セミへの洗脳
「あ、夜空さん、白さんも。お久しぶりです」
あの後すぐに、病院に向かった。
大きな病院はないため診療所というべきか悩む小さなとこだったけど。
そこにいたセミさんはどことなく顔色がよくなく見える。
「倒れたって聞いて大丈夫でしたか?」
「ええ。健康状態は良好だそうで。ただ、精神からちょっと観察入院みたいな形で……。それよりも夜空さんは大丈夫でした?」
「え?」
何のこと……?
「ほら、この前、街中で倒れそうになっていたでしょう?」
「え? ええ。あの時はありがとうございました。でも……、その話先日もしましたよね」
「そ、うでしたか。申し訳ありません。ここ数日間の記憶が無くて……」
やっぱそうなのか……。
「何か覚えてることはないか? そうなった原因とか。だれかに術を掛けられたとか」
「……すみません。何も……」
「そうか……」
じゃあ……。
「私たちにした依頼についても?」
「依頼?」
私たちはセミさんからされた依頼について話した。
「それは本当に僕がした依頼でしたか?」
「そりゃ差出人がルトだった。それにわざわざあの場所の通行証も発行してきたんだ。その履歴をたどれば多分お前が発行したことがわかるぞ」
「そ、そうですか……」
やっぱり、思い出せないんだ。
「でもありえないんです。僕があの人に手紙を出すわけないんですから」
「わかってる。ルトが読めないからだろ?」
「はい……」
いったいどうなってるんだ。
「ちょっと待っててくれ」
そう言って白がこめかみに指を当てる。
「……あ? 早く来いよ。……うん……、ああ……、あ? ああ……。早く来いって。何がデートだよ。こっちは緊急事態なんだ。早くしろ」
そこまで話した後、白から愛歌が出てきた。
まあ会話内容で大体察してはいたけど。
「で? なに?」
ちょっと怒ったように愛歌が言った。
「セミの状態を確認してみてくれ」
「え? あ、セミじゃない。久しぶり」
「お久しぶりです」
「ちょっと失礼するわね」
そう言って愛歌がセミさnの体を通り抜けた。
「!??」
セミさんは、少々気持ち悪そうにしている。
「今はもうほとんど治っているけど、マインドコントロールされた形跡があるわね」
「ま、マインドコントロール?」
「ええ。意思とは関係なく体を動かされたせいでしょうね。魂が傷ついてる。ちょっと待ってね」
愛歌が何かをすると、一気にセミさんの顔色がよくなった。
「あれ、気分が回復しました。ありがとうございます」
「いいのよ。こういうのは自然回復には時間がかかるからね」
そう言ったあと、愛歌は私の方に向いてきた。
「ちょっとごめんね」
「え?」
愛歌が私の中に入ってきた。
『うーん。あら? 変ね』
頭の中に声が聞こえた後、愛歌が体の中から出てきた。
そしてすぐ、何かざわめいていた精神がスーッと楽になったのを感じた。
「これだけ強力な洗脳術だったから、周りにも影響を及ぼしてる可能性を考えたのだけど……」
「え? 私も洗脳されてたの?」
「いえ、精神への干渉というか、軽い暗示のようなものがかけられてただけだったわね。でも別種よ、セミのとは」
「違うやつにかけられたってことか?」
「うーん、そこまでは断定できないけど、別々でかけられていたことは間違いないわね」
え、いつ??
もしかして……。
「私がこの依頼にこだわってしまっていたのって……」
「少なからず、この影響もあるでしょうね」
それだけのせいにはできないけど……。
でも、最初からロンさんを殺すために私は使われてしまったてこと……?
それがただただ悔しかった。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。