神によって死をもたらされた者
「手紙? ですか?」
「はい、セミさんからあなたに」
紅茶を淹れてくれているルトさんに今回の依頼について説明した。
なんだか最初の依頼の時を思い出して懐かしいな。
「それは……、なんというか、不可解ですね」
「不可解?」
「ええ、奇妙です」
え? 婚約者に手紙出すことってそんなに変な事?
「だって、あの方が私に手紙を出すことなんてありえませんから」
困惑した表情で、紅茶を運んできてくれた。
どゆこと?
「ああ、そうか。なんで気が付かなかったんだ……? こんな簡単なこと……」
? 白はわかったみたいだけど。
「あの方は手紙なんて私に出しません。だって、こうして誰かに読んでいただかなくては……、自分では読めないでしょう?」
あ、そうか。本当になんで気が付かなかったんだ。馬鹿だな私。
それを読めない人に手紙なんて出さない。アメリカ人に古文を使って手紙を書かないってのと同じくらい当たり前だ。
この依頼は確かに、奇妙だ。
「確かに私たちはメッセージをやり取りしていました。このクレルラルから取り寄せた録音機を使って」
エアコンのリモコン程度の小さな機械を手に取った。
「でも、今これは私の手元にあります」
「ほ、ほら。魔霧の影響で新しい録音機が手に入らなくて、それで、私たちにメッセージを伝えるのも託したんだよ」
「どうせ俺らに読まれるなら、普通に口で伝えればよくないか?」
白が言う。
「ぅう。それだと、雰囲気出ないって思ったんじゃないの? ほら、読んでみればわかるよ」
そういって手紙の封を切ったその時だった。
「っ?!」
「キッヒヒヒヒヒ。手紙の郵送、ご苦労様です」
中から死神が出てきた。
私たちはすぐにルトさんを守りながら、距離を取った。そして後ろに庇いながら武器を取る。
「キッヒッヒ。歓迎されているようで嬉しいですよ」
「何しに来たの?! 何でここにいるの?!」
「キヒっ。残念ながら、今宵の主賓はあなた方ではない」
そういって窓を突き破り、外へ消えた。
「逃がすか!」
「おい、待て!」
私たちは死神を追いかけた。
死神が空けた窓から、私たちも飛び出す。
「あっちか」
遠くから剣戟の音が聞こえる。
二人でそちらに駆けていく。とそこには、死神と戦っていたステムさんがいた。
「なんで、ステムさんと……」
「考えてる場合か。さっさと加勢するぞ」
「う、うん」
そう言って、走っていったのだが。
「キヒッ。隙あり」
「?!」
死神の持っていた大鎌が光り、ステムさんの胸を切り裂いた。
「これで一人。キヒヒ」
「こんにゃろっ!!」
白が水の力を使って距離を詰め、死神を攻撃。
その間に私は治療のため倒れたステムさんに駆け寄った。
が……。
「ダメだ……」
「夜空? どうした?」
「し、心臓が……」
「ちっ、てめぇ!」
白が死神を睨む。
「流石、あの方が危険視したお方だ。思っていたよりも楽しめましたよ」
聞き終わる前に白が攻撃するが、死神がひょいと避ける。
「そうだ。前に自己紹介ってしましたっけ。まあどうでもいいですね」
「くっ」
どうやら死神は戦う気がさらさらないようにみえる。
「天帝の加護が残るこの町で戦うのはあまりに不利すぎる。私は退散させていただきますよ」
「逃がすかぁ!」
白が攻撃を続けるもむなしく、空中に溶け消えてしまった。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。