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騙す方、騙される方

「そうか。事の顛末はわかった」


 天帝にそれまでの事を全て告げた。

 そしてエーサさんに何かを耳打ちした後、話をつづけた。


「目撃者の情報からもそなたらがいたから被害者を減ったということもわかっている。よかった、とはいえないが、そなたらのおかげで」

「私があの依頼を受けようって言わなければ! ステムさんは死ななかったんです……」


 感情があふれ出して、大声を出してしまった。


「ごめんなさい。でも私が」

「悪いのは殺したほうだろ」


 白が私を遮った。


「詐欺は騙されるほうが悪いのか? そりゃ気を着けなきゃいけないってのはそうだけど、根本は騙す奴がわるいだろ」

「……」

「確かに、そうだな」


 白なりの励まし何だろう。天帝も同調してくれる。

 それでも私は……。


「それよりも、だ」


 白が雰囲気を変える。


「問題は、なぜ殺されたのか。そしてセミがなんであんな依頼をしたのかだな。最初からあの手紙の中身をわかってたのか、途中からすり替えられたのか……」

「なぜステムが狙われたのか。それについては、心当たりがある」

「心当たり?」

「というか、ほぼ答えであろうが、ステムがロン・サヌラカであったからだろうな」


 ……は?


「ステム、は偽名だったってことか?」

「ああ。その妻ルート、いやネノ・クルト共々な」

「?!」


 ステムさんが亡くなった後、奥さんのエルフにもあったけど、あの人が……。


「この町に運ばれた遺体を確認したが、歳はとっていたが記憶に残る姿と同じであった。そもそもネノはエルフであの頃と変わっていなかったしな。その本人がそうだといったのだから間違いないであろう」


 連続英雄失踪事件の事を受け、不穏な空気を感じた二人は天帝にも告げず名前を変え姿を隠したのだそうだ。

 実際天帝と二人は前の天帝とほど親しい間柄でもなかったため、自分たちの命が狙われてる可能性があるとくれば、殆どの人を警戒してしまうのは仕方ないんだろう。


「そして、セミについてはいま、どこで何をしているのか調べてくるよう頼んでおいた」


 少しするとエーサさんは戻ってきたのだが……。


「失礼いたします。天帝様、どうやらセミ・トレントットなる人物は現在、入院中のようです」

「入院?」


 そりゃまた珍しい話だけど……。


「3日前、自宅で倒れているところを発見されたそうです。健康状態は悪くはないようですが、何故かここ数日間の記憶がなく、精神もすぐれないようで、検査入院という形で」


 ここ数日間の、記憶がない……?


「そうかありがとう」


 エーサさんは話した後に、いつもの定位置に戻った。


「とういうことなのだそうだ。そなたらは一度、セミ・トレントットのところに話を聞きに行ってみてくれ」

「わかりました」


 私たちはその場を後にした。


次回もよろしくお願いします。

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