『ショートショート』カニ
「ホームルーム始めるぞー!」
教師の大きな声、体育終わりの6時間目には少々きつい。
「お待ちかねの席替えをします」
教室のあちこちから、様々な声が聞こえてくる。
喜ぶ声、文句の声、まぁ色々だ。
俺はと言うと平然な顔をしているが、実は神に祈っている。
それもそう、俺には好きな子がいる。
隣にとは言わない、近くの席になりたい、本気でマジで。
あと、願わくば後ろの方がいい。
「じゃあ今回は女子から引くかー」
と言うことは、なるほど、
結衣の隣の番号を引き当てるだけ。
とりあえず右手の甲をさすってみた。
結衣は4番の席だ、窓側の後ろから2番目。
一番いいとこだ、さすが結衣。
よし、俺は9番ひく。10でもいい。
人知れず気合いをいれた、いれまくっていた。
「いおり!俺9番引いてくるわ〜」
邪魔が入った、親友の拓実だ。
茶化してくるなクソ野郎が!
唯一、俺の好きな人を知っているが揶揄ってくる。
引いたら殺す。
なんて言えないから、とりあえず睨むことにした。
この世の終わり顔でこちらに向かってくる。
16番、デス番だ。教卓の真ん前の1番前。
ご愁傷様です、俺をからかうからだ。
続々と番号が埋まっていく中、結衣の隣9番は空いてる。
引ける!俺なら引ける!
ずっとやってる野球でも初めてもらった番号は9だ。
これは確実に引けます。
教卓の前に立ち、謎の自信を持ち箱の中に手を突っ込んだ。
あぁ、先週に通学路のゴミを拾ったのが良かったのか
9番を引き当てた。心の中はガッツポーズ。
片眉を上げ自信げな顔で拓実を見てやった。
後はみんなが引き終わるのを高みの見物ってわけ。
待ってくれ、まずい事を思い出した。
急いで筆箱からコンパスを取った。
「よーし、自分の引いた番号に、机移動させろー」
教師の言葉と共に、机を動かす音が教室に響いた。
拓実は死んだ顔をしている。
「後は自由時間や、好きにしとけー」
ナイスだ教師。そうゆう所大好きだ。
「よろしく〜」
結衣が声をかけてくれた。可愛い。
ショートカットがたまらなく似合っている。
なんかいい匂いもしてる、心の中で2回目のガッツポーズ。
「いおりくんって、カニ好きなの?」
くると思っていたその疑問。
用意していた台詞を結衣に返す。
「そうそう、カニって横歩きするだろ?それが好き。」
なんやそれ、本当に思う、なにそれ。横歩き?
そんなクソ理由でも結衣は笑ってくれた。
「変な人だね、いおりくん」
そう笑いながら結衣は机に出していたコンパスを片づけた。
本当のことは言えない。
結衣のイニシャルが「Y」だから、カニになったんだよ、
カニ爪が結衣の「Y」だよなんて言えないからね!!
結衣の机にもになにか彫られている
やけに首が垂直な角張ったキリンだ。
あえて触れずに。
俺と同じであってくれ。
そう神に祈った、本日2回目の神頼み。