第2話:砂漠に咲く薔薇が見たくて(1)
―――フラウロウのとある酒場にて・夜空
「妊娠検査やら、浮気調査やら、そんな依頼ばっかな訳?! 冒険者は探偵か医者なの、この世界ではっ?!」
サミさんからの依頼達成から数日後、白と二人で酒場にいると、そんな依頼がいくつか入ってきた。
「便利屋みたいな感覚の職業なんだろ? 俺らの世界における色々な職業の代わりになってるから」
「にしても依頼内容がひどすぎない? 昼ドラの世界なわけ?」
「人間なんて、どこも似たようなもんだよ」
「はぁ……」
ちなみにノアちゃんと愛歌さんは依頼達成数稼ぎのため、討伐クエストに向かっている。
「失礼。あなた方が、あのドラゴンを討伐されたパーティの方々ですか? 依頼、お願いしてもよろしいでしょうか」
小麦色に肌の焼けた露出多めの服を着た女性に話しかけられる。
「あー、直接倒したのはここにいないけど、まあ僕らですね。どうぞかけてください」
白に促され、女性が対面に座る。
「少し特殊な依頼なのですが……」
「今度はなんですか。嫁姑問題? 夫の暗殺? バレない浮気の仕方? 何でもいいですけど、その後のドロドロには巻き込まないでくださいね」
どうせまた昼ドラ依頼だろうと思って、ついそんな事を口走った。
「えと、あのぅ……」
「あーごめんなさい。こいつ今日イライラしてんすよ。生理?」
「あのねぇ?! そうだとしてもじゃないとしても、聞かないでしょうが普通。だからモテないんだよ、このノンデリ!」
女性の名はアイーシャ・ハサリー。
フラウロウからみて北東に位置する砂漠の村の村長の娘なんだとか。
大きなオアシスの畔にある村なのだそうで町と町を繋ぐ街道の休憩所として冒険者で賑わっているらしい。
数日前突如、そのオアシスの水が真っ黒に染まり始めたのだそうだ。挙句の果てに生息している魚の死骸が水面に浮かび上がってくる始末。
その原因を探って可能ならば浄化してほしいそう。事が事だけに半端な冒険者には任せられない。そこで、あのドラゴンを倒せるほどの力を持った私たちパーティに依頼しに来たのだとか。
「その依頼は、難易度の特定ができませんよね」
白が問う。
依頼やクエストは国際基準に基づき、仲介店の査定の上難易度を設定することがある。
例えばセミさんの依頼はもとは難易度ランクDだったが、ドラゴンの件も含め最終的にはランクSの依頼と見做された。
「はい。ですのでランクExの依頼としてさせていただきたいと考えています。初期報酬設定は前金15,000、達成時65,000、合計160,000フルでいかがでしょう」
え、ルトさんの件の時の4倍? 13,600ドル?!
一応、あのドラゴンの討伐報酬としてフラエル皇国からそれに近い金額はもらっていたけどさ。1つの依頼でそれはちょっと怖くなってきたなぁ……。
その後より詳しい話を聞いた私たちはこの依頼を引き受けることになった。
「では、準備も必要なので、明後日の昼にはここを発とうと思います。東門で落ち合いましょう」
細かい手続きを終わらせ白がそういった。
こうして私たちは、砂漠に向かうことになった。
―――世利長愛歌の記憶領域:file.13【依頼難易度ランク】―――
難易度ランクは全部で5つに分けられる。
Sは、命の危険が考えられるもの。または、人命に関わり緊急性の高いもの。
Aは、特級指定の魔獣と接触の可能性、または討伐の必要性のあるもの。
Bは、危険なエリアに赴かなければならない可能性のあるもの。または希少な素材の採取。
Cは、魔獣討伐依頼。素材の採取。
Dは、その他。調査など。
難易度の判断が難しいものはExとされる。
第2話です。よろしくお願いします。




