メッセージのやり取り
青水白。
この歳でそんな言葉使うのも変な感じするけど、いわゆる私の幼馴染。
家が隣同士で物心ついた時からよく遊んでいた。
中1の時、家の事情で引っ越してそれからあまり会わなくなった。
最後に会ったのは確か、高2になる年の春。また東京に引っ越してきたから久しぶりに会おう、って私から誘ったんだったと思う。
……でその時、白に告白された。
嬉しくはあったけど私としては弟みたいに思ってた相手だったし、そういう目で見ることができなくてフってしまった。
それから半年以上経った時、事件が起こる。
"最悪の冬"を象徴する、未だ目的不明とされる前代未聞の怪事件。一般家庭を狙った自爆テロ。
当時はどの家も被害に遭う恐れがあるのでは、とメディアでも警告され日本全国を震撼させた。しかし後にも先にも同じ事件は起こらなかった。
そのたった一件の事件の被害にあったのが白の家だったのだ。
思い返してみれば青水家の中でも白だけは行方不明となっていた。しかし誰も連絡を取れず、私も色々な手段で連絡を取ろうとしたのだが音信不通だったため死んだものと思っていた。
そんな死人同然の人間から連絡がきたのだから驚くのも当然だろう。
≪生きてたの?! 一年間も何してたの!?
あの後の返事としてメッセージを送った。
≫?
≫あ、事件のこと知ってんのか
そんな呑気な返事が返ってきた時は、安心より先に殺意すら覚えた。
あんな風にテレビやらSNSやらで大騒ぎになってたこと、当の本人は知らなかったのだろうか。
≫生きてはいるよ、一応。戸籍上? は死んだことになってるかもだからゾンビみたいなものかもしれないけど
それでなんでそのままにしてるの……?
いや、今はどうでもいいや。
≪今どこにいるの?
≫春村市にいるよ。相も変わらず
≪何してるの? 学校は行ってないんでしょ?
白の学校にも電話してみたから、多分それは間違いない。
≫無職。死体を雇ってくれるとこなんてどこにもないから
≪何か危ないことしてるんじゃないよね?
白のどことなく変な様子に、そんな風に勘繰ってしまった。
まあ、あいつに限ってそんなことあるわけないか。
≫してるよ
≪は?
してたとしても、正直に言うやつがあるか。
何してんだ? 麻薬の密売? 暗殺? 外患誘致?
≫安心しろ。たぶん想像してるようなことじゃないから
え、なに? 私には想像もつかないくらいやばいこと?
≫なんにせよ気になるなら話すからさ、他にも話さないといけないことがあるし。明日、14時空いてる?
急すぎでしょ。たまたま暇だからいいけど……。
≪大丈夫。
≫じゃあ。その時に色々話すよ
なんてその日のやり取りは終わった。
不可解なのは用事を終えて家に帰ってもう一度確認しようとアプリを見た時、この時話した白からのトークの一切が消えていたこと。
送信を取り消した場合消したという履歴も残る。それすらも消えてしまったのだ。なんなら既読通知すらも消えてしまっている。
まるで私が独り言を話していたかのような状態になってしまっていた。
≪えっと明日14時、秋波駅前のカフェでいいんだよね?
わけがわからなくて、もう一度メッセージを送って予定を確認してみた。
≫合ってる
ちゃんと既読がつき返事も帰ってきた。
しかし次の朝起きると同じことが起こっていた。
……なんで? どうやって?
なんて不思議に思っていたが、まあ会える時にまた聞けばいいか。と思った。
余談だけど、白のせいで電車を乗り過ごした。あとでつねろうと思う。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。