第10話:新蜂VS死神の札(3)
数度の金属音が霜の降りる森に響き渡る。
氷塊での攻撃はもう効かないと踏んだか、短剣をもう一つ取り出して両の手で短剣を扱いながら私の攻撃を捌いていく。
少しだけ後ろに下がって、地属性魔術を使って岩石を作り投げつける。
女帝は大きく避け私に追撃してきた。
「やっぱりね」
「なに?」
「あんた。闘気力で誤魔化してるけど。魔法が苦手でしょ」
「ちっ」
蹴りを横にそれて避け、刀を振り上げる。
「同じ温度の操作である火属性魔術は対処できても、火、氷以外の属性魔術は苦手なんでしょ!」
手のひらから突風を起こし、それを女帝の腹のあたりに叩き込む。
そのまま吹っ飛んで行き、すぐ近くにあった木に叩きつけられたようだ。
距離を詰め首を狙うがまた避けられる。
「魔法が苦手、と言っていたけど、忘れたの? ルトとソラを呪ったのは私よ? 霊術の類は使えるの」
「へぇ、そう!」
興味ないとその言葉を適当に流し、木と私に挟まれた女帝にもう一度攻撃をする。
軽く避けられるが、さらに追撃をつづける。
ドガっ!
「っつ?!」
腹部の鈍痛と共に体が地面を転げる。
どうやら蹴りを入れられたようだ。
嗚咽を漏らしながら、なんとか上体を起こし来るであろう追撃に備える。
しかし……。
「っ……?!」
私に短剣が振りおろされる短剣がピタリと目の前で止まった。
「なっ……」
何が何だかわからない、といった顔で女帝はその場で動けずにいた。
「やっと効いてきたみたいだね」
「体が重い……、うまく動かない……。何を……、何をしたの?!」
「あれ? さっき得意だって言ってなかった?」
「なんの話……?」
「あなたに私は呪いをかけた」
「なっ?!」
「人に使うのは得意でも、自身の体にかけられていることに気づけないの? じゃあ解呪も難しいかな?」
まあ、気づかれてたら気づかれてたで他の方法は考えていたんだけどね。
私の方が呪術でも上手だったってことかな。
「い、いつの間に……」
「随分と前からかな。ほら、あんたらの親玉? 死神ってやつの持っている呪いあるでしょ? あれを模倣してみたんだ。うまくいったね」
「し、死神様の呪いを模倣……?」
そうつまり剣を交えるたび、こいつに呪いを付与し続けていたのだ。
女帝はもう立つことも厳しく、地に伏している。
その女帝の首筋に刀を当てる。
「さあ、覚悟はいい?」
小さい声でもう一度、私は私に問いかける。
(これが超人として……、いや、人間の私として、最初の殺人……)
その事を深く心に刻み、力を入れた。
しかし。
「は、恥ずかしくないの? こんな卑怯なやり方で勝って!」
女帝がそう叫んだ。
「卑怯?」
流石にイラっとした。
「呪いで人々を苦しめて回ってたドブネズミがよく言うよ。あんたにはお似合いの末路でしょ」
「ま、まちなさ」
ザンッ!
首をはね飛ばす。キラキラと血飛沫が舞った。
この感覚をこの光景をしっかりと目に、心に焼き付けろ。
「これで私も殺戮兵器の仲間入りだ」
これからもこの上に死体を積み上げて、一生かけてこうした罪を抱えて生きて行かなくてはいけないのだから。
「仇は代わりに取っておいたよ、ルトさん……」
もう一度呟いた。
ザザっ。
「っ?!」
気を抜いたのもつかの間、女帝の体がかすかに動いたように見えた。
「気のせい……?」
ザザザっ。
「じゃない!」
なぜ?
頭は確実に切り落としたっていうのに……。
時間がない。もう一度今度は確実に心臓を突いて、そして死を確認して……。
そんな事を考えている間に、まるで血を引きずられていくように、女帝の体が動き出した。
「いや、死んではいる。けど何かの力に引っ張られてる……?」
なぜ? なにに?
「とにかく追いかけないと」
そう思い、女帝の体の後について行った。
次回も読んでいただけたら嬉しいです。




