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閑話:『拝啓、空の青さを知らぬ貴女へ』

―――貴女あなたの事を思い出すと、決まって考えます。

大樹の大きさは

空の青さは

夜の闇は

草原の鮮やかさは

海の広さは

……貴女の美しさはどの様に言葉を紡げば、目の見えない貴女の心に届くものかと。


貴女はきっと、貴女の前についに現れなかった私を恨んでいるでしょう。

目の見えない貴女にこの言葉を送るのは適切ではないかもしれませんが、それでも伝えさせてください。

貴女の瞳は今まで出会ったどんな人のものよりも美しかった。


貴方の下を離れてすぐ、あの二人組に襲われました。

殺されることは免れましたが、彼らは私に呪いを残していったのです。

私は声を出すことができなくなり、貴方に触れられぬ身体になってしまいました。

解呪方法を五年間探し続けましたが見つからず、その後に貴方の住む山の麓の農村に移り住みました。

そして採れた野菜を貴方のもとに持っていくようになりました。貴方に会い続けるために。


 (中略)


目が見えない、というのはどのような世界なのでしょうか?

永遠の闇にとらわれているような感覚でしょうか。それとも闇すらも感じ取れないのでしょうか。

見える、という現象を識ってしまっている私には想像がつきません。

そんな貴方の光であれるようにと生きてきましたが、その人生ももう幕を閉じようとしています。


私は残り少ない命で、あと何度貴方に出逢うことができるでしょうか。

貴方はあの場所でどれほど私を待ち続けていたのでしょうか。

いつまでも現れなかった私を恨んでいるでしょうか。

これを知った貴方は、私が一方的に貴方と会っていた事に、憤りを感じるでしょうか。


何らかの方法で貴方にこの事を伝えようかと、何度も思いました。

しかしそれをしてしまえば、触れることのできないその事が、お互いに何よりも大きく苦しい呪いになってしまう。

だから貴方に伝えることができなかった。

こんな自分勝手な私をお許しください。

私の死した後、願わくば、貴方に幸せの一葉が舞落ちん事を……―――

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