転生することになりました!
「こんにちは」
目が覚めるとには知らない景色が広がっていた。白い部屋に白い調度品。
そして可愛い見た目の神様っぽい服装をした女の人もいた。
そんな若い女性がにこりと微笑みかけてくれていた。
「こ、こんにちは。えっと、ここは一体?」
「ここは天国という場所ですよ。あなたは前世で死亡しここに来ています。覚えていますか? 橋の上から落下してしまったことを」
そう言われて思い返してみると心当たりがあった。付き合っている彼女と夜中自宅に帰る途中痴話喧嘩になり、彼女に突き飛ばされた拍子に柵が壊れてそのまま暗い闇に飲み込まれ……
「……思い出しました。確かに僕は死んでしまったんですね」
「その通りです」
「ですがなぜこのような場所に……?」
「ああ、はい。それは今回謙二さんには転生するチャンスをお与えしようかな、と思いましてね」
「転生……別の自分に生まれ変わる、ってやつですか?」
「そうですよ、と言いましても今回は生前のあなたをまるごとコピーした肉体に魂を吹き込む形をとりますので、容姿がこれまでと変わるといったことはないですけどね」
なるほど転生か。急に言われて驚いたけど、それはとても嬉しい処置だな。
「因みに今回は本当に特別で転生していただくのは地球ではなくて異世界の方になっております」
「異世界……ですか」
「はい。剣と魔法の世界で、人間以外にも様々な種族が暮らしている星ですね。その世界で謙二さんには邪神を倒すべく、ご健闘していただきたいのです」
邪神……だと? 聞くからにヤバそうなやつだ。俺なんかがなにかできるとも思えないのだか……
「あの、大変申し訳ないのですが、恐らく僕の力ではその邪神とやらに太刀打ちするのは無理なんじゃないかなと」
「それは強さという面でおっしゃっておられますか? それでしたらなんの心配もいりませんよ、そこはこの私、神様パワーで超強化して差し上げますから。こんな風に、えい!」
そんな可愛い言葉と同時に急にこちらに人差し指を突きつけてきたかと思えば、そこからビームが放たれ俺の体を優しく包み込んできた。
ビームが止んだ頃には、俺はそれ以前と明らかな違いを感じ取っていた。
「どうですか? 違いが分かりますか?」
「は、はい。これはもう物凄いですよ。力が体の奥底から沸き上がってきますよ、勝てます。これなら勝てます!」
実在筆舌に尽くしがたい力がそのポテンシャルを早く解放したいとばかりに体の外へと溢れだしている気がする。これは本当に凄い。これならどんな相手が来たって絶対に負けやしない、そう断言できる。
「そうですか、それは頼もしいお言葉ですね。それでは謙二さんにはその力を持ってして異世界に赴いていただき、そこにいる邪神を倒していただく……ということをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「はい! 任せてください! この僕が必ずや邪神を倒してみせましょう!」
「ふふ、ありがとうございます。期待して見守らせていただきますね。ではそうこう言ってても仕方がありませんので、早速転生していただくとしますか。あっ、因みに今回は謙二さん以外にも邪神を倒そうと画策している方達が現地におりますので、その方達と協力して任務にあたっていただくことになるかとは思います。急な異世界ということで、なにか分からないことや不便なことなどあるかとは思いますが、その時は是非その仲間達を頼っていただくとよろしいかと思います」
「わかりました。何から何までありがとうございます」
ああ、転生か、ついに始まるんだな俺の異世界の冒険譚が。実はこういうの昔から憧れてたんだよな。名もない未開の領地に足を踏み入れ、津波のように押し寄せてくる敵をバッタバッタとなぎ倒す。
うん、実に男日和がすぎるというものじゃないか。これから俺が異世界でどんな活躍をするかと色々妄想すると、今からニヤニヤが止まらなくなってしまうな。ああ、早く活躍したいな。そのためにも、精一杯頑張らないとな。
「因みに転生していただく場所てすが、これはシンプルに森の中になります。ただ近くにテストロンという大きな街がありますので、そこに行っていただければ問題ないですからね」
「わかりました。まあ人影がない場所はかなり助かるかもしれません」
というのも、やはり最初は異世界ということもあり不安も感じることだろう。それを、落ち着かせるという意味合いもあるし、俺がたった今手にした力、これがどれだけのものなのか簡単に理解するための時間も欲しかったしな。
「そうですか。それならちょうど良かったですね。あ、ではそろそろ時間が近づいて参りましたので、転生を始めさせていただきますね」
その言葉と共に俺の体は輝きを放ち始めた。異世界では一体どんなことが待ち受けているのだろう? 辛いこともあるだろうか。いや仮にどんなに災難なことが降り注いできたとしても俺は絶対に諦めない。必ず成果をだしてみせるからな!
「それでは、ご武運をお祈りしております」
そうして、俺の意識は途切れていった。