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天帝エルリフィ(2)

「ふむ。ではまずはその事から話しておくとしよう」


 そういって天帝は話始める。


「約400年前、当時の大樹の巫女であった初代エルリフィがこの国を興してから800年の時が経ったころ、彼女が突然姿を消した。寿命なのか、殺されたのか、その真相は今ではもうわからぬが、その時新たに大樹の巫女を選定しなおし、皇帝として即位することとなった

 しかし別のものが新たに天帝の座に就くには、"エルリフィ"の名はあまりにも大きすぎたのだ。故に初代エルリフィの失踪の事実は歴史の闇に隠され、未だに1200年もの間、同じ者が統治をしている、という事に表向きはなっているのだ。相は100年ほど前、暗黒時代末期の戦争の中先代が命を落とした後に、天帝エルリフィに就任した」


 私たちはもちろん、この国で生まれ育った方々はその事実に驚きを隠せていなかった。


「そもそもの話、それまで800年もの間国を統治し続けていたエルフというのがいたのかさえ、怪しいものだと考えられている。エルフの寿命はせいぜいが300年だ。あまりにも長すぎるであろう? 多くの逸話や奇跡伝説も、実は別々のものがそれぞれに残したものを、後の世になってとある一人の人間の業績であるという風にまとめられた神話の類なのではないか、と先代は考えていたようだ」


 あれあれ、聖徳太子みたいなことだよね。

 冠位十二階を作った人物も、十七条の憲法を作った人も、推古天皇の摂政だった人もいただろうけど、もしかしたらそれは同一人物ではないんじゃないかって言われ始めてるみたいな。

 それだけ伝説上における天帝エルリフィってのは、規格外の化け物なのだろう。


「つまるところ、相は天帝エルリフィの名を被った他のエルフと変わらぬ小娘にすぎぬのだ。故に先の戦いや、今回の事についても皆の力を借りなくてはならない。伝説上にあるような力や知性を持ち合わせておらぬことが恥ずかしいばかりだが、それを忍んで皆の協力を仰ぎたいと考えておる」


 そういって、天帝自らが頭を下げた。


「?! お、おやめください! 天帝様が私の様な下々のものに頭をおさげになるなど……」

「言ったであろう。相はみなと変わらぬ。ただのエルフにすぎん」

「いえ、そんなことおっしゃらないでください。この国において大樹の巫女であり、天帝である。それだけで我らにとって尊い存在なのです」

「その言葉は、相にとっても嬉しい」


 なんだろ、この人自己評価というか自己肯定感低いのかな。

 うーん。人としては好感を覚えるけど、王様としてはちょっと不安になるな。

 もう少し態度大きいくらいの方が舐められなくていいと思うんだけど。

 まあ、この国の人間でもない私が気にすることでもないか。

次回も読んでいただけたら嬉しいです。

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