本物のエルリフィと契約の石
「で? あんたは結局何なんだよ」
数日経って落ち着いた頃、私たちのパーティとアルノが、天帝ミファ、そしてエルリフィと名乗る女性の元に呼び出された。
そして開口一番、白がそういった。
「言ったであろう。妾は」
「この国を作ったエルリフィその人、もう聞いたよ。そういう事じゃないのはわかってるだろ」
「ふむ。せっかちじゃのぉ」
エルリフィはさらに続ける。
「妾は超人じゃ。そなたらと同じの」
「なるほど。それで通常のエルフより長寿なのか。その強さにも納得だ」
死神を指先1つで追い返しちゃったって話だもんね。
「じゃあ、なんでこの国にいなかったんだ?」
「建国から800年ほど経った頃の事じゃ、色々とやっていた事も片が付いてのぉ。超人として戦い、天帝として生きてきた。しかしそろそろ、天帝の座を降り、余生を好きに過ごしてみてもいいのではないいかと思ったのじゃ」
まあ、疲れるよねぇ、王様ってきっと。
その上、私たちのように超人としてもこき使われてたんじゃ、身が持たないよね。
「妾は自身の意思で世界を渡れるのでな。この400年は様々な世界を放浪しておった。そして、たまたま何となく帰ってきてみたのがあのタイミングだったのじゃ」
「! いや……、まあいい。納得はいった」
白が一瞬なにかに反応したが、いったんそれをおさめたようだ。
「で? あの契約の石っていうのは?」
「む、それは知らん。妾の記憶にもないものだった。保管されていた棚にはルーナムストーンと書かれていたが、あれは妾の時代に壊れて失われたからの」
ああ……、渡しちゃった石って、私が遺跡から持ってきちゃったやつか。
「その事については、こちらの天帝様の方が詳しいのではないかの」
いたずらっぽくそういって、ミファを見た。
「お、おやめください! エルリフィ様にそのように言われては相はどうしたらよいのかわからなくなります」
ミファは前とは雰囲気が変わっている。
こっちが素なのかもしれない。
「契約の石は……、暗黒期終了直後に勇者がこの世界に遺していった物です」
「勇者が?」
白が訊いた。
「はい。なんでも、当時の魔王の正体というのが天界にいた神の一柱が堕ち魔に染まったものであったそうで……。この世界では二度とそういうことが起こらないようにと置いて行ったのです。各大陸にひとつづつそれが置いてあれば、この世界に天界出身者は手出しができない。そういう護りを作り出しているのだとか」
「そのような強力な守護の魔法が100年もの間継続していたと?」
今度はエルリフィが訊く。
「勇者様は天界出身者だったそうで、自身の行動も制限も代償にそのような魔法を成立させたそうです。その石が悪しきものに壊されないよう、相も知らない場所にロンに隠してもらったのです」
なるほどね。
だからあんなとこにあったんだ。納得。
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