第一次フラウロウ災戦 (11)
―――白サイド。
その異常に気付いたのはだいたい、3万近くの魔獣を駆逐しきったころだ。
「数を減らしやがらねぇぞ、こいつら!」
『ええ、何かがおかしいわ……』
それだけの魔獣を屠ったというのに、一向に魔獣が減った気がしないのだ。
「はぁああああああっ!」
でかい敵一匹に強力な一撃を叩き込む。
その周囲、そして後ろにいた奴らをも同時に霧散させることができた。
「で、今のはなんだ? 他の魔獣に比べて、強すぎなかったか?」
『まるで、いくつもの魔獣の性質を合わせたような……。あっ!』
「ん? どうした?」
何かわかったんだろうか。
戦いながら話を続ける。
『塔の研究所から押収した研究の中にあった、"融合蘇生"の呪いかしら』
どっかできいた名前だな。
『ほら、皇帝もつかってたでしょ? 使用方法はいくつか種類があるみたいなんだけどね。今回のは多分、準備として軍全体に魔法をかけておいて、さらに戦地の自陣に魔法陣をいくつか用意しておく。で軍の中のの2個体が死んだら、それを融合して新たな兵として魔法陣で復活させる』
「もっと早く気づけよ」
『悪かったわね』
しかし酷い術だ。
それが人間の軍にかけられたらと思うとゾッとする。一体どんな風になってしまうことやら。
「つまり、最後の一体を倒すまで終わらない」
『そう言うことになるわ。本当に最初の軍が5万だったとしたら99999体倒せば終わるってことになるけど……』
ったく。
あと単純計算でも6万匹近くかよ。
街に入って駆除されてるのもいるだろうが、それも復活して戻ってんだろ?
んで、倒せば倒すだけ、どんどんどんどん、強くなっていく。
ふざけた術だ。
「で? 対処法は?」
『倒し続ける』
「あーそ。そりゃあ、為になる情報をどうも」
『仕方ないでしょう?! 魔法陣がどこにあるかなんてわからないんだし』
「ああ、そんなの探してるうちにフラウロウは全壊だ。なら」
力技で押し切る!
*
「すごいねぇ。レェスを一撃で簡単にのしちゃうなんて」
トリカが煽るようにノアをほめる。
「それで、さっきあの二人に精神干渉を掛けてたのはどっち?」
「私だよ」
ノアはダメもとで訊いたのだが、あっさりと答えた。
見た目と話し方同様頭の方も弱そうだと思った。
「じゃあ、サミを洗脳したのは?」
「それはレェス。私はちょっと思考に変化を与えるくらいの、文字通り干渉しかできないもん」
「ふーん。そう」
「なあにぃ、そのつまらなそうな反応は。せっかく教えてあげたってのにさ! ノア!」
鉈を手で受け止める。
「私の名を知ってる?」
ノアは疑問を口にした。
「もちろん。正式な疑似超人ならあなたを知らない人なんていないでしょ」
鉈から手を放し格闘で攻めてくる、トリカ。
すぐにノアも鉈を投げ、蹴りを受け止めた。
「魔界闘技場において未だ破られたことのない記録、99999戦中99999勝を樹立した最強の疑似超人、ノア」
「だいぶ昔の事だけど」
「言ったでしょ。この記録は未だ打ち破られていない。魔界で生まれた疑似超人は誰だって!」
トリカはノアが捨てた鉈を念動力で拾い、ノアの首を狩ろうとした。
ノアも剣を取り出し、それを受け止める。
「あなたが、あなたを倒すことが憧れ」
「私はそんなことにも、そんな記録にも興味はない。勝手にやってて。私に勝ったことにしたいなら、そう言いふらしてくれたって構わない」
「そう。噂通りの人なんだ。本当に、殺し甲斐がありそう!」
はあ、面倒……。
ノアは心の中でそうつぶやいた。
次回以降もよろしくお願いいたします




