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貴族の舌戦

 「曹長!おはようございます!やっと競売当日になりましたね!」


 「うん?おはよう。ルクスは今日は早いな!?」


 「当たり前です!あれだけ考えた屋台をするのですよ!」


 そうだがなんでこんなに張り切ってるんだ?


 「分かった!分かったって!でもまだ薄暗いぞ!?」


 「焼きそば作りの下処理があります!私は先に例の場所に向かいますので早く来てくださいね!」


 言うて、そんなに人なんか来ないだろう?


 先日、ギルドマスターに場所や行程などを聞いたが貴族の接待や宿の手配など色々忙しく『そんな屋台なんぞ空いてる所ですればよいだろう!?こっちはそれどころではないのだ!』と言われただけだった。


 「トレノ?おはよう!もう起きたの?」


 「トレノ様おはようございます」


 「ユウコ、ミラ?おはよう!さっきルクスに起こされたんだ。ソフィーに頼んでる材料もルクスが取りに行ってくれるとさ」


 「ルクスはこの屋台にかなり気合い入ってるね」


 「そうなんだよ。なんでか分からないけどな。じゃあ俺達も向かおう」


 簡単に準備をして、空いてる所ならどこでもいいと言われたため大広間の端の方にバルさんに用意してもらった軍が使う野営テントを設営した場所に向かう。


 「おいおい!こんなに用意してどうするんだ!?」


 「やっと来てくれましたか!ソフィーに頼み3日分の材料を用意しました」


 『あーしも手伝ったんだから少しは食べさせろよな?』


 「あぁ。この氷はルカが出してくれたのか?」


 『そうさ。肉や草など保存するんだろう?』


 「いやそうだけど、上級のアイテムバックに入れれば時間の進みも遅くなるからわざわざ見せないでもいいんじゃないのか?」


 「曹長は何も分かっていませんね!?なんの材料を使いどのように作ってるか近辺のシェフはここを見にくるでしょう。そして簡単に作れる事も分かるでしょう」


 「それでこの惑星の食を広げると?」


 「御名答!では曹長は肉を薄くスライスしてください!ミラ!シルビア!あなた達は麺作りを手伝ってください!」


 「「はーい!」」


 切り始めたけど本当にどれ程買ったんだ!?ボアの肉だったか!?2頭分くらいあるんじゃないのか!?


 明るくなり始めたか?他の人達も出始めてるな?


 「おう!兄ちゃん!お前達は何作るんだ?」


 「おはようございます。異国の物を作ろうかと思いましてね」


 「へぇ〜。その木皿に入ってるやつか?よければ一つ買ってもいいか?」


 「いいですよ。銀貨一枚よろしいですか?」


 「おう!少し寝坊しちまってな!?朝飯食うの忘れたんだよ!今日は大忙しだぞ!なんせ貴族の従者や噂じゃ帝国の国王まで来るって噂だぞ!」


 おっ!いい情報だな。どんな奴か見てみたいな。


 「ルクス?一つ売れたぞ!」


 「ありがとうございます」


 「オレはシンプルに昔からボアの串焼きを作ってるんだ!よければ兄ちゃん達も食べてくれよ!一本銅貨一枚だけどサービスして四本銅貨三枚にしてやるよ!」


 「ありがとうございます。いただきます。ルクス、シルビア、ミラ?ボアの串焼きだぞ!」


 「ありがとうございます!いただきます!」


 「なっ、なんだ!?これは!?珍しい麺だがボアの味がするぞ!?」


 「さすがボアの串焼き作ってるだけありますわね?」


 またルクスの変な話し方かよ・・・。どうなることやら・・・。


 「こっ、これは姉ちゃんが作ったのか!?」


 「発祥は遠い遠い国ですが私が作りましたよ。ボアの骨から出汁を取り、ボアの肉と緑野菜を焼き脂を中和させ、醤油ソース、塩、胡椒、酒で臭みを省き炒めるだけですよ」


 「おっ、おい!?部外者の俺に作り方まで・・・」


 「いいのですわよ?真似できるならしていただいても?」


 「ルクスッ!!!その笑顔でその言い方はだめだ!」


 「えっと・・・」


 「俺か?俺は串焼きのロウだ」


 「ロウさんですね。ロウさんも串焼きに余裕があるならこの焼きそば作ってもいいですよ?結構美味いでしょう?ボアだから串焼きの材料と小麦があれば麺も作れますし」


 「その事はまた今度教えてくれ!銭なら払う!」


 「いやまぁこのルクスに聞いてください。銭も入りませんよ」


 「そんなわけにはいかねぇ〜!自慢ではないが串焼きのロウと言やぁ〜帝国でも貴族が買いにくるくらいなんだぞ!?その俺がただでレシピを聞くわけにはいかねぇ!絡みつく麺に絶妙な塩加減、食感が残る野菜!全てが満点だ!」


 調子の良いおじさんだが案外この人も大物か?仲良くなっておくか?


 「まあそれは追々に。三日間頑張りましょう!」


 それから一時間程経ち往来の人も普段の四倍くらい増えてきた。最初は物珍しさに立ち止まり見て行くが3人で一つと売れ行きはそこまでだった。


 横のロウさんの串焼きは好調も好調のようだ。


 「ルクス?この木箱の下にライトボールを行使してるんだろう?疲れてないか?」


 「保温のために行使していますが大丈夫です。お気遣いありがとうございます」


 張り切って作ってたけどあまり売れないからガッカリしてるのかな。


 「ミラが呼び込み致します!ルクス様!頑張りましょう!!」


 健気だな。俺も一肌脱ぐか。


 「さぁ!さぁ!異国の飯が銀貨一枚!銀貨一枚ですよ!!!食べて後悔はしません!さぁ!さぁ!」


 「お、お兄さんも!そこのお姉さんさんも!是非食べてください!美味しいですよ!!!」


 「やぁ!トレノじゃないか!」


 「あっ!ルインさんおはようございます」


 「こんな所で・・・君が屋台?お金に困ってるのかい?」


 「いやいや、趣味でしてるだけですよ!」



 「おっおい!?あそこに居るのって…」「あの赤髪の冒険者達は…」「帝国 エリンダ嬢お抱え暁のパーティじゃないか!?」



 "曹長?案外この暁のパーティーとやらは有名ぽいですね?往来の冒険者達がヒソヒソ話しで見ていますよ"


 "そうみたいだな。俺も軽く見ていたよ"


 「折角だから頂こうかな?一ついいかい?」


 「折角なら人数分買ってくれよ!?」


 「ははは!そんなに自信あるっのかい?ならこれからの事もあるからね?3つ貰おうかな?」


 「そう言えばステラさんは?」


 「ステラは別件でね?これ以上は勘弁してくれよな?」


 「銀貨三枚だね?はい・・・・こっ、これは!?」


 「アセス!早く食べてみろ!美味い!美味いぞ!!」


 「どれどれ・・・うっ・・・美味いッ!!なんだこれは!?ただの麺ではないな!?」



 「暁のパーティー達が驚いてるぞ!?」「あの麺がそんなに美味いのか!?」「貴族お抱えの冒険者をも唸らせる物か!?」「俺達も買おうぜ!銀貨一枚なんか安いぞ!?」


 

 「ボアから出汁を取り肉と野菜を炒めーー」


 「兄ちゃん!!それを二つくれ!!」


 「こっちも四つくれ!!!」


 「ありがとうございます!はい。銀貨二枚にこっちは四枚と・・・ありがとうございました」


 「美味いッ!!美味いぞ!!」「この味は食べた事ない!ボアの臭みがまったくないぞ!!」


 「おや?忙しくなったみたいだね?これはまた食べたい物だね!じゃあトレノ?またな!頑張ってな!」


 「あぁ」


 あのルインって奴中々だな。わざとに大袈裟に言った感じがするな。


 「おい!二つくれ!」「私も一つください!」


 「ルクス!良かったな!いっぱい客が来てくれるぞ!」


 「曹長のお知り合いのおかげです!」


 それから午前中だけで最初一日の想定していた分が早々に売り切れになってしまった。


 「えぇ〜!?こんなに並んだのに売り切れなの!?」


 「そうだ!そうだ!30分も並んでたんだぞ!?」


 「お客さん!落ち着いて!ルクス!?どうする!?」


 「明日の分も出しましょう!明日以降はソフィーにお願いしてみます!」


 「分かった。みなさん!すぐ作りますのでもう少しお待ちを!ミラ!シルビア!悪い!もう少し頑張ってくれ!こんなに忙しいとは思わなかった」


 「いいですよ!ミラは楽しいです!」


 「私も商売が人の笑顔がこんなに気持ちいいのは初めてです!」


 俺もこんな事初めてだが商売か・・・。ルクスが作ってくれているが美味しいと言われれば自分のように嬉しいな。


 "曹長?ありがとうございます"


 "うん?なにがだ?"


 "エクセルシオの艦隊イベント思い出しますね。あの時はまだ三兵卒で曹長は雑用でしたが休憩時の一般客達の笑顔を思い出しますね"


 あぁ、あの時の事か・・・。あの時はミシェル大佐の秘密スペシャルコーヒーと訳の分からない出店の手伝いをさせられたが・・・。


 ひたすらコーヒー豆を削らされたよな。子供にはフルーツジュースを出したりもしたな。懐かしい・・・みんな元気にしてるだろうか・・・。惑星が違えど人間はどこでも笑顔は同じか・・・。


 "ルクス?頑張ろうな!"


 "はいっ!"



 昼が来る前に往来の人達より一際目立った服装の人達が増えたように思う。多分あれが貴族達だよな?貴族がこんな所も歩くんだな。


 「ほっほっほっ!ロイの串焼き・・・こんな所でも頑張っておりますか?」


 「ナイル男爵様!!お久しぶりでございます!」


 「良い!良い!並んで私も食べると致しましょう」


 本当にロイさんの所は貴族も来るんだな。しかもあの貴族はちゃんと列に並ぶんだな。オカマっぽい感じもするが・・・。いや、それは人それぞれか。


 「従者の分も合わせ10本頂こうかしら?」


 「あっ、ありがとうございます!いつも贔屓にしていただき」


 「良い良い!私は美味しいものに目がなくてね?おや?隣の屋台・・・見た事ありませんね?」


 「はっ。トレノと言う新しい主が作るやきそばと言う異国の料理だそうです」


 いやロイさん?異国と言われれば問われてしまうじゃないか。


 「こちらはあまり人が居ませんわね?」


 「すいません。既に二日分の材料を消費いたしましてーー」


 「曹長!三日分の材料を崩しましょう。男爵様にお食べになってもらいましょう」


 「おや?曹長とな?あなたは元軍のお方でしたか?」


 ルクスもまたか・・・。敬称は気をつけろとあれ程言ったのに・・・。


 「盗み聴きするつもりはありませんでしたがナイル男爵とお見受け致します。私トレノと申します。曹長と呼ばれておりますが私が軍に憧れを持っているだけで特段関係はございません」


 「その立ち振る舞いで関係ないと?ほっほっほっ!私なら気にしませんが他の貴族には気をつけるのですよ?その振る舞いが何よりの証拠ですよ?線は細いですが服の上からでも分かる締まった身体・・・指に剣ダコも・・・」


 なんだ!?なんだ!?なんでこのオカマ男爵はここまで見るんだよ!?


 「はい!ナイル男爵様!お待たせしました!特別に一つ作りました!私、曹長の秘書をしておりますルクスと申します!」


 「いやぁ〜すみませんなぁ!イイ男を見るとつい!ついですね!ほっほっほっ!ありがとうございます!いただきます・・・・これは!?あなた達も食べなさい!」


 「ナイル様!おいしいでございます!」


 「おや?ナイル男爵ではございませんか?」


 「ヴォルガ男爵ですか!?ほっほっほっ!奇遇ですな?」


 「男爵とはいえ、貴族が立ち食いとは些かお見苦しいと思いますが?」


 「ほっほっほっ!民目線に立ってこそ民意が分かると思っておりますので」


 「そうでございますか。では私はこれで。こんな下賤な輩達と同じ物など食いたくはありませんでな?しかたなく競売のためにこの広場に来ただけですからな」


 「存外に美味いですよ?この麺など私は初めて食べますが帝国の宮殿の料理並みに美味しいですよ?ほっほっほっ!」


 「今のは聞かなかった事にしておこう」


 「ほっほっほっ」


 なんか壮絶な舌戦だな。あのヴォルガ男爵か?ないな。このナイル男爵ってのは少し好感が上がった気はする。



 「皆皆様方!お待たせ致しました!これより競売を始めたいと思います!場所も場所ですので簡易的なイスしか用意出来なかった事はご容赦ください!」


 おっ!?やっとか!?ってかめっちゃ人だかりか凄いな。端から見えるかと思ったけど全然見えないや。


 「勿体ぶっても面白くないでしょう!始めます!まずはランプーから始めます!」


 


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