転移一日目の夜
「ふーん。3個かな」
「そうね」
小屋の外で夕食を取り終わりお茶を飲んでいると白がつぶやき、それに愛歌さんが返事をした。
「何が?」
訳が分からず、聞いてみる。
「月だ」
「え?」
空を見ると確かに 目立つ大きな月が1つと、それのすぐ横にまた1つ、そして反対側の空にさらにもう1つの月があった。
それは私たちの世界じゃ絶対に見ることのできない神秘的な景色だった。
ただしそれは……。
「本当に異世界なんだね、ここ」
さっきまでまだ半信半疑でいたそのことを、事実として受け止めざるを得なかった。
「……まあこの景色は悪くないかな」
「さて、明日も早いからな。夜空は早めに寝たほうがいい」
「うん。わかった」
そう言ってその場から立ち上がった。
「あ、そうだ。これ」
「へ? おわ?!」
青い小さな宝石を投げ渡された。
「何これ?」
「軽く握ってみて」
言われた通りにすると数秒後強烈な脱力感と眠気に襲われた。
「ぅ、ナニコレ……」
朦朧とする頭で石を返しながらそう訊いた。
「ま、よく眠れるようなまじないってとこだな」
「そ、そっかありがと。じゃおやすみ」
考える余裕もなく、小屋の中にふらふらと入っていくことしかできなかった。
*
「さてと、こんなもんか?」
「うん。儀式は無事終了よ」
先ほどの宝石は握った者の魔力を吸い取る効果がある。
急激に魔力が減ったから夜空には眠気が襲ってきたというわけだ。
今はその魔力を媒介にとある儀式を行ったとこだ。
「けどいいの? あの子に無断でこんな契約結ばせちゃって」
「別に、夜空にとってマイナスになることじゃないからいいだろ」
「私は白以外に憑くつもりはないんだけどな」
「大丈夫、すぐにあいつのことも好きになるよ」
そんな会話をしていると、ノアが剣を持ち出かけようとしていた。
「じゃあ行ってくる」
「おう、頼んだ。あ、そうだ愛歌も連れてけよ」
「え? なんで?」
「お前だってそうなって一日も経ってないんだから、ノアのとこで自身の能力把握して来いよ」
「むぅ、そういうなら……。じゃ、ノアちゃん、行こうか」
「ん」
そう言って、平原の奥へとノアが消えていった。
「さてと、どうするかな」
満天の星空を眺めながらつぶやいた。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。