ロドリゲス男爵にはタダでは会えない
「トレノ殿湯加減はいかがだったですか?」
「大変に素晴らしかったです!あれなら毎日入りたいくらいですよ!それに風呂の作りが素晴らしいですね!設計した人のセンスが良いです」
「はは!このサクソンの鍛治師のドワーフ族にお願いして作って貰ったのですよ」
それから女達はまだ出てきてなく、出るまでバリスさんに色々街の事を聞いた。サハリン帝国が最近国ごと乗っ取ろうとする動きがあるらしく毎月納めるギルも年々上がっていってるらしい。
その中でこのバリスさんの店が1番売り上げがいい為、嫌がらせをして税金を納めれなくなりなし崩し的に乗っ取ろうとしているのではないかとバリスさんとロドリゲス男爵は考えてるらしい。
「そのロドリゲス男爵とは付き合いが長いので?」
「そうですね。私も一応貴族の端くれですからね。それなりに付き合いはありますよ。本当はロドリゲス男爵は男爵じゃなく公爵だったのですがサクソンが帝国に恭順するに当たって最後まで抵抗したためサハリン帝国が爵位を降格させたのです。ロドリゲス氏は本当に民の事を考えてる優しい方なのです」
「そうなのですね。一度お会いしてみたいです。実はロドリゲス男爵が懸賞を掛けた賊を先日私が捕まえましてね。一度挨拶できればと思っていたのですが難しいでしょうか?」
「なんと!?まさかあの黒虎のヨシュアを捕まえたのはトレノ殿だったのですか!?」
「そうですね。確か黒虎とか言ってました。それに他の貴族の方からも懸賞が掛かってそれなりにホクホクにもなりましたが」
「ははは!正直な方だ!でも良く捕まえれましたね!?トレノ殿は武の方も得意で?」
「いやそれ程ではありませんが運が良かっただけですよ」
「どうもソフィーに剣を教えてくれたみたいで、一度拝見してみたいものです」
それから数分後女達が風呂から出てきてミラは母親を連れてくるとの事で一度退席した。
"このバリスという 男性は本当に裏表がない方のように思います 前頭筋 眼輪筋 頬筋 口輪筋 オトガイ筋 全てに違和感なく喋っています もしこれをバリス氏がわざと作って喋っているなら エクセルシオにバリス氏が居れば トップクラスの役者になれますね"
"そうなのか。良く分からんがまあバリスさんが良い人という事は分かったよ"
それから更に一時間程待っていたらミラとミラの母親が来て晩餐室と言う所に呼ばれまた。ミラの母親はユーリさんという名前らしい。ずっと卑屈になり15分程バリスさんとイルマさんにお礼と謝罪を言っていた。最後に俺の所に来て俺とエルフのユウコにもお礼と謝罪を繰り返した。
「お母さん?もう本当に良いので頭をあげてください。私も大した魔法は教えれてませんので、ただ少しだけミラちゃんより私の方が魔法を上手く使えたので教えただけですので」
「それでも私達は貧民で・・・・」
「人に位は関係ありません。俺はこの国の出身じゃないので貧民や貴族で住む所も行き来できない場所があるなんて信じられないです。ただこのバリスさん達は本当に素晴らしい方です。今日は折角招待されたのでお言葉に甘えましょう」
「そうだよ!お母さん!ソフィーのお父さんやお母さんは凄く優しい人だよ!」
「分かりました。トレノ様やシルビア様。本当にミラをありがとうございます」
ようやくユーリさんが落ち着いて晩餐室に入ったがこれまた見事という言葉以外思いつかなかった。見た事ない料理がズラリと並び調度品、グラス、皿全てが派手だがそれでも嫌らしすぎない絶妙な加減だった。 給仕の方の動きも非常に洗練されてる動きで無駄がない完璧だと俺は思った。
「まずは席に座ってください。今日は私の妻イルマと娘のソフィーに剣を教えて頂いたトレノ殿とシルビア殿とミラ殿を立派に育てたユーリ殿とミラ殿に感謝を込めて・・・乾杯!!」
"どの国でも最初は乾杯をするのですね 不思議です"
"これはエクセルシオ銀河加盟国全てでそうだよな 確かに不思議だな"
「さぁ!みなさん好きなだけ食べて好きなだけ飲んでください!今日は無礼講としましょう!」
"ユウコ!この料理は素晴らしい!エクセルシオにも教えたいくらいだ!全部が美味いぞ!!"
"私には味が分かりませんが 曹長から物凄くドーパミンが出ております"
"本当に美味いからな!ただ酒は少し勿体無い。もう少し蒸留技術があるなら酒精が強い酒が作れるんだがこの惑星の限界かな?"
"鍛治レベルを見てみないと分かりませんがどうなんでしょう"
「お口に合いませんでしたかな?」
「いやいや、どれもこれも一級品に美味いですよ!私も料理をするのが趣味ですがこれには完敗です」
「ははは!さすがのトレノ殿もうちの料理人には負けますか!」
「本当にお世辞抜きで美味いですよ。なんなら作り方や材料を聞きたいくらいですよ」
「トレノ殿は気持ち良い方だ!遠慮せずに食べてください」
「ありがとうございます」
それから俺達は飲んで食べて飲んで食べてを繰り返し楽しい一時を過ごした。
「ではそろそろお開きとします!ユーリ殿も今日は泊まっていってください部屋を用意しておりますので」
「いえそんな私達にそこまで・・・・」
「お母さんっ!?」
「ユーリ様?夜に少しお話ししましょう?ソフィーもミラちゃんにちゃんとお礼を言うんですよ?」
「分かってます!お母さま!」
「では家来の者に案内させます。トレノ殿は少しよろしいですかな?」
「あっ大丈夫ですよ!じゃシルビアまた後でな」
「はぁーい!」
"シルビアの奴も酒を飲んで上機嫌だな"
"一応エルフと知ってる人達ですが 給仕の人達は知らないので隠蔽魔法が解けないか心配でしたが 杞憂でしたね"
「さぁ、こちらにお掛けになってください。本日は楽しんで頂けましたかな?」
「ありがとうございます。はい!楽しい料理に酒、久々に堪能させていただきました。またお呼ばれされたいくらいですよ」
「ははは!そう言ってもらえてこちらも嬉しいですよ。それで妻と娘のお礼の事なんですが・・・」
「え?てっきり私はこれがお礼だと思ってたのでかまいませんよ!?こんなに美味しい物を食べたのは人生で初・・・と言えば嘘になりますが間違いなく私の人生指三本には入りますよ」
「ははは!これまた正直な方だ!ですがそれはそれ。これはこれです。このままなら私の気が治らないのです。ただ正直何をお渡しすれば良いか分からなくてですね。剣も魔法剣のようですし、魔術師って風にも見えないので触媒をお渡しするのもどうかと思いますので・・・」
「そうですか・・・別にこれと言って欲しい物はないのですが私はそんなに魔法が得意ってわけでもないですし、この魔法剣も初めて買ってもらった物なのでイマイチ分かってないのですよ」
「そうなのですか?確かにあまり使い込まれてる形跡はありませんね。ですがかなり良い剣のようにお見受けしますが?」
「購入時はまだこの国の金の価値が分からずに私のツレのシルビアに買って貰ったのですよ」
「あっ、シルビア殿にですか!なるほど。それで受け入れられたのですね。では余計に私は魔法剣をお渡しできませんね」
"ん?何か話しが噛み合わない感じがしないか?"
"確かにそんな気がしますが 気のせいでしょう まだ翻訳が完璧というわけではないので すいません 急いで解析率あげます"
"いや、いいよ。別に喋る事も間違いないみたいだし"
「バリスさんはこの先どうするつもりですか?」
「この先・・とは?」
「元凶がなくなったわけではないですよね?」
「まあそうですが・・・」
そこから俺は話しを聞いただけでもサクソン帝国が経営する商会がどんな規模かどうか分からないが潰してしまおうかと思ってる事を伝えた。俺の倫理観がバリスさんにどう映るかは分からないし、この先この良い人を死なせたくなかったからだ。
それにカリホルニウムの事もバリスさんは知ってそうだしな。だが、奪うような事はしたくないのは事実だ。
「なんと!?あの商会を潰すと!?そんな事他では言ってはだめですよ!?何されるか分からないですから!」
「なんて言えばいいんでしょう・・・実は俺には計画があるのです。ただこれを言えばバリスさん達を巻き込んでしまうのでまだ内に秘めています。その計画は正直このサクソンの街で完結しそうでもあるのです」
「理由を聞きたいですが私めが首を突っ込んで良い事ではなさそうですね」
「できれば巻き込みたくないと思ってます。ですがもし良ければ・・・男爵様に渡りを付けてもらえれませんか?決して失礼な事をしたりするつもりはありません」
"曹長 昔のエクセルシオの歴史で爵位が有った時代では 下の者が上流階級に会う場合は相当の功績または手土産が必要と 知識の泉にデータがあります"
"おっ!ナイス!助かる!ならドラゴンでも狩って手土産にするか?"
"それがどのくらいの 価値があるか分かりませんが エルフ ユウコ様も以前言ってましたね ドラゴンの鱗や牙など天文学的価値があると"
"決まりだな"
「やはりただで会う事はだめですね。私とした事が失礼しました。この話しは聞かなかった事にしてください。それでお礼の事はそうですね・・・またいつか今日のような晩餐に呼んでください」
「ダメという事はないのですが、私もロドリゲス男爵と友達という訳ではないのでして・・・それにこの晩餐がお礼とはやはり些か納得できません。こんな晩餐はトレノ殿ならいつでもお呼びしますし………」
そこからしばらく押し問答が続いたが俺がバリスさんにゴリ押しして納得してもらった。その後部屋を案内してもらい、今後の方針を言うためシルビアの元に向かう。
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