ドラゴンおじさんの秘密1
「やっぱあの山の上がお前の棲家なのか?」
「まずお前達がこの島に訪れた事が有り得んのだ。よし。着いたぞ。とりあえず降りろ」
山の上というか雲に近いくらいだからかなり寒い場所かと思ったが全然寒くなく空気も薄くない。寧ろ居心地が良い環境だった。ただ、周りは霧で岩肌しかない場所で一箇所柔らかそうな新芽の葉っぱの山があったが恐らくあの上でこのドラゴンおじさんは寝ているのだろうと思う。
「とりあえず何もない所なんだな?よければ俺の仲間も呼んでいいか?」
「貴様の仲間はテレポートを連発できるのか?あれは我でも中々の魔力を使うぞ?」
「あれはテレポートではなく・・・まあこれもまた追々言うさ。とりあえずいいか?」
「しょうがないな。みんなをもてなしてやろう。呼ぶが良い」
"ルクス?さっきは助かった。俺を通して見えてると思うがーー"
"すぐ向かいます"
さっきまで魔力枯渇してたはずたが・・・やけにルクスの反応が早いが、多分呼ばれる事知っててさっきもわざと反応せずに魔力回復に集中してたんだな。絶対このドラゴンおじさんをデータバンクにアップデートするためだな。
「なんじゃ!?お前はさっきの?もうテレポート使ったのか!?」
「私を舐めないでもらいたいですね。光属性 上級精霊でもありエクセルシオ第18世代軍用脳内チップAIでもあります」
「うん?なんじゃそれは?それとあの人間の女が二人と上級精霊一人中級精霊二人居たはずじゃが?」
このドラゴンおじさんはやっぱ人間が好きなんだな。良く人数とか覚えてたな。
「あの二人は安全な所で待機させてます。それよりあなたの話しを色々聞きたいです」
「我に興味があるか!?いや中々に面白い精霊の女だ!光属性なら・・ウィスプの眷属か?」
「御名答。私の二番目の主はウィスプ様です。一番はこのトレノ曹長です」
「ほう。ウィスプが究極障壁まで使える権能を与えておるか。実に面白い。できればあの火属性の上級精霊とも話したかったのだがな。イフリートは元気しておるか聞きたかったのじゃがな」
「てか急に変な人間のじいさんみたいな話し方になったな?それとイフリートは会ったけど元気そうにしてたぞ」
「本来はこんな話し方だ!悪いか!?それと貴様はイフリートに会ったのか!?どうやって!?」
俺は精霊界に行き直接会話した事とさっきテレポートと勘違いしていた転送の事を簡単にだが伝えた。それと一緒に俺の出身や国の事なども伝え、このドラゴンおじさんは途中で口を挟む事なくちゃんと聞いてくれた。
「理から完全に外れておる存在か。なら貴様が精霊界に行っても糧にならんのも分かるな」
「この世界の人間は精霊界に行けないのですか?」
「行けない事もないがわざわざ大精霊と呼ばれる存在が人間如きにそこまでするかという話しである」
ドラゴンおじさんが言うにはこの世界の人は髪の毛一本に至るまで微量ながらも魔力があるらしく、その魔力が強いのがエルフやドワーフの総称の魔族らしいが、魔力の弱い人間が精霊界にいけば大精霊のマナに吸収されてしまうという事らしい
「ならこの世界の出身者は精霊界に行けないんだな。それとさっき言った'もてなし'という言葉はどこで覚えたんだ?」
「おう、そうだ!もてなすのを忘れておった!確かここに・・・あった!あった!これを使うが良い。それと・・パチンッ!こんな感じでどうじゃ!?」
ドラゴンおじさんが器用に指を鳴らすと辺り一面岩肌だった景色が綺麗な花畑に変化し、人間が座れるテーブルと椅子が現れた。渡されたコップは物凄く煌びやかなコップだった。それにオレンジ色の果物みたいなのを絞ってくれた。
「久々じゃから感が忘れかけておるがどうじゃ!?」
「これはこれで素晴らしい魔法で行使した魔法名すら分かりませんが私もこんな風な事くらいはできますよ?」
そう言うとルクスはドローンのバトルホログラムビジョンを片手に仮想ルーム、エクセルシオの高級レストランの要人席を映し出した。
「ほう。我に張り合うか?ウィスプの眷属よ。ではこれはどうだ?」
「ほほほ。こんな物こうすれば!」
「クッ・・ならこれでーー」
スパコンッ!!
「ルクス!辞めろ!張り合うな!ドラゴンおじさんも辞めろ!」
「なっ!?我に向かってドラゴンおじさんじゃと!?」
「そうだろ!?あんなに気高く見えたドラゴンが何で女に焦って、なんの魔法か知らないけど打ち負かされそうになってるんだよ!?」
「ふん。我は空の覇者!アシュタルトと同格でドラゴンじゃ!負けそうになぞなっておらん!少し手を抜いてやっただけじゃ」
「あら?私はまだ他にも色々な仮想ルームを出せますよ?」
ルクスは相当な負けず嫌いか?ユウコの時にもそうだけど張り合うなよ!?
「ルクスっ!!これ以上言うと帰らすぞ?」
「はっ。申し訳ありません」
「ドラゴンおじさんも俺のツレが悪い。では折角出してくれた飲み物を頂こう」
「光の精霊よ?我の勝ちじゃな?ふははは!貴様が生まれた世界は面白い物があるようじゃな?地球という世界と似ておるのう」
「地球!?おい!ドラゴンおじさん!地球を知ってるのか!?」
「なんじゃ?貴様も知っておるのか?あの世界に昔のツレが居ってな?少々悪さをして封印されてしまってのう。空こそ飛べん奴じゃったがあの綺麗な鱗・・・牙・・あのフェロモン・・・それにあの目つきが堪らんかった。頭も八つありどの顔も綺麗じゃってな?・・・・ゴホン。いや何でもない。そのツレが居て少し知っておるだけじゃ」
いやこのドラゴンおじさんの片想いの相手がいたのか?あの第三惑星 地球にこんなドラゴンが居たなんて調査してる時にも気づかなかったぞ!?
「なんていうかそれは・・・封印されて残念だったな。ドラゴンおじさん・・てか、言いにくいな。あんたに名前とかないのか?それにこの飲み物物凄く美味いな。なんて果物なんだ?」
「我は誰にも従うつもりはない!我はアシュタルトと眷属でもあり友でもある。アシュタルトには我が眷属と勝手に言っておるだけだが・・・・それに我にはこの世界の始まりの時アシュタルトに付けてもらった名前が・・・・ない!?我に名前はなかったのか!?気にした事もなかった!!」
「なんだよそれ!?名前すらないのか?とりあえず今はおじさんでいいか?それと地球という惑星には行けたりするのか?」
「おじさんはやめろ!!我はまだおじさんではない!少々歳は食ったがまだまだ若いドラゴンにも負けん!」
その後このドラゴンおじさんが言うには地球の昔にはマナが漂ってたらしく色々な魔法があったらしいが人間同士の争いが多く魔法を伝える者が少なくなり徐々に魔法が衰退していったらしい。
その封印されてる彼女?は未だ少し漂っている魔力を吸収しながらこのドラゴンおじさんと念話という無属性の魔法で会話をしていたのだがこれもここ200年程途切れてしまったらしく、地球の魔力はなくなったのだろうと言う事だった。
魔女という地球の種族がこの世界で言うエルフと似たような感じでマナが強かったらしいのだが魔法が使えない人間から狩られ迫害され種族根絶されたと言っていた。
「俺は今の地球の上辺の事しか知らなかったが地球も中々壮絶な歴史があるんだな。ルクス、さっきの事はフォルダー分けして保存しておいてくれ。それで何で俺達がこの島に来る事が有り得ないと言ったんだ?」
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