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誰何

 僕の仕事は交渉人。今日も依頼が舞い込んだ。最近巷を騒がせている、女子高生連続首外し事件の案件だ。

 現場のタワーマンションにバイクを乗り付ける。向かうは五十二階。孤爪家のご令嬢、茜のフロアへ。

 コンシェルジュを伴ってゲートを潜り、高速エレベーターを降りると、警官が玄関周りに集まっていた。物々しい空気だ。

「あんたは?」

「交渉人です。被加害者の状況は?」

 初老の刑事が進み出て苦い顔をする。彼に続いてリビングに立ち入った。

「まあ、こんな具合だ」

 制服姿の茜が、四肢をだらりと投げだしてソファに座っていた。無論、首から上は清々しいほど空っぽだ。

「それで、頭は?」

「今んとこ手掛かりゼロだ。踏み込んだ時はドアも窓も全部閉まっててな。外も回ったが窓から投げた線もねぇ。交渉もへったくれもねぇなあ」

「まずは頭探しですか……となると、動機が肝心ですね。頭を切り離したかったのか、身体を引き離したかったのか」

 首謀者が変われば意図も遣り口も変わる。

 単に頭が重いからという理由なら交渉の余地あり。そんな重いものを遠くへやるはずはないし、案外近くで見つかるものだ。しかし、顔を見るのも嫌という場合だと、ばらばらに切り刻んでトイレに流すって手もある。そうなると僕の手には負えない。

「この部屋、暑いですね」

 どうやら空調の故障で、この後修理業者が入る予定らしい。コンシェルジュによると、故障の確認で訪問した際、茜の頭はまだ首と繋がっていて、序でに宅配便を頼みたいと言ったそうだ。

「その荷物は?」

「気付いたら玄関前に。既にクール便着払いで集荷済みですが……」

 それだ。むしむし暑い地上五百メートルとひんやり涼しい冷蔵車。急いで宅配業者に問い合わせる。

「はい、そのタワマンから――ええ、孤爪茜宛てにスイカの――宅配指定時刻は一時間後――はい、今から行きます」

 待っていればここへ届く荷物だが、待っていたら僕の商売上がったりだ。

 荷物を追跡してバイクを走らせる。宅配トラックの積み荷から件の箱を見つけ出した。

「初めまして、茜さんですね?」

 大型段ボール箱の中は、高級枕と毛布がみっちり。そして中央に茜の頭。まるでホテルのベッドルームだ。

「あなたの頭と交渉しにきました。帰りましょう、身体の元へ」

「丁度良かった、寒いなと思ってた所だったの」

 

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案件難易度:安易

動機:避暑

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