第2話:砂漠に咲く薔薇が見たくて(3)
―――砂漠の汚染されたオアシス内・夜空
目を閉じていたのでよくわからなかったが、ただ凄い速さで動いていることはわかる。
私たちが黒いもやもやの影響を受けていないとこを考えると、白の水闘気力で常に私たちの周辺に水を作り出し続けてるみたいだ。
だいぶ奥まで来た時、白の腕から解放された。
目を開ける。ぼやけることもなく視界がはっきりしている。
呼吸もできる。さっきの白の魔術のおかげか。
そこで気づく。
(あれ、奥の方には呪いが無い?)
そう周囲の水が澄んでいる。上の方を覆っていただけ、ってことか。
白の方を見ると、洞窟の奥を指差していた。
(?!)
その先に薄っすらと人影が見える。
それに驚いて大量に泡を吐き出し、水を少し飲んでしまった。
目が慣れてくると、それがはっきりと見て取れる。
殆ど人なのだが、ところどころに魚にも似た器官が見て取れる。
(人魚……、いや、魚人……?)
その人は槍を向け、威嚇してきていたが、私たちは何もせずにいた、
私たちに敵意がないとわかると、誘導するように奥にゆっくりと泳ぎ始めた。私たちもそれに続く。
しばらく泳ぐと、奥の方に薄く光が見え始めた。
細い洞窟を抜け、広い空間に出る。そこには……。
(何、これ……。凄い……)
そこは水中は巨大な街だった。天井にビルが乱立している様子に、天地がひっくり返ってしまったのか、と錯覚する。
誘導されその中の一つのビルに入った。中には空気がある。
私たち二人はそれぞれ、魔術で身体を乾かす。
「先にお聞きしておきたいのですが……」
私たちを誘導した人が口を開く。
「水面の毒を撒いた者の仲間ではありませんね?」
「依頼を受けて、それを調査しに来たんだ」
「左様でしたか。失礼いたしました」
その大きな施設を歩いて行く。
「ここはシーエルフの集落です。この巨大地下水脈はこの大陸の北東部のあらゆる場所や海に繋がっております。それを通じて我らは海の幸を採取し、地上のエルフと交易するなどして、生活をしています。しかし……」
「そのための出入口をあの黒いのが塞いでるってわけか」
「そう。その影響で今我らシーエルフは緊張状態にありまして……。先ほどの無礼、お許しください」
水中に入ってこれる人間も怪しすぎるし仕方ないよね。
「さっきの言い方だと、原因が分かってる感じだったけど、原因を取り除くのは時間かかりそうなのか?」
白が訊いた。
「それについては族長様から聞いてください。お二人にお会いしたいとのことですので、今からお通しします」
いつの間に連絡取っていたのか、そんなことを言われた。
しばらく歩き、泡で水の中を移動するエレベーターで最上階に昇った。
―――世利長愛歌の記憶領域:file.15【エルフ】―――
この世界において南の大陸、ウィンダルフ大陸に生息している人種ね。寿命が人の3倍であることで知られている。
一口にエルフ、と言っても結構たくさんの種族がいるの。
今回のシーエルフもその一つね。水中呼吸できるのが特徴。
ルトやこの国の天帝はサクラエルフっていう種族らしいの。この種は比較的戦闘力が高いらしいの。
他にもサクラエルフとは対照的に魔術が得意なハイエルフ、狩りが得意なシルヴァンエルフなど、さまざまな種がこの世界にはいるわ。




