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第一次フラウロウ災戦 (8)

 家の屋上を走り、少し先に見えるトリカの影を追っていく。

 そして追いついたと思ったその先の広場では……。


「あなた、なんなんですか?!」

「えぇ? なんなんだろうねトリカも知りたいきゃははは!」


 トリカと魅風の二人が戦闘をしていた。


「まああなたたちが知っても意味ないでしょだって」

「がはぁ、あ"……」


 トリカの鉈がイヴィさんの胸を裂く。

 そしてイヴィさんの体を体当たりで突き飛ばした。


「イヴィ!」


 リーフさんが絶叫するように声を上げ、イヴィさんを追いかけた。

 その体を抱える。


「あ、だめだ……」


 つい呟いてしまう。

 心臓を一裂きされていて、もう回復魔法や蘇生魔法を受け付けるような状態じゃない……。


「イヴィ! しっかりなさい!」

「お姉様……、早く、逃げて」

「いや、いやよ! イヴィ!!!」

「きゃははは!」


 キィーン!


 そんなリーフさんを攻撃しようとしたトリカとの間に入り鉈を受け止める。


「きゃはは。追いかけてきたんだ噂通り、いー子なんだねぇ」

「うるさい」


 そのイライラする笑いを止めろ。


「そういう子をみるとさぁ……、裂きたくなる」

「っ!」


 攻撃が飛んでくる前に風属性魔術で突風を起こし、トリカを引きはがした。

 危なかった。

 あと一手遅れてたら、腕が飛んでた。


(どうする? やばいよこいつ……)


 死神やライグのような巧さは感じないものの、単純な戦闘能力の高さ、そして何より話の通じない感じの怖さだけならダントツな気がする。


「夜空さん、どいてください……」


 後ろからリーフさんの声がした。

 怒り狂った、低い声だった。


「リーフさん! 気持ちはわかりますけど」

「わかるわけない!」

「っ! で、も! あいつは危険です!! 一緒に戦わないと!」

「うるさい! どけ!」


 そういってリーフさんが踏みしめた地面から太い茨が生えてくる。

 急いで私は避けた。

 その茨が大蛇のごとくトリカを縛り上げていく。


「きゃはは、痛い痛い。そう怒らないでよすぐに会わせてあげるって、妹ともロンともさ!」

「殺すっ!」


 茨でトリカの体を振り回した後、近くの家に投げ飛ばした。

 トリカの体に瓦礫が降り注ぐ。


「はぁっ!」


 そしてその家を爆破した。


「……」


 怖……。


「っ?!」


 私だったら無事でいられる自信のない今の攻撃だったのだが……、その炎の中からトリカは出てきた。

 服も体もボロボロになっているその姿はさながらゾンビの様だった。


 キィイイイイイイ。


 鉈を地面で引きずってくる様子は、ホラー映画の殺人鬼のようでもあった。


「きゃっはっはっ。やるじゃん。疑似超人(シュード)をここまで傷つけられる人間がいることに驚いたよ」


 疑似超人……。またか、もう……。

 

「今度はこっちから行くよ。きゃっはっははは!」


 地面に鉈を強く叩きつけると、リーフさんのすぐ下の岩が盛り上がり腹部を突き上げた。


「っ?!」


 のけぞり後ろに倒れそうになったリーフさん、の背後に気づいた時にトリカが回り込んでいた。

 背中を強く蹴り上げ、空中で何度も殴打し、また蹴られて花壇の中に叩き落された。


「リーフさん!」


 まだ死んではいなそうだけど、すぐに手当てをしなくては危ないだろう。


「きゃはは。ごめんねせっかく追いかけてきてくれたからあなたの相手もしようと思ったんだけど、こいつがしつこいからでも終わったかやっとできるよ。あなたの中に流れるものをトリカに見せて!」


 しかし、リーフさん回復魔法をかけている余裕はなさそうだ。

次回以降も読んでいただけたら嬉しいです。

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