敵の狙いは?
「ってことは、敵組織、えーっと正義の弾丸軍とか言ったか? そいつらのトップが天界出身者なんじゃないか?」
白が言った。
「天から堕ちた者の中からまた新たな魔王が生まれようとしているという事か」
「あ、そうだ。前に翼を持ってる男に会ったことがあるよ。あれがもしかしたら敵のボス?」
「それはどうでしょう? その契約では天から来たものの意思が介入していたらもうだめなんだそうで、敵の重役に天界出身者がいれば、敵は手出しができないはずです」
……。
かといって、敵のトップかそれに近い立場に天界出身者が契約の石を奪おうとする意味がないよね?
「そんなの簡単よ。自身が所属しない別の組織を知り合いかなんかに作ってもらって、自分がその組織に関わらなければ、それで済む話じゃない?」
愛歌が言った。
「ふむ、つまり正義の弾丸軍には天界の者は存在していないが、そのトップと親交の深い、志を同じくする天界出身者がいて、その者がこの世界で自由に行動できるようになるため、契約の石を狙った、と考えられるという事か。ありうるな」
エルリフィがそれを纏める。
「ってかちょっと話戻るんだけど、なんでエルリフィは死神があの石を狙ってるってわかったんだ?」
「ん? 前も言ったであろ。妾は勘がいいのじゃ」
勘って……。
「その上で、この説も正しい気がする、と妾の勘が言っておる。契約の石がなくなったということは、この大陸の守りが失われたということになるのかの?」
「勇者様曰く、三つの石を破壊しない限り、その石を失った大陸もしばらくは護られるらしいです」
「うむ。ならばよい。まずは、この事を他の国に伝え、石を守ることが先決であろうな。そなたらに任せてもよいか?」
と、今後の方針が固まってきて、天帝が私たちに訊いた。
「それはいいんだが、レェスの方はどうなった? 今の話を聞かせてみて、真義を確かめてみたほうがいいんじゃないか?」
「……」
確かになと思ったが、エルリフィたちは口をつぐんだ。
少し間を開けた後、口を開いた。
「奴なら死んだ。自ら舌を噛みきってな」
「?!」
「先日、そこのアルノを連れて、尋問をしてみたのじゃ。しかし思ったよりも口を割らなくての」
「で? 拷問でもしたか?」
いやいや、こんな優しそうな人がそんなこと……。
「それも辞さないと脅したのだがの、翌日赴いた時には死んでおった」
……。
ああ、この人も超人なんだな……。
「なるほど」
「と、いうわけじゃ、これ以上の情報を得るのはあきらめるのじゃな」
まあ、仕方ないか。