殲滅の後処理。
食道の入り口に口内炎。なかなかつらいです。
レッドキャップとナイフの処理を終えて元ゴブリンの集落に向かった。案の定、150は超えていたはずであろうゴブリンの死体は100体以上が見るも無惨なな状態で積み上げられていた。
「なあ夜、ドロップどれくらいだ。」
「んー、えー、あー・・・」
「どれくらい失敗したか。」
誤魔化す気配がしたので、わざとゆっくり語り掛けた。
「すみません!半分以上は失敗してしまいました。」
まさかのダイビングスライド土下座であった。
「まあそんなとこだと思ったよ。内訳は?」
「えーとですね、8割方が血液です。」
微妙に反応に困った。ゴブリンの血液は睾丸や肝ほどではないが、良い薬品になる。だが、血液は他のドロップアイテムに比べて極端に重く、容量も多いためアイテムポーチを占有する。そして量が多いため単価は安い、最後に保存可能期間が短いため買い取ってくれる場所は少ない。こういうところがこのゲームに対する俺の不満点である。ゲームならアイテムの無期限保存ができるようにしておけよと。まあ、今文句を言っても仕方がないのだが。
「仕方がない、買い取ってもらえるだけ薬品ギルドに買い取ってもらって、残った分はドルメさんにアイテム製作してもらうか。」
「すみません。」
「今更気にしてもしょうがない、使えるものを使うしかないさ。」
金策に半ば失敗したことに落ち込みながらも、夜・ウィッチのフォローに努める。ちなみにドルメさんとはうちのクランサブリーダーのドールメーカーである。金に目がないのでドルメとクラン内では呼ばれている。寂れた錆さんの親戚で、新卒の社畜らしい。
「ひとまず残った分は俺が処理するから燃やす準備をしといて。」
「了解。」
倒した敵は死体を燃やすか、何かしらの処理をしなくてはいけない。殺してそのまま放置しておくと、病気の発生源になったりして周りに大きな被害が出ることになる。まったくこのゲームは謎にゲームっぽくない部分がある。
死体の処理を終え、夜・ウィッチの方を見ると、浅いが広い穴を掘っていた。
「どれくらいかかりそうか?」
「10分くらいかな。」
「了解。近くで着火剤になる枝を取ってくるよ。」
「はーい。」
集落となっていた広場を抜けて森に入ろうとするとき、ハンドインデッドとちょうどすれ違った。
「地雷の撤去は終わった。スカイは、ああ着火剤か。」
「そう。夜が穴を掘り終わったら。穴に死体を運び入れといてくれ。」
「了解。一応、気配探知で地雷の残しがないか確かめてくれたら助かる。」
「オッケー。じゃあまた後で。」
そこから枝を集めつつ地雷の確認を行ったがさすがは爆弾魔自分が準備したものに関しては抜かりがない。幸い、枝はすぐに集まったので、2人の元にすぐに戻れた。
「ただいま。準備は終わってるね。」
「ええ。」
「ああ。」
それから、枝をちりばめて、ハンドインデッドが持ってきていた油をまいて、火をつけた。
「俺は素材を薬品ギルドに届けるために先に戻るよ。あとは任せた。」
「いいけど、農場の方には寄らないの?一応報告しておいた方がいいと思うけど。」
「いや、さっき枝を集めているときに気配探知で農園で話した人の気配を感じたし、大丈夫でしょ。」
「それならいいけど。」
「それに、依頼をしてきたのはギルド長だから、そっちに報告すれば十分でしょ。時間があれば言ったけど、もう12時近くになってるから、さっさとログアウトしないと。」
「あんただけ先に帰る気?」
夜・ウィッチは眼を細めてにらんできた。ハンドインデッドにSOSを送ろうと思ったが、あっちもあっちでこちらを気にせず火を眺めていた。
「いやいや、あの油の燃焼だと、もう数十分もすれば燃え尽きるだろ?俺の場合はどんなに早くても手続きとかで一時間以上はかかってしまうから、俺の方がログアウトはおそくなってしまうぞ。」
「そう。」
なんかコレジャナイ感が彼女から感じるのは気のせいだろうか。ウン、気のせいだ、そういうことにしておこう。
「じゃあ、また明日ー。」
「ハイハイ。」
「・・・。」
最後まで彼女は黙ったままであった。どうしよう。よし、明日謝ろう。
ちなみに製作後のアイテムも使用期限があります。