第一次フラウロウ災戦 (12)
大樹にリーフさんを送り届けた後、アルノとは別れてしまった。
「今は一人にさせてほしい」
それだけ言われてしまった。
この災禍の中一人にするのは不安だったのだが、馬で駆けて行ってしまったため、追いかけるのは不可能だった。
仕方なく私は一人で救助の任務に戻ることになった。
正直、私ももう体力的にもそうだが精神的に限界が来始めていた。今はそれを押し殺して体に鞭を打ち、魔獣の駆除と救出をつづけた。
「うあああああ!」
「?」
どこかから人の叫び声が聞こえた。もう今晩には何度も聞いた声だった。そのせいかもう慣れてきてしまっている自分が怖い。
すぐにそちらの方に向かった。
その場を見ると、男性が何かに襲われていた。
最初は魔獣かなと思ったのだが、どうやらそうではなさそうだ。
人だ。トリカとは別の女の子が大剣で襲っている。
「まだ、あいつらの味方がいたの……?!」
もう、限界だ。
ノアちゃんに言われた通り、私の任務は救出。
助け出すだけ助け出したら、私もいったん隙を見て逃げよう。
そう思って、女の子が男性に斬りかかったとき、その間に入り受け止めた。
「早く逃げて! 大樹に! はやく!」
疲れから強い言い方になってしまう。
「は、はいぃいい!」
男性が逃げていくのを見た。
「夜空、お姉さん?」
「え?」
その声ではじめて女の子の顔をちゃんと見た。
「"星"ちゃん……?」
そこにいたのは、フラウロウの地下の研究施設、そこの長期睡眠装置で眠っているはずだった星ちゃんだった。
「なんでここに……?」
「目が覚めたら、目の前にあの死神がいて……」
あの死神もこのフラウロウに……?
「私に新しく呪いをかけていったの。体が勝手に動いて……、人を殺そうとするの……」
「そ、そんな……」
今の私にはあの死神の呪いは解けない……。
どうしたら。
「ねえ、お姉ちゃん……」
「?」
「お願い。私を殺して……?」
「え?」
私が星ちゃんを……?
「は、白なら! 白ならきっと、解呪できるから」
「もう無理なんです!」
星ちゃんが叫ぶ。
「もう、限界なんです……。体を抑えつけるのがもう……。この呪いはきっと気を失っても、継続する。いや、気を失ってしまってはもう歯止めが利かなくなる……、だから」
星ちゃんが悲しそうに微笑む。
「お姉ちゃんになら、殺されてもいいよ? だから……、お願い……」
「っっっ!」
『感情論で動いていい時だと思う?』
躊躇する私に先ほどのノアちゃんの言葉が叱責する。
そして。
「ぐっ、ふぅ……」
気づけば、星ちゃんの苦しそうに漏らす声が、耳元で響いていた。
心臓を一息に貫いたのだ。
「ありがとう、夜空、お姉ちゃん……」
星ちゃんの力がどんどんと抜けていき、私にもたれかかっていた。
次回以降も読んでいただけたら嬉しいです。