魔法は科学で暴けるのよ
ポッ、ポッ。
水音が響く洞窟を進んでいく。
光源の魔術の発動維持は、一番役に立たないであろう私が買って出た。
「不自然な洞窟だ」
白がポツリと呟く。
「え? そう? 何か、洞窟だなって感じだけど」
なんていうか、ゲームとかでもこんな感じだし。
「だからだよ。なんていうか、ここは洞窟ですよって主張したがっているというか、そう見せたいんだなってくらい洞窟って感じだろ?」
「そうね。実際の洞窟ってこんな風に人が経って歩ける道がずっと続いていたりすることは珍しいもの」
え、あ、そうなんだ。
いや、実際の洞窟なんて入ることほとんどないけどさ。
しばらく歩いて行くと、空洞に出た。
行き止まりとなっていて大きな水たまりがある。
「ん? なんだこれ」
白が水たまりに近づき手を入れた。
「え、きも」
それは水ではなく何やらスライムみたいに粘性のある液体だった。
暗いのと反射してるので、水と誤解してたみたいだ。
「アイカ、これは?」
「おそらく、ライトメタルね」
「なんだそれ」
「融点が定まっていないっていう不思議な魔法金属なの。他の金属と1:2の割合以上で混ぜて鍛えるとその金属と同じ融点と硬度になる。ただし魔法的性質までは模倣しない。代わりにとても軽いの。そして安価。量産用の汎用武器とか、子供用女性用の武具だとかによく使われるわ」
へえ。
この世界では結構採れるのかな。
「そうか。……。でも」
「そうね。つまり行き止まり。この中を泳いでいくのは流石に無謀だわ」
「ごめん。また当てが外れた」
またノアちゃんがしょんぼりしている。
「いや、仕方ない。塔に入る方法を他に探してみよう」
「いえ、ちょっとまって」
戻って洞窟を出ようとしていた私たちを愛歌が制止する。
愛歌は何か薄い紙を持っており、それをライトメタルに付けた。
「これ見て」
青い紙が赤色に変化している。
「えーっとなんだっけこれ。リトマス紙?」
今更なんだってそんな小学生レベルの理科の実験を?
「違うわよ。塩化コバルト紙」
「ああ、水に触れると赤くなる奴ね」
いや、どちらにせよ。大昔に習ったものですけれども。
存在を忘れてたレベルだよ。
「なんでそんなもん持ち歩いてんの」
「ああもう、問題はそこじゃないでしょ! このライトメタルに見えるものは魔法か何かで見てくれだけを魔法か何かでライトメタルに見せてるのよ」
うおお、なるほど?
「そんなことする理由なんて、泳いでいった先に隠したい何かがあるからだと思わない?」
「なるほど」
確かにそうかも。
「でも。ここを泳いでいくのはリスクがある。魔法で変革された水の中を、水中移動用の魔術で安全に進める保証はない。解除しようにも解読するのに少し時間がかりそう」
「ノアがいうなら確かなんだろうな」
「水闘気でどうにかならないの? ほら砂漠の時みたいにさ」
「あの時は水が汚染されてただけだからな。今回とは話が違う」
そうなんだ。難しいな。
「だけど」
キィーン。
白が響鳴石を鳴らす。
「あそこだな」
そしてしゃがんで石を取り、鍾乳石の一つに投げ当てた。
すると、水溜りが急に強く光り始めた。
「な、なに?!」
目を開けると、ライトメタルだったところが水に変わっていた。
「おお。どうしてわかったの?」
「俺がここの管理者なら毎度毎度術を解いて掛けてを繰り返してたら面倒だなって思っただけだ」
なるほど。
私たちはみんなで水の中に入った。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。




