五日目:闘気術基礎論「気力概論」
「気力ってのは、言い換えてしまえばその人の生命エネルギーだな」
「ドラゴン○ールみたいなこと?」
「あー、そうともいえるし、違うともいえる」
気力を扱う術、気功術。
普段から無意識下の内に体内で運用しているその生命エネルギーを、意識的に運用する術。
「例えば」
「?!」
白がチョップをしてくる。それを右腕で受け止めた。
「ちょ、なにを」
「と、このように」
何事もなかったかのように話始める。
「攻撃が来る、とわかっていればダメージも減る。でも」
「っ!?」
同じ腕に痛みが走った。
今度は目に見えない速度の手刀で攻撃されたらしい。
「いった……」
いや、痛みは正直それほどでもないんだけど、急だったからちょっと痺れた。
「気づかないでいると、それなりのダメージを受ける。これが無意識下で行っている生命エネルギーのコントロールだな」
「もっと他にやりかたあったでしょ……」
「いやあ、体で理解したほうが早いだろ」
「そりゃあそうだけど」
なーんか納得いかない。
「んで、これを自分の意思で運用できるようになれば」
「え?!」
どこかからか取り出した拳銃をこめかみに当てた。
「ち、ちょ?!」
止める間もなく、鼓膜を突き破るように響く発砲音。
「びっくりしたぁ……」
しかしそれを向けられた本人はぴんぴんしている。
「ま、銃程度なら問題にはならないな」
「もう脅かさないでよ」
ってかその銃どっから……。
「でもまあ、わかった。昨日の霊共感や霊視覚このためでしょ」
霊共感で自身に迫る危機を察知できたのなら、それに備えて体を強化すればいい。
霊視覚でさらにどんな危険が及ぶのか理解できれば、必要な箇所だけをより強化できる。
「まあ、そういうことになるな。もちろん受動的な問題だけじゃなくて、能動的な方にも転用できる」
例えば脚に使えば跳躍力や走力を強化できる。
腕に使えば腕力や握力を強化できる。
応用すれば嗅覚や視覚といった五感も強化できる。
「あ、いや、皮膚には流しこめないから、触覚が強化できる場所は限られるな」
いや、それはどうでもいいけど。
「てなわけでこれも必要な技術」
「なるほど」
ってなわけで気功術を練習し始めたわけだが、私は死ぬほどこの才能がなかったらしく、初歩の初歩、そのコツをつかむまでの間で二日と半日かかってしまったのだった。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。