第一次フラウロウ災戦 (2)
それは世界が勇者の訪れに、魔王との戦争で疲弊しきった人々が希望を見出していたころの話だった。
魔王軍との戦いで前天帝が命を落としすぐに巫女選定の儀式が行われ、ミファが選ばれた。
最初に浮かんだ感情は困惑。
初代天帝エルリフィがとうの昔に引退していたこと、国民にはその事を隠していたこと。
しかし困惑している間もなく、すぐに天帝として即位しなくてはならなくなった。
時間は早く過ぎていき気づけば暗黒期が終わっていった。
最初の頃は自分が誇らしかった。しかし、すぐに気づく。
政治を勉強したわけでもない、特に学や才能が特筆してあるわけでもない、そんなただの小娘が国のトップになること、その重みに。
解決法もわからぬまま増えていく問題。
それでも儀式で選ばれたのだから、エルリフィと同じだけのことができるだろうと、独り歩きし大きくなっていく期待。
溜まる国民の不満。
先の見えない不安に独り膝を抱える。
彼女は人の前では毅然とした態度でいるが、本来は内気な少女なのだ。
ある時、彼女の寝室のすぐ目の前まで暗殺者が迫ったことがあった。
日々、クーデターや反乱が計画されている。
自身への不満がささやかれている。
それも全て知っている。
身に余る地位を与えられ、期待をされるだけされ、いつ殺されるかもわからない。
それでも耐えてきたのは、過去の天帝たちに報いることができるようにと思って努力できたからだ。
……しかし。
自身を守ろうと戦い倒れる兵士たち。
それ同じようにボロボロになっていく白。
彼女を守ろうとその間に立ちふさがるアルノ。
守られることしかできない自分の見たその光景にとうとう彼女も心が折れてしまった。
だから。
「もうやめてくれ!!」
そう叫ぶ。
白とグリンといった死神の動きが止まる。
「相は……、相はもう、死にたいのだ……」
「はぁ?」
白が何言っているのだと訊き返す。
「この100年間、ずっと、過去の天帝たちの顔に泥を塗り続けてきた。民からは天帝は1200年を経て今乱心しているといわれている。事情を知っている者ももう相を見話始めているものが出てきた……。民のためにと努力してきたが多くの事が裏目に出、失敗を重ねてきた。もう、死にたいのだ……」
「……」
「天帝様……」
白は思った。
何言ってるんだこいつ、と。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。