表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/482

森の中で

「ここ、どこ?」


 さっきまでカフェの中にいたはずだ。

 しかし今いるのはそんな横文字とは程遠い場所。鳥か何かの声と葉擦れの音だけが聞こえる森の中。

 人の手が一切加わっていないであろう文明から隔絶された場所だ。


「……夢?」


 最初の感想はそれだった。

 白から連絡がきた日から今も夢を見ているんじゃないか……。

 でもすぐにその可能性を否定する。

 理由は2つ。

 1つめ、私は実際に明晰夢を見ることがあるけど、その時と状況が違う。

 私の場合日常8割、非日常2割くらいの割合の夢のことが多い。

 ここまで非現実的な状態だと、逆に夢だと思えなかった。

 2つめ、さっきのカフェオレの風味が口の中に残っていたから。

 普段の夢の時感覚は、すぐに生まれては消えて行ってしまう。

 風味なんて曖昧な感覚が、ここまで持続していることはない。

 でも……。

 

「夢じゃないなら夢じゃないで、それは問題じゃない?」


 自分の身に何が起こったのか。

 突如こんな場所に放り出されるなんて、非現実的なことが起こった理由を夢以外に考えないと。

 えっと……。


「ああ、あれか! 異世界転移!」


 その結果混乱して、よりとんちんかんな方に思考が飛んでいく。


「いやでもそうなんだとしたら、説明して能力与えてくれる人がいたり、召喚者が近くにいたりしたりするのがテンプレでしょ?! なんでこんな森の中に1人でほっぽり出されてんの?! せめて街中にしてよ!」


 なんて虚空に向かって叫びながら現実逃避し始めていた時の事。


『想定より遅れてるわね。あと2分くらいじゃない?』


 あの時カフェで話していた時聞こえてきた声を思い出した。


「……そういえば今の現象が起こったの、確かにあれから2分くらいが経った頃だった」


 白が言ってた事って、これ?

 そりゃあと2分後あなたは知らない場所にいます、なんて言われても信じやしないけどさ。


「じゃあ、なんで白は近くにいないの?」


 次に浮かんだ疑問はそれ。

 もしかして白も同じようになってて、それをあらかじめ知っていたとして……、何かの影響でバラバラになっちゃって……。


『どうなったとしても、その場を動かないで』


 さらに白の言葉を思い出す。

 

「そうか、あれもこの事をわかってて……。じゃあ、この場にとどまっている方がいいのか、な……」


 そう思っていた時、後方から何かが聞こえた。

 それはとても低い、恐怖を誘う音だった。

 振り返る。とそこには、虎の様な四足歩行の獣がこちらを睨みながら唸っていた。


「げ、う、ウソぉ……」


 まるで蛇に睨まれた蛙のように体が動かなくなってしまっていた。

明日も読みに来ていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ