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1週間だけ彼氏

作者: 大熊 なこ

 ○月✕日 月曜日 晴れ


 今日は、とっても素敵な出会いがありました。授業が一緒になった彼と、少しだけお喋りしました。彼は、私の心をモサモサと奪い取ってしまったのです。

 彼の高い鼻、スッとした目、天然パーマの髪の毛。どれもこれもが素敵で、私は見とれてしまいました。そしたら、彼の方から話しかけてくれました。

「どうしたの?」

 とても綺麗な声でした。しかし、寡黙な私は、うんともすんとも言わずに黙り込んでしまいました。彼は少し決まりが悪そうにして、他の方たちとお喋りを始めてしまいました。


 自分の不甲斐なさに腹を立てました。ここに、宣言します。私は彼に相応しい女になって、彼と結婚します。帰り道は、彼との妄想で頭がいっぱい。結婚式は、どういう風にしようか、子供は何人産むか、どうやって子供を産むか……。そろそろ恥ずかしくなってきたので、妄想を一旦止めました。



 ○月✕日 火曜日 曇りのち晴れ


 可愛くなろうと思いました。朝五時に起きて前髪をセット。しかし、一朝一夕にはいかないものです。ヘアアイロンというものはむずかしくて、前髪が、カックンカックンと曲がってしまいました。直しても直してもカックンカックン。最後には、もう何をしても戻らなくなってしまって、そのまま大学へ行きました。ああ、嫌だ。電車の中で、かわいいJKがお話で盛り上がって笑ってなんかいますと、私の前髪を笑われているような気持ちになりました。カックンカックン。

 けれど、今日、彼は大学をお休みしていたようで、会うことはありませんでした!よかったぁ。一安心です。あんな前髪、彼には絶対見られたくありません。



 ○月✕日 水曜日 曇り


 今日は、彼が女性の方とお喋りしているのを見かけました。胸が苦しくなりました。けれど、きっと、ただの用事で話しかけただけなのです。彼は、たぶんモテないので。だってだって、まったくカッコよくないのですから。友達も言っていました。あいつ、キモいよねって。私だけなのです。彼がかっこいいことを知っているのは、私だけなのです。



 ○月✕日 木曜日 雨


 前髪を上手く巻くことができました!なのに、今日は彼を学内で1度も見ることが出来ませんでした。寂しいです。私は今日も、あなたの事を思っています。



 ○月✕日 金曜日 雨


 私、ダメでした。彼には、奥さんが居たようです。授業で話していて、ビックリしました。あんな人に、奥さんが……。私はもう、彼の授業は取らないと、心に決めました。


 彼の仕事は、大学教授。



もし「彼」がどの人からも好かれていたなら、きっと「私」は彼に恋をしなかっただろう。「私」だけが「彼」の魅力を理解できるという優越感を、恋という感情だと勘違いしていたのである。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 先生でしたか。 (^^ゞ
[良い点] なるほど、発想が好きです(๑╹ω╹๑ ) なこさんの小説と感性、とっても好きなのです♡
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