第11話:打ち上げ
アルノたちが主体となって、死神の札討伐の打ち上げパーティーをすることになった。
1時間もたったころ、白の姿が見えず探すと酒場の外に出ていた。
賑やかな酒場を背に話しかけた。
「何してんの?」
「いや、少し1人になろうかと思って」
グラスの中身を口に含みながら、
「ああ、白って大人数でいるの苦手だもんね。体育祭とかも……」
「そう言うんじゃない。ただ、……はぁ……」
「……」
え、なに。黙っちゃったんだけど。
「笑い声が苦手なんだ」
「……は?」
いや、レェス君の低所恐怖症も同じ感想だたんだけどさ、そんな人いる?
「昔のちょっとしたトラウマでね」
「笑顔が?」
「いや、笑い声が。もうほぼ治ってんだけど、今でも長い間そういう場にいると、少し気分が悪くなってしまう。とはいえ人に、笑うのをやめてくれなんて言えないだろ?」
「そりゃあ、そうだね」
絶っっ対変な空気になるし。
「だから少し休んでる」
「何があったの? 前の世界で」
「前の世界じゃない。中学ん時だ」
「へ?」
私が引っ越してから……?
「あら、御二方も休憩ですか? 私も人が多い場所では気疲れしてしまって」
酒場の方からリーフさんが歩いてくる。
「私は白の付き添い的な感じで」
「なるほど」
私たちの近くに茨の椅子を作り出し寄りかかった。
「それにしても白様のあの大技は素晴らしかったですね。あれほど高威力な魔法初めて拝見しましたわ」
ああ。ケラウノス、だっけ。
いやあ、あれは流石にドン引きでしょ……。
「どーも」
「本心から言っているのですよ。まるで天帝様の伝説のようでしたわ」
リーフさんがさらに白をほめる。
白って褒められるの慣れてないから、少し居心地悪そうにしている。
「天帝様の伝説って?」
「え、えーっといくつかありますけど」
ある時は、指先1つで嵐を呼んだ。
ある時は、息1つで荒野を花畑に変えた。
ある時は、眼差し1つで百獣を手懐けた。
ある時は、歌声1つで万兵の傷を癒した。
ある時は、歩み1つで汚水を真水に変えた。
1200年前に起きていた人間によるエルフへの侵略戦争。
その形勢をたった一人で覆し、エルフたちを纏め上げ、フラエル皇国を興した。
そして現在まで続く大国を今でも治めている。
写真は出回ってないが肖像画等は教科書にも載っているそうだ。
「すっごい人なんだね」
「ええ。私たちエルフの血を引く者にとっては永遠の憧れですわ」
白とどっちが強いんだろ。
「それにしても……」
リーフさんが私たちの顔を見る。
「あなた方は何者なのですか?」
「へ?」
急にどうしたんだろう。
「今話した天帝様の伝説は、例え海外の方であっても、まともな教育を受けた方であれば知っていることです。あなた方のパーティの方は、そういった教養が無い様には感じません」
え、えーっと……。
「それに、白様のお見せくださった技もそうですが、夜空さん。あなたもたった一人であの死神の札のメンバーを一人下しましたよね」
「え、は、はい」
「ノアさんも愛歌さんもそうですが、皆様驚異的なお力をお持ちです。ですのに一年前、冒険者として活動を開始する、その以前には全く話にも聞くことはありませんでした。あの巨大なドラゴンを討伐するという華々しいデビューを飾っておきながらです」
……。
え? 尋問受けてる?
「もう一度お聞きしますね。皆様は何者なのですか?」
「ちょーっと話しにくくて」
「もしや、死神の札の仲間、などということは」
「へっ?!」
ああ、それを疑われてたのね。
「え、えーっと、白、どうする?」
私たちの素性って話してしまっていい物なのかな。
「別に話しても問題ないよ。それで理解してもらえない相手じゃないだろ」
「???」
その言い方にリーフさんは混乱している。
「え、えーっとじゃあ、お話ししますね。私たちのこと」
「は、はい」
時は一年以上前に遡る。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
DISC1がこれで終わり、少し休憩を挟みDISC2に入っていきます。全部で5章編成にしようかなと今のところ考えています。
もともと初めから終わりまで書ききっていたのですが、こちらに投稿するに当たりDISC1を後付けで書き足してみたものなので、少し計画性のないものになったかな……? それでもお楽しみいただけていたのなら、嬉しいです!
DISC2からは時系列的にDISC1よりも過去の話からはじまり、説明会も多くなってしまうかもしれません。お付き合いいただけたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。