白の勘
街に帰ってまずは町長さんを探した。
鉱山に入る許可証も貰ったし、改めてお礼を言っておかないとね。
そういった目的で街を歩いていると、たまたま町長さんにあった。
「ああ、よかった。ご無事でしたか」
「はい、なんとか」
丸2日くらい籠ってただろうから、心配かけちゃったかな。
「今朝早い時間に白さんが、鉱山の入り口に血まみれで倒れていまして」
「え?!」
ってことは……。
「白が……、負けた……、の……?」
正直その事が信じられなかった。
「当たり前でしょ。あの時点で水闘気力を大量に消費していた」
「それがわかってて、あの時逃げたの?」
「そうするしかなかったでしょ。文句があるなら死神と戦えるくらいの戦闘能力を身に着けてから言って」
珍しく強く感情を乗せた言い方をされてしまう。
「ご、ごめん」
とにかく白の所にいこうと、病院に向かった。
案内された部屋では白に包帯がまかれ寝かされていた。
「呪いが複雑に絡み合っていて、解呪に手間取っているの」
愛歌が私たちに状況を説明した。
「とはいえ最低限の処置は施してるし、もう命にかかわるようなことはないわ」
そう説明されて少し安心した。
「でも目を覚ますまでにはまだ時間を要すると思う。しばらく時間を潰していて」
そう言われてしばらくは心配で白の傍から動けなかったものの、お昼にもなればお腹も空いてくる。
病院を出てご飯を食べようと歩いているうちに気持ちも楽になってきて、せっかく時間ができたのなら、この町を観光しておこうと、温泉街の方にノアちゃんを連れて向かった。
そして夕方。
「お、帰ってきたか。心配かけて悪かったな」
回復し目が覚めた白がそんな風に言ってきた。
思ったより元気そうで安心した。
「さてと、愛歌。防音の結界、周りに敷いてくれるか?」
「え? うんわかった」
そういってすぐに愛歌が私たちの会話が外に漏れないよう結界を作る。
「どうしたの?」
いつになく真剣な顔をしている。
「あくまでおくそくだが、裏切り者……、というより、内通者とでも言った方がいいか。あの死神がいる組織と通じている者がいるかもしれない、あの天帝と顔を合わせたメンバーの中に」
それは唐突な言葉だった。
「なんで急に?」
「あの死神は俺たちに待っていた、といった。まるで、俺たちがあの鉱山に行くことがわかっていたかのように。俺たちがここに来ることをわかっていたのは、あそこにいたメンバーだけのはずだ」
「だからって、あのメンバーの中に裏切り者がいるかもしれないって言いたいの?」
「思い過ごしならいいんだけどな。可能性もゼロじゃない。これからフラウロウに帰る際、その事を頭に入れておいてほしいんだ」
そこまで話して、防音の結界を解いた。
……白の言ってること当たってるのかな……。嫌だなぁ。みんなと結構仲良くなってきたとこなのに、そんな風に疑って接さなきゃいけないの。
次回以降も読んでいただけたら嬉しいです。