第10話:新蜂VS死神の札(7)
剣を振るう。また当たる前に避けられる。
「面倒だな。本当に」
"世界"はもう遠くに逃げたところで意味はないと判断したらしく、俺の周りを小さい範囲でしかも断続的にランダムにテレポートを続けている。
そして。
「ちっ!」
時々、俺のすぐ横や後ろ、前に現れては攻撃をし去っていく。
「舐めるな!!」
後ろに現れ、ナイフで背中を突こうとしてくる。
ギリギリのところで急所は避けたがついに攻撃を喰らってしまった。
「ったく、いってえなぁ」
霊力で傷をスキャンし状態を確認する。
「思ったよりも浅そうだな」
すぐに回復魔法をかける必要はないと判断し戦闘に戻る。
「あなたがいくら驚異的なスピードを持っていようと、点と点を線でつなぐことなく移動できるあたしには勝てない!」
「へぇ。そうかいそうかい」
俺は剣をしまった。
「? 光弾でもする気?」
「いや、お前の弱点を見つけた」
「はあ? そんなものあるわけ」
「あるんだなこれが。それもそう難しい話じゃーないんだぜ? 愛歌やノアならとっくに見つけてただろうな」
「ふざけるな!」
もう一度同じように、ランダムにテレポートし始める。
「まずはお前自身の弱点。火属性魔術:火矢っ!!」
火の矢の魔術を空中に向かって投げる。
そしてその先に現れた世界の左肩にぶつかる。
「あっっつ!」
一度離れた場所で動きが止まる。
「これが一つ目。お前はランダムにテレポートしているように見えてその動き方には規則性がある。まあ、たぶんお前自身も気づいてない癖なんだろうけどな」
「な?! ちぃ!」
また同じようにテレポートする。
今度はさっきとは違い規則性はなく見えた。
そして突如俺のすぐ横に現れナイフを突き出してくる。
「?!」
何とか反応することに成功しその腕を右手でつかんだ。
「これがお前の能力の弱点だ」
掴んだ腕を離さないようにしつつ、左手で顔面を殴った。
「俺に掴まれてちゃさ。テレポートした所で俺もついて行ってしまう。だからテレポートする意味が無くなっちまうよな!」
「くぅっ……」
「どれもこれも同程度以上のの実力を持った相手との戦闘訓練を積んでいれば気づけたであろう弱点だ。自身に与えられた能力と戦闘力にかまけた結果だな」
同じように左手だけは絶対に話さないようにしつつ、世界に攻撃を加え続けた。
「よく、女に対してそんなことができるね!」
苦し紛れに何かを叫んでいる。
「俺はそんなこと気にしない質なんでな!」
鞭のように世界の体を地面に叩きつけた。
それを数度続けダメージを蓄積させたところで放り投げた。
「ぅぅぅ、痛……。だけど、手放したね!」
世界は一瞬力んだ後で、不思議そうに焦っていた。
「なぜ?! なぜ能力が……」
「俺の魂源:消滅だ。掴んでいた手でお前の魔力と闘気力を完全に消し飛ばした」
「?!!」
これでテレポートはできない。
「ま、ま、まって! お願い待って!」
こうしてやっとのことで世界を倒すことができた。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。