カフェでの再会(1)
翌日、約束していたカフェに14時少し前に入った。
見回すと店の奥に白がいた。なんていうか長いこと死んだものと思っていたのにもかかわらず、割とその存在を受け入れている自分に驚いた。
「白、だよね?」
「ああ、久しぶり」
……なんか、少し大人っぽくなったかな? 顔つきとか。表情もなんていうか、明るくなったかな。
ま、前から一年半も経ってるからね。
男子三日会わざればなんとやら、っていうし……。いや男子なんて年ではないか?
「注文はお決まりですか?」
店員さんが注文を取りに来てくれた。
白の前には既にコーヒーが湯気を立ち昇らせている。
「えと、じゃあ、カフェオレで」
「かしこまりました」
店員さんが離れる。
「で? 今まで何してたの? 私本当に心配したんだからっ!」
小声でちょっと声を荒げながらいう。
そこまで混んでないし、カフェの一番奥だから聞かれることは無いと思う。
「ごめんごめん」
「ごめんじゃなくてさ! あの事件の事とか、わかってることちゃんと教えて」
「えーっと、何から話したらいいかな……」
白が少し間を置く。
「今日俺が話すことって全部突拍子もないことばっかなんだけど」
そりゃまあ、あんな事件に巻き込まれてたらね。
「全部本当のことだから信じて欲しい」
「えと、内容による」
急に自分は宇宙人で、とか言われたら頭の方を疑うし。
「だよなぁ。えーっと、……ノクティルーカってわかるよな?」
「もちろん。東京のヒーローでしょ?」
最悪の冬が訪れる少し前、東京に突如現れたヒーロー。
もちろんヒーローなんて映画やアニメの中にしかいなかった世界だから、もちろん最初は世間の風当たりが強かったみたいだけど、その雪解けの為に奔走した立役者だからね。今では人気が出てきてる(※)。
「そうそう。ま、それが俺なんだけど」
「え?」
「え?」
どうしよう。頭の方を疑う内容が来てしまった。しかもそれを軽く言わないでよ。
可能性としては二つ。
本当のことを言っているか、事件の影響でおかしくなってるか。
「えっと、わかった。一回飲み込むことにする」
一旦、前者であることを信じよう。
「ありがとう。危ないことってのはそれのこと」
「あぁ……、そう……」
確かに想像できないことではあったけどさ。
「で、色々あって当時敵対してた組織にバレて、報復に実家を攻撃されたんだ。同じことが無いように、死んだことにしておいた方がいいと思って」
「……なるほど?」
確かに色々と腑には落ちるんだけど、大前提の白がヒーロー:ノクティルーカである、というとこがまだ疑わしいから……。
「白がそれであるって証拠は見せられる?」
「ここだと……、えっと、これならどうだ?」
そういって仮面を取り出した。
ノクティルーカが付けている、とされている仮面だ。
「……え? いやいや」
レプリカでしょ?
と思って受け取る。
重い。薄さに反してかなりの重量があった。少なくともプラスチックとかでできてるわけじゃなさそうだ。
裏返す。
なんて言えばいいのか、パソコンのマザーボードみたいな、よくわからない精密機械、と言った感じだ。
なんていうか……、これだけの再現度だとするなら、素人目で見ても100万は下らなそうというか……。
「ぅ、わかった。とりあえず、信じることにする」
そうしないと話が進まなさそうだ。
※超人に成った白は愛歌と出会い、その力をヒーローとして役立てていた。詳しくは前作、『ノクティルーカ』にて
次回も読んでいただけたら嬉しいです。