紅花夜空 VS ライグ (1)
「私が行くよ」
私のその言葉から
「は? いや大丈夫か?」
「最悪、ヤバくなったらこの場所まで逃げてくればいいんでしょ?」
それに。
「あいつには、なぜか知らないけど白の魂源がバレてる。私のは……、まだよく使い方がわからないからあってるかすらわからない」
「つまり……」
「そう、白には私と戦うあいつを見て、あいつの能力が何なのか見極めてもらう。私はまあ、この場においては捨て駒かな」
これが私なりに考えて出した最善策だ。
「他にいい作戦があるなら、どうぞ」
「いや、ないな。ごめん」
もう失敗はしたくないから。そのために頑張って考えたんだ。そういってもらわないと。
「じゃあ、行ってくる」
そういって歩く私の肩に白が手を置いた。
「?」
「一応、強化魔術だ。俺のは自分以外にかけるとかなり強化率が落ちるんだが……」
「ううん、心強い。ありがと」
私は赤い線を踏み越えた。
「そうか。夜空殿から……。ではあの時の雪辱晴らさせていただきましょう」
「だから、知らないってのに」
ん? 雪辱ってことは、この人の中で私はこの人戦って勝った事があるってことになってるってことだよね。
えーっとつまり、もしかして結構全力で来たりするのかな。
「?!」
急に悪寒が走った。
私はすぐに壁に沿って走り始めた。
ドドドドドドドドドッ!
ライグの頭上には突如として小さな太陽みたいなものが現われ、そこからマシンガンのように炎の弾が私に向かって掃射された。
「いつの間にそんなもの作ったの?!」
あれだけのエネルギーの塊みたいな魔術か魔法を、気づかないうちに作り上げた?!
いったいいつ、どうやって……。
走りながら考えてはみるが、もう起動してしまったものについて私が考えても仕方ない。
魔術が得意な相手だってならどうにか近づいて、刀で叩き斬りたい。
そのための魔術を即席で作り上げる。
「風属性魔術:吹浮陣」
魔力と共に息を大きく吐き、自身を中心に突風を作る。
その風で掃射される魔術をそらし、一気に近づく。
「ふっ!」
大きく刀を振り下ろした。
「?!」
かなりのスピードで攻撃を行ったため避けられるとは思わなかった。
(素早い……!)
舐めてたわけじゃなかったのだが、歳の割りによく動く……、と内心思ってしまった。
そんな風に思っているうちに。
「ぐふっ?1」
杖の頭で腹を殴られる。
飛びかける意識を何とか保ち、魔術と闘気で自身を強化する。
今引けばさっきの掃射魔術でまた私を攻撃してくる。今は近いから巻き込まれることを危惧してやってこないだけだ。
あれで近づけないほうが勝率が下がる。
「どうした、夜空殿。闘気力すら使わないのは、私には全力を出すまでもないということですかな」
「お生憎! これが全力!」
こいつの中の私はどれだけ強いんだ。
代わりに戦ってくれたらいいのに、と心の中で愚痴った。
次回以降もよろしくお願いします。