第1話: 拝啓、空の青さを知らぬ貴女へ(1)
※追記:初見の方へ
はじめまして。こちらの物語に興味を持っていただきありがとうございます。
エピソード288、289に今からでも最新章に追いつける「これまでのあらすじ」を用意してみました。
お時間が限られている方はよろしければ、そちらから入ってみてはいかがでしょうか?
ぜひとも主人公たちの物語をよろしくお願いいたします。
はじめまして。竹湧綺です。
この小説に興味を持っていただき、ありがとうございます。
前作「ノクティルーカ」の続き……、といよりあちらを前日譚にもっているといった立ち位置の小説です。つまりこちらが本編。
あちらを読んでいなくても楽しめるように書いていくつもりですので、楽しんでいっていただければ幸いです。
―――貴女の事を思い出すと、決まって考えます
大樹の大きさは
空の青さは
夜の闇は
草原の鮮やかさは
海の広さは
……貴女の美しさはどの様に言葉を紡げば、目の見えない貴女の心に届くものかと
貴女はきっと、貴女の前についに現れなかった私を恨んでいるでしょう。
目の見えない貴女にこの言葉を送るのは適切ではないかもしれませんが、それでも伝えさせてください。
貴女の瞳は今まで出会ったどんな人のものよりも美しかった―――
目の前にいる依頼主の男が、その手紙を読み上げる。
「この手紙が残されていた全てです」
「……そりゃ、ヒントが多くて助かるね」
私の冒険者仲間の男、青水 白がため息を吐き、皮肉交じりにぼやく。
この手紙だけを頼りに宛てた人物を探してくれ、というのだから文句を言いたくなるのも当然だ。
しかもこの手紙、約20年前の物らしい。書いた本人が75歳で亡くなる直前に書いたもの。探す人物が今、生きているかどうかさえ定かではない。
「報酬は前金15,000フル、達成後に25,000フル、合計40,000フル、でどうでしょう?」
「それってどんなもんだ?」
白が仲間の一人である半透明の女の子、愛歌さんに訊く。
「約3400ドル。日本円だと約50万円とちょっとってとこ? まあ、妥当なんじゃない?」
どんな人かもわからない人を探すための依頼にそんなお金を使うなんて……、お金持ちはいいね。
「必要経費は別途お支払いますし、結果次第では色も付けさせていただきます。どれだけ時間がかかっても構いません。私はこの手紙の"貴女"が未だに待ち続けているような、そんな気がするのです。どうかよろしくお願いします」
その依頼を受け、私たちはその酒場を後にした。
―――世利長愛歌の記憶領域:file.1【主人公たちについて】―――
主人公である紅花夜空
青水白
ノア=ルーナ・ヴェノニミス
そして私、世利長愛歌の4人は、つい先日"異世界転移"をしたの。
今はとある目的のためにここ、フラエル皇国の中央都市フラウロウにて冒険者として活動している。
いわゆるチート能力みたいのを貰ってるわけではないんだけど、代わりに普通の人に比べて身体能力が強化された肉体を持っている、とまず思ってもらって構わないわ。
『世利長愛歌の記憶領域』では物語中で語り切れなかった世界観や設定を、登場人物である愛歌さんが補足してくれます。