ミスカッツ鉱山
当たり前の話ですが、この話における"死獣"は、一般に言う”動物の死体”とは別のものです。
キイィィィィィンっ!!
暗く肌寒い坑道に甲高い音が響く。
白が響鳴石という特殊な石同士をこすり合わせた音だ。
白の魔力性質で音波を感じ取る能力を使用して、土の中にある黄金鉱を探しているのだ。
「お、この奥に大きめの塊があるな」
そして土属性魔法を利用して、土の壁の中から黄金鉱を掘り出した。
「だいぶ溜まってきたな」
「そうだね」
この世界に来た時に使っていた小屋と同じシステムの袋に入れていく。
つまり袋の中身を別の空間として切り離し、大量に物を入れられるようにしているのだ。
中が別の空間のためどれだけ入れても重くならないのが助かっている。自身で魔法を編んで作るため中に入っているものは手を入れずに瞬時に取り出すことができる。
武器なんかも入れておき、必要になったとき取り出すなんて言う風に使っている。腰にぶら下げたり背中に背負ったりとかしなくていいのが楽だね。私のは魔法の練習をしてた時に作った。
「あと少し集めれば言われた半分の量に届くんじゃない?」
そこら辺にほっぽられてたものの中にも少量づつ黄金鉱が交っており、かき集めれば塵積的に結構な量になった。
半分でいいかなとしてるのは、途中の分かれ道からノアちゃんたちと別れ行動してるからだ。
「あんまり私何かできている気がしないな」
「というと?」
「ほら探すのも、採るのも任せきりじゃん?」
「それは得意不得意の話だ。仕方ないだろ」
うーん。そうかもなんだけど例え戦闘になっても、結局白の方に重量行っちゃいそうだしな……。
「それにこれ、維持してくれてるだろ」
「まあ、魔術魔法は私の方が得意だしね」
これってのは、私たちの少し上に浮いている光属性魔術で作った光の玉のことだ。
持続して魔力を供給し続けることで即席のライトとして使え、魔力の調整での強さや広さの調整、場所の移動など操作ができる。
「それにしてもいないね」
「何が?」
「死神」
「愛歌がいたら、フラグ建てるのやめてよ、って言ってるんだろうな」
あーいいそう。
現実でそんな簡単にうまくいくわけないじゃんね……。
「え?」
サー、という甲高い金属音のようなものが後ろから近づいてくるのを感じた。
「あーあ、やっぱり愛歌に怒られそうだ」
振り返るとその暗闇の中には人影らしきものがいるようだった。
「ひっ」
光源魔術をそちらの方に移動させると。中に浮かぶローブのようなものが鎌を携えて持っていた。
「死獣か」
「死獣?」
「死神の赤ちゃんみたいなもんだ。まだ意識と形を持っておらず、長年を掛けて死神に進化してく。会話はできないが、死神の命令だけは聞くって厄介な奴だ」
「へぇ……、本当に不気味な奴」
ローブのフードの中はどれだけ照らそうと、深い闇が広がるだけだった。
「で、こいつは死神と同じように剣を交えたら呪われるわけ?」
「ああ。死神の程協力じゃあないけどな」
厄介だなぁ。
「後ろにもたくさんいる……」
「とにかく逃げよう。この細い坑道じゃあ、キリがねぇ」
「うん」
私たちは死獣と交戦しつつ、坑道を進んでいった。
2024年も今日で終わりですね。
この小説も蝉がうるさかった時期に描き始めたのですが、もう今年が終わるなんて、時間が経つのは早いなと思う日々です。寒いのが苦手なので、早く春になってくれたらなと思わずにはいられません。
とにかく、来年も僕の作品とキャラクターたちをよろしくお願いいたします。