フラウロウまでの道中
私たちは10日間訓練に使っていた場所を離れ、北に向かって歩いていた。
その道中は平和そのものだった。
というのも正直、ゲームのイメージでモンスターとかにエンカしまくるもんだと思ってたんだ。
「人間を自ら襲おうとするのは基本的に肉食の魔獣だけだ。食物連鎖の生態系ピラミッドの分布は普通の動物もそこまで大きく変わりはしない。もちろん草食だろうと高い戦闘能力をもつから気を付けないとだけど、縄張りを荒らしたりしない限り基本的には襲われることはないよ」
と白に言われた。
つまり、初日のあれってかなり運悪かったんだろう……。
「この世界には約300年前から100年前まで続いた暗黒期、って時代があるの」
道中も私と白は、愛歌さんの話を聞いていた。
「その期間、どこからともなく魔王と呼ばれる存在が現れ、世界を支配しようとした。」
魔王……。
なんていうか、ありきたりな響き……。
「でも100年前、光翼の勇者と呼ばれる者に討伐されているようなの。記述を見る限り多分この勇者はあなたたちと同じ超人だと思う。だからこの世界にはもういないはずよ」
「で? それから100年とそこらでもう新たな超人がこの世界に送り込まれてんのか?」
そんなにしょっちゅう滅びの危機に晒されて……。災難な世界だな……。
「ねえ。10日でどれくらい調査できたの?」
「残念ながら今から行こうとしている中央都市フラウロウ以外のとこには行けていないわね。でもこの世界は交通網や情報網がしっかりしていてね。巨大な町であるフラウロウだけでもかなり多くの情報を得られたわよ。さっきの歴史もそれ」
「いやでも、10日にしてはやっぱり早すぎない?」
「私は本なんかの中を通り抜けるだけで自分の中にその中の情報をコピペできるからね。ほら、この前お風呂で夜空ちゃんに情報置いたりしたでしょ? あれの逆の事ができるの」
あー、なるほどね。
いいなぁ。それできたら教科書とか通り抜けまくれば、テストも受験も楽勝なのに。
「とはいえ、そのままだと情報は使えないから、自分の中でしっかりとデータを整理する時間が必要になるんだけどね。言ってしまえば、"ダウンロード"ファイルに入れるだけ入れておいたファイルを整理しなきゃいけないみたいなイメージかな」
うーん、それはそれで面倒だなぁ。
便利であることには変わらないけど。
「で、私たちはフラウロウに行って何をするの?」
「冒険者になるのよ」
「あー、ギルドみたいのがあるわけ?」
異世界もののお約束だよね。
「ううん、無いよ?」
「え?」
「フリーランスが主流なの。自由の街だからね。私たちの世界での感覚としては、ネット配信者に近いかな」
「なるほどね」
そんなのでうまくいくのかわからないけど、まあ、世紀の大天才の人がそれでいけるって判断したならまあ大丈夫かな。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。