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面白い感情

 「ミーアさんこんにちわ」


 「あらトレノさん!お久しぶりです!元気してますか?その綺麗な隣のお姉さんは?」


 「新しく仲間になったルクスって子だ。よければ俺とパーティー組みたいから登録してもらえるかな?」


 「ルクスと申します。冒険者登録は初めてなのでよろしくお願いします」


 よし。今度は普通通り挨拶できたぞ!てかミーアさんジロジロ見過ぎだろ!?


 「あの?私の顔に何か?」


 「いや、今日はシルビア様は見えませんが、そのシルビアさんにルクスさんとまた美人が多いなと思って見てしまいました。羨ましいなと。悪気はないので許してください」


 「人の顔なんか人それぞれ。そもそも誰が綺麗可愛いカッコイイなんて所詮人間は魂の器でしかないから気にしないで良い。大事なのはその人間の魂の性格」


 あぁ〜あ。少し褒めてやろうと思ったらすぐこれだよ。ミーアさん少し顔引き攣ってるし。


 「ミーアさんすいません。このルクス少し性格が変わってますが悪さする子じゃないので許して下さいね?それで何か試験とかあるのですよね?」


 「あっ!はい!随分哲学的な事言う人なんだなと思いました!えっと、試験はありますがすぐに受けられますか?今日の試験官は・・・ダルカスさんですか・・・」


 「初めて聞く方ですね。その方がどうかしましたか?」


 「いえ、ダルカスさんは中々加減しない方なのでルクス様が・・・」


 「私なら大丈夫よ。どちらに行けば?」


 「こちらの部屋を入り、下の階段を降りれば鍛錬場なので待っていてください」





 「ルクス?多分そこら辺に立てかけられている刃の付いてない刀を使うと思うが手加減しろよ?どうせお前の事だ。エクセルシオに残ってる剣技全てアップデートしてるんだろう?」


 「もちろんです。大丈夫です。ある程度の所で転けて終わる予定です」


 「ならいいが・・・とにかく目立たないようにな?もし魔法と言われても加減しろよ?」


 「了解致しました」


 本当に大丈夫だろうか・・・これは早くAIの学習能力に期待するしかないか。


 


 「待たせたな。俺は引退はしたが元特級冒険者ダルカスだ!試験を受けるのはそのお嬢ちゃんか?」


 「はい。ルクスと申します。よろしくお願いします」


 「あーあー!やめときな!俺は試験に手加減はしないんだ。冒険者目指してる奴に手加減してそいつを合格させて魔物に殺されたら寝覚めが悪くなるんだ。悪い事は言わねぇ。そんなに顔が良いんだから良い男見つけて暮らせ」


 まぁ、もっともらしい言い方だな。俺が試験官でも同じ事言いそうだ。手加減しても良い事なんか一つもないしな。


 「私なら大丈夫です。この剣を使ってもよろしくて?」


 なんか、言葉が怪しくなってきたぞ。大丈夫か・・・


 「怪我しても恨むなよ?それに合格するかしないかは本当に腕を見てからだからな?」


 「大丈夫です。もう始めてよろしくて?」


 「ふん。抜かせ!」



カキンッカキンッカキンッカキンッカキンッカキンッ



 おいおい!ホログラムで見てるような撃ち合いじゃないか!?やり過ぎだ!



 "ユウコ!その辺にしておけ"


 "了解致しました"



 「キャッ!!!!!」


 「おい!お前!今わざとだろ!?あんだけ俺と互角に撃ち合いしていきなり力負けなんか可笑しいだろ!?立て!!」


 「いや私は本当に・・・」


 「いくらお嬢ちゃんでも俺を馬鹿にしてるのか?自慢じゃないが俺も元特級冒険者だ。あれが演技な事くらい分かる。お嬢ちゃんが何者か分からないが俺も本気出してもいいくらいだ」


 いやあれが本気じゃないのか?確かにルクスは本気ではないだろうと思うが・・・特級とは初めて聞いた階級だが1級より上だろう。このダルカスって人の剣は俺より上かもしれないな。



 "曹長 どうすればよろしいでしょうか"


 "怪我しない程度に相手してダルカスの剣を手から弾くとかできるか?"


 "了解致しました"




 「そうだ。その面構えだ。かつてマーダーウルフの特殊個体と相対した時のような感じだ。お嬢ちゃん・・いや悪い。ルクスと言ったな?どこで剣を習った?」


 「トレノ曹長に習いました」


 「うん?トレノ曹長?誰だ?帝国の兵士か?」


 おい!馬鹿か!?なんでこんな時まで敬称をつけるんだ!?


 「横に居る男性です。かつて亡国の兵士で曹長という役職でした」


 「そうか。お前が師匠か。若いのに良く教えている。俺の前にこんな奴を連れて来てくれた事を感謝する」


 なんだよ!亡国ってどこだよ!?亡国の事聞かれたら答えられないぞ?ここは話し合わせるしかなさそうだな。


 「俺の剣もまだ発展途上中です。お互いが切磋琢磨して高みを目指してます」


 「お前とは一晩語らいたいくらいだ。話しはここまでだ。ルクス!遠慮せずに撃ち込んでこいッ!!」



 バキンッバキンッバキンッバキンッ……ブシュンッ!



 「ルクス!それまで!!!ダルカスさんも宜しいでしょうか?」


 「俺が・・・俺が剣で負けただと!?・・・・ふははははははっ!!!」


 「どうした!?どうした!?」


 「あれ!?ダルカスさん!?」


 「おい!ハース!ミーア!この俺が剣でやられた!」


 「あのダルカスが剣で負けて笑ってるだと!?」


 「ハースも撃ち合えば分かる!このルクスはこのオギゴ・・・いや帝国の剣聖よりやると思うぞ!がははは」


 「頭がおかしくなっちまったか!?」


 「いーや!俺は至って普通だ。なんなら冴えてるくらいだ!こんなに気持ちの良い負けは初めてだ!衰え?違う。修練度?これも違う。心の底からこのルクスには負けたと言える!それをこの男、トレノが教えてるって言うんだから笑えるよな!上には上がいる!新しい芽は出てくる!面白いな!」


 「ダルカスさん・・・それで評価の方は・・・」


 「ミーア?見て分からないか?誰がなんと言おうととS評価だ。それに3級にしろ!なんなら魔法の方も見てみたいが俺も歳だ。身体が悲鳴をあげている」


 「ダルカスが負けるとはな・・・」


 「あぁ。俺達の時代は終わりだ。ハースも引退間近だな?がはははは!」


 「おいトレノ!一杯付き合え!ルクスもな!嫌とは言わせないぞ?」


 「はは。ありがとうございます」


 「ダルカス様、お手合わせありがとうございました。少し気になる事が」


 また変なこと言うんじゃないだろうな?


 「さっきの撃ち合いの3合目の所で私がフェイントかけたの分かりましたか?」


 「あぁ。分かったが怖い物見たさで引っ掛かってやった。だがそれが命取りだったな。修正が効かなくなった」


 それからルクスとダルカスはまた剣を持ち、ルクスがダルカスのステップの動きの微調整を言い、撃ち合う前の癖がダルカスにはあるらしく、それと撃ち合う瞬間の間合いが近すぎるため逆に威力が弱くなってるらしい。それを実演しながらルクスは教えた。それで最後俺に話しを振ってきた。


 「ダルカス様その動きの時です。トレノ曹長?気づいてるとは思いますがいつも私に言ってくれる無双四段乱れ雪月花の極意はこの動きの終着点と似ていませんか?」


 「何!?無双四段乱れ雪月花だと!?俺の剣はお前達の必殺の剣技と似ているのか!?」


 俺は自分でも忘れかけていた技の名前をまさかこんなギルドの大御所やギルドの看板娘が居る所でルクス・・もといユウコに言われるとは思わなかった。自分で付けた名前だが物凄く恥ずかしいし、なんなら俺はルクスに剣を教えた事なんてないんだが。


 「答えてください!師匠!!」


 いや、どこでそんな演技覚えたんだよ?もうどうでもいい!なるようになれ!


 「そうです。ダルカス様の動きが我々の剣と動きが似ていて実は内心焦っていました。所詮我々の剣は我流に近いですがちゃんと剣の修練を積んだダルカス様の動きと似て間違いではなかった。と安心しました」


 「がははははっ!!!俺の方こそ間違いじゃなかったって事だ!!!だが、この技は無双四段乱れ雪月花と言うのか。今ルクスに聞いて閃いた感じがしたんだがこの事か!ハース!一合だけ付き合え!」


 「おっおい!いきなりなんだ!?」


 「良いからお前は俺の剣を昔から知ってるだろ?変わった俺の剣を見てみろ!」



 「これだっ!!」


 シュッシュッシュッシュッスパッ!


 「ウハッ・・・・・ダルカス・・・以前より剣威が上がっておる・・そして流れるような剣技・・・見事!」


 「すごい・・・・マスター!ダルカスさん!これ帝都ならお金取れるレベルでしたよ!?」


 「ミーア、まだだ。剣に頂はない。そうだろ?トレノ'曹長?'」


 「そうですね。もっと研鑽を積めば新たな技に繋がると思います」


 「若いのにやはり分かっておるな。この技を20年前に知りたかったな。なら俺もまだ高みが見えたやも知れん」


 「ダルカス様もこの無双四段乱れ雪月花の使い手になりました。驕らずに一緒に精進していきましょう」


 「かはははは!この歳でまだ精進か。エルフならいざ知らず・・・だがそれが良い!ハース!このトレノを1級にランク上げろ!俺が補償する!並の魔物なんざ目じゃねぇ。なんならあの技が届くならドラゴンにすら効きそうだ」


 「おいさすがにそれは・・・」


 「かまわん!文句言う奴がいるなら俺が相手しやると言え!その代わり昨日までの俺とは違うと言っておけ!」


 それから何故かランクが上がり早くも1級になりルクスは3級スタートとなった。ギルドでダルカスと俺、ルクスで酒を飲み途中ギルドマスターのハースも加わり色々剣の事を話したりサクソンの事も言ったりして夜前までギルドに居た。


 「それじゃ帰りますのでまた何かあれば寄りますね!」


 「寄りますじゃねー!ちゃんと依頼受けろよ!」


 「がははは!トレノ'曹長!'今度二人で語ろうや?いろいろとな?」




 「さ、俺達も帰るか。それにやたらとバルカスは俺の曹長を強調して言ってきたな」


 「曹長どうでしたか?結果エクセルシオの剣を広める事になりましたよ」


 「まさか計算して言っていたのか?てっきりデタラメに言ってるかと思ったぞ?」


 「まさか。全部これからの布石ですよ。剣を広めダルカスがドラゴンを倒せるかもしれないと言い、実際それで曹長がドラゴンを倒す。誰にも疑われない。それでそんな曹長を誰が放っておきますか?特に帝国なんかが抱え込もうと動くと予想します。帝国内部に入り込みカリホルニウムの採取ができますね」


 「さすがだな。アバターになっても演算能力は落ちてないな」


 「実は演算能力が上がっています。曹長の身体の脳と、今の私の身体の脳で計4つ思考能力があります。だから演算能力も倍になりました」


 「そうか。まあこれからもよろしく頼むよ。ただあの無双四段乱れ雪月花と言う名前が事のほか恥ずかしいんだが?こんな事になるならもっとまともな名前にすれば良かった」


 「男はいつでも子供心でしたよね?覚えてますよ?」


 「あぁ〜!!!恥ずかしい!言わんで良い!!」


 「ふふふ。曹長?これが面白いと言う感情ですね?ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」


 「うん?あぁ。まあそうだな。これからもよろしくな」


 転送で拠点に戻り事情を話したらエルフのユウコが怒り出し二度と2人だけで外出はさせないとブーブー言ってこの日は終わった。

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