかるじゃろ」
「ああ、ありがとう」
その後、お互いの過去の話をして、一晩を過ごした。
超人としての会話をする機会はめったになかったから少し楽しめた。
*
「さてと、この町ともお別れだな」
少したって準備を終えた私たちは、フラウロウから新たな地を目指すところだった。
「そうだねぇ。結構長くいたからちょっと名残惜しいや」
そういったのは私たちのパーティの誰でもなく……。
「アルノ、なんでお前がいんだよ」
「ボクのパーティは実質解散だからね。同じ新蜂なんだし、仕事手伝おうかと思って」
「手伝い?」
「うん。戦闘能力じゃあ、白クン今からクレルラルに向かうんでしょ? 前にも言ったけどボク、クレルラルの出身なんだよね。にわかには信じがたいけどみんな別の世界から来たんでしょ。じゃあ勝手もわからないだろうし、色々と案内してあげられるよ」
確かにそれはありがたいか……。
それに今のアルノを独りにしちゃうの、ちょっとかわいそうだしね。
「はあ、しかたない。ついて来いよ」
「やった! じゃあレッツゴー!」
この世界に来て1年と少し。
やっと私たちが目指すべき敵の姿が見えてきた。
しかし、そのために払った代償はあまりに大きかった。
今度は多くの人を救えるようになるため、私は新たな地を目指す。
これにて第2章完です。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます!
少しブレイクを挟み、次の物語をまた書いていきたいと思いますので、またお付き合いくだされば幸いです。