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災厄の狼煙(1)

 そして現在……。

 あの打ち上げの日から十数日。政府からの報酬は入ったものの、他は以前と変わりない。

 依頼を受けてはそれをこなすだけの日々。変わったことといえば、死神の札関連の依頼が無くなったことかな。組織もろとも消し飛ばしてんだから、当たり前っちゃ当たり前なんだけど。

 

「こんなのんびりしてていいのかな」


 前にそんな疑問をぶつけてみたことがある。

 タイムリミットまであと2年もない。

 この1年だってあっという間に過ぎて行ってしまった。

 不安にもなってしまうのだ。


「問題は死神の札が壊滅して、その上組織とやらがどうするのか、だな」


 白が話す。


「この国で何かしら事を起こすつもりなら、割と早く動くと思うんだよ。死神の札のやり残したことをそのまま引き継ぐためにもな?」

「うん」

「で、そうじゃないとするなら、いったんこの国での計画なんかは放棄する可能性もある。他の国にも潜伏しているのかは定かじゃないが、そうなるとしばらく表には出てこないだろう」


 そっかぁ。前者ならすぐにでも変な事件の話が入ってくるはずだ。

 少なくとも愛歌はそう言った事件を見落とさないように調べてるから、何かしら異変に気付く……。


「あと2、30日、この国にいても何も起こらないようであれば別の国に行こう。その際は念のためノアだけここに残すことになるけど平気か?」

「問題ない」


 なんてその時はそんな風に決まったのだった。


 それはこの国を離れると決めたリミットが少しづつ迫ってきていた、ある穏やかな昼下がりの事だった。

 私は個人で受けていた依頼を終えフラウロウに帰ってきて、ブローカーを通してその事を報告し終えた、そんな時……。


 ズゥーーーン……。


「っ?! ……くっ……」


 突如、強いめまいと吐き気に襲われた。


「なに……、これ……」


 視界が薄れていく。


「ダメ……、せめて拠点に……」


 ここは通りのど真ん中だ。せめて安心できる場所じゃないと意識を飛ばせない。

 そう思い壁を伝いながら歩いていく。


「はぁ……、はぁ……」


 空気が重い、というか、濁ってる、というか、凄く、息苦、しい……。


「ぅ。お"え"え"え"え"え"っ!!」


 気持ち悪さに耐えかねて、胃の中にあったものを外の世界に出してしまう。


「夜空さん?!」

「……?」


 それでも歩こうと何とか必死になること数分、自分の元に駆け寄ってくる人物がいた。


「セミさん?」


 武器商人のセミ・トレントットさんだ。


「大丈夫……、じゃないですね」

「すみません、急に体調が悪化してしまったみたいで、家、すぐそこなんで、連れてってもらってもいいですか?」

「もちろんです。おい! 反対側を」

「はい!」


 一緒にいた店員らしき人と二人の肩を借りる。


「それにしても何でしょうねこの空気。どんよりしているというか。街も急に活気がなくなってしまって」


 セミさんがつぶやく。

 ……もしかして、これって私の体調が原因じゃない? 外部からの何かで……。


「今商談の帰りだったのですが、その道中一部の冒険者が同じように体調を崩しているらしいとの話を耳にしました。夜空さんはもっとも体調が悪そうに見えますが……」


 もしかして、一定以上の戦闘能力を持っている人間だけを抑えつけるような、そんな何かだったりとか?

 あー、もうわけわからない。


「空はからっと晴れているのが不気味なくらい、嫌な空気ですね……」


 そんなつぶやきを聞きながらなんとか拠点にまで帰ることができたのだった。

次回も読んでいただけたら嬉しいです。

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