災厄の狼煙(3)
メリークリスマス
拠点に来た役人の要件は、天帝エルリフィが呼んでいるのできてほしい、とのことだった。
私たちは急いで準備を済ませ、外に出た。
「? あら? なんか、楽になったわね」
大樹に向かってみんなで歩いていたら急に愛歌がそう言った。
「あ、そういえば……」
「あれ」
ノアちゃんが空に向かって指さした。
そこには金色の泡のようなバリアのようなものが、町全体を覆っていた。
「災霜を浄化しているみたい」
「町の防護システムみたいなものか? よくそんな都合のいいものがあったな」
白の言う通りだ。
まるでこんなことが起こるって予想していたようなものがよくあったよね。
大樹に着くと前に行った場所とは別の場所へ案内された。
そこには他の新蜂も集められていた。
そして……。
「げ、ガイール……」
ついそんな声を出してしまうような、会いたくない人物もそこに……。
「随分な物言いだな。先輩冒険者に向かってよぉ」
どうやら、新蜂のパーティメンバーも同時に招待されているらしい。
まあノアちゃんや愛歌さんも来ていいってなってた時点で察しは言ったけどね……。
「先輩っていうほどの事もやってないくせに。それどころか私たちのせいで干されてまでいるくせにさ。先輩だ、っていうならせめて前の戦いの時も参加したらよかったのに」
このガイールは前に男性から奥さんの浮気調査の依頼を受けた時に、その奥さんの浮気相手だった人だ。(ep63参照)
そのおかげでアルノと出会えたわけだけども、この男はどうにも好きになれない。
「あんのさぁ。こんな気分の悪い日に、大声出さないでくれない? 頭に響いて仕方がないわ」
ああ……、そういえばこの女、ファアニイもこのパーティだったっけ。
「まあまあ、みんな気分悪いのは一緒なんだから、落ち着いて落ち着いて」
アルノが入ってくる。ああ、この人は癒しだなぁ。
「それに、ほら夜空ちゃんも言ってたけど、この人干されてたでしょ? そんな人を連れてっちゃうと失礼かな、と思ってさ」
「ああ……」
「ただえさえ……。あー、いや、まあいいか」
? なんだろう。
「とにかく、今回はパーティ全員でってことだったからさ、連れてこざるを得なかったってわけ」
「おい、その言い方はなんだぁ。俺、一応リーダーなんだが?」
「はいはい」
アルノが受け流す。
「おお、やっほ。みんなさんお集まりで」
そこにシンビィがやってきた。
「私たちが最後かな」
「そうみたいだね」
ノールは白たちと話しているようだった。
「ほら、パーティ全員って言われても、うちメンバーが多いでしょう? 連れてくるのを絞るのに手間取っちゃってね」
みるとシンビィたちはあと二人、メンバーを連れてきていたみたいだ。
「皆様、おそろいになりましたので、こちらの部屋へ」
そう扉の前にいたエルフ、確か近衛兵団長レイさん、だったかな。
「ただし、1つ忠告を」
厳しい声で言葉を続ける。
「この中で皆様が見るもの、聞くもの、それらには政府に属するエルフですら、一部の者しか知らぬ極秘情報が交ります。どうか、くれぐれも口外なさらぬよう」
そういって扉が開かれる。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。