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クラス召喚されたけどそれどころじゃない

作者: 燦々SUN

「おお! 成功だ!」

「素晴らしい! こんなに多くの使徒を召喚できるとは!」


 石畳の大広間に、多くの人間の歓声、そして呼び出された者達の戸惑いの声が上がった。


「ようこそおいでくださいました、使徒の皆様。皆様の困惑されるお気持ちはよく分かります。ですがまず、わたくしの話を聞いていただけませんか」


 揃いの学生服を着た30人ちょっとの少年少女と、ワイシャツを着た1人の若い男性教師。彼らを囲うように立っていた、見るからに魔術師といった雰囲気のローブ姿に杖を持った人々の中から、一際豪華な服装をした老人が進み出る。

 そして語られるのは、凶悪な魔王が台頭し、魔族を率いて人類への攻撃を開始したとかいうファンタジーなお話。更には、それに対抗するため王国に伝わる秘術を用いて、異世界より神々の使徒を召喚したとかいう身勝手なお話。


 当然、男性教師始め多くの男子生徒が抗議の声を上げ、女子生徒は悲痛な声を上げて場は混乱する。しかし、老人が杖を掲げると、その場は急速に静まった。


「コホン、失礼。少々鎮静の魔術を掛けさせていただきました。まあ、とりあえずお1人ずつこちらにいらして、この水晶に手を置いていただけますか」


 老人が指し示す先には、石の台座に置かれた大きな水晶玉があった。

 生徒達が迷った様子で互いを窺い合う中、1人の女生徒が前に進み出た。「女は度胸!」と言わんばかりに胸を張って水晶に手を置いたのは、この召喚されたクラスの委員長を務める少女だった。

 すると、水晶から光が放たれ、ホログラムのように空中に文字が表示される。



~~~~~~~



井沢真美子(いざわまみこ)

種族:日本人

職業:学生、委員長、聖女

称号:万年委員長、呼び出されし使徒

………………



~~~~~~~~



「おお! 聖女様!」

「見ろ! 素晴らしいステータスだ!」


 周囲の魔術師たちは、ステータスの下の方にズラズラと表示されている数字やスキル名に盛り上がっているが……その場にいた学生達の気持ちは、大体2つに集約されていた。

 即ち、「委員長って職業だったんだ……」と「称号“万年委員長”ってなんぞ?」である。

 委員長本人も、その称号を眺めながら微妙な顔をしている。


「ささ! 使徒の皆様! 続いてこちらへ!」


 しかし、すっかりテンションの上がった様子の老人に促され、順々に水晶の下へと向かい、ステータスを表示させていく。

 その度に周囲の魔術師たちが盛り上がり、学生達もそれなりに楽しそうな反応を見せていたのだが……1人の男子生徒がステータスを表示させた瞬間、学生達は一気に沈黙した。



~~~~~~~



熊沢明良(くまざわあきよし) (生まれつき中年)

種族:日本人

職業:学生、小説家、魔術師

称号:呼び出されし使徒

………………



~~~~~~~~



「「「「「うまちゅう先生!!!?」」」」」

「え!? 『レべチ転生』の!?」

「嘘! この前アニメ観たんだけど!?」


 一部の学生が大盛り上がりし、あっという間に熊沢少年はクラスメート達に取り囲まれる。しかし、サプライズはそこで終わらなかった。



~~~~~~~



大池佐和(おおいけさわ) (ざわっちぃ)

種族:日本人

職業:学生、漫画家、僧侶

称号:呼び出されし使徒

………………



~~~~~~~~



「「「「「コミカライズ担当者だと!!?」」」」」

「え!? ざわっちぃ先生!?」

「「「「「原作者知らなかったのかよ!!!」」」」」


 ここ数年で最も売れてるweb発作品の原作者と漫画家の組み合わせに、クラスはますます盛り上がる。

 そんな中、水晶の前に立ったのは最近転入してきた時期外れの転校生。とある1人の男子生徒にやたらと執着する、天真爛漫で天然にエロい外人美少女だった。

 否応なく注目を集める転校生の登場に、一部の男子が目を向け──



~~~~~~~



ラナ・ムムル・エルベール

種族:エルベール星人

職業:星王女、学生、占術師

称号:星を継ぐ者、呼び出されし使徒

………………



~~~~~~~~



「「「「「エッチな宇宙人さんだぁーーー!!!!」」」」」


 一部男子、大盛り上がり。それに対する女子の軽蔑の視線がエグイ。男女の温度差がすごいことになっていた。

 そんな中、次に水晶の前に立ったのは、“美少女”と言うよりは“美人”あるいは“麗人”という表現が相応しい、凛々しく端整な容姿をした長身の女生徒。



~~~~~~~



関堂玲(せきどうれい) (天雅(てんが)

種族:日本人

職業:学生、ホスト、聖騎士

称号:夜の帝王、呼び出されし使徒

………………



~~~~~~~~



「「「「「キィヤァァァァーーーー!!!!」」」」」

「女の子なのにホスト!!? “夜の帝王”ってどういうことなの!?」

「玲様! いいえ! 天雅様ぁ!!」


 女子大興奮。男子引いてる。一瞬にして温度感が逆転していた。

 凄まじい盛り上がりを見せる学生達の中、1人のぱっと見地味な男子生徒が、意味ありげな笑みを浮かべながら水晶の前に立った。

 表示されたステータスに、学生達の盛り上がりに付いていけなかった魔術師の皆さんが「おお!」と声を上げる。


「勇者様だ! 勇者様が現れたぞ!」

「なんという凄まじいステータスなんだ……!!」


 これはさすがに無視できず、学生達も一旦そちらを向いた。そして、目に入ってきたのは……



~~~~~~~



田中一朗(たなかいちろう)

種族:日本人

職業:学生、勇者

称号:再び呼び出されし使徒

………………



~~~~~~~~



 他の生徒とは、少し違う称号だった。


「フッ、気付いたようだな……そうさ! 実は俺は、二周目なのさ!!」


 満を持してと言わんばかりに、クラスメートに向かって堂々と宣言する男子生徒。それに対する反応は……


「ふ~ん」

「強くてニューゲーム乙~」

「あ、あとでいい感じの攻略情報教えてね~」


 ビックリするほど素っ気なかった。名乗り出た勇者くんが、「あ、あれ……?」と拍子抜けした様子で棒立ちになる。

 そんな彼に憐みの視線を向けながら、その友人のこれまた目立たない地味な男子生徒が水晶に手を置いた。途端、勇者の登場に湧き上がっていた魔術師たちが怪訝そうな声を上げる。


「ん? なんだこのステータスは?」

「一般人より貧弱ではないか……いや、そもそもあの称号は?」



~~~~~~~



佐藤勇気(さとうゆうき)

種族:日本人

職業:学生

称号:巻き込まれし者

………………



~~~~~~~~



「使徒ですらないではないか。なんだこのゴミは」


 侮蔑も露わに老人が鼻を鳴らした瞬間、クラスでオタクと呼ばれる男子達が一斉に声を上げた。


「こんの愚か者がぁ!! 貴様らの目は節穴かぁ!!」

「控えおろう! この方こそは、真のチートを約束されし“巻き込まれ召喚者”なるぞ!!」


 さながらご老公をお守りする従者のごとく、佐藤少年をガッチリとガードする。さっきの二周目勇者くんとは、扱いが雲泥の差だった。

 魔術師たちが目を白黒させ、勇者くんがひっそりとフレームアウトする中、おずおずと1人の女生徒が水晶に近付く。


「お、次は青山さんか」

「称号に“学園のアイドル”とか出たりするんかな?」


 学園で一番の男子人気を誇る美少女に、男子達の期待が高まる。そして、表示されたのは……



~~~~~~~



左右田可奈美(そうだかなみ)

種族:日本人

職業:主婦、学生、霊媒師

称号:呼び出されし使徒

………………



~~~~~~~~



「「「「「………………」」」」」

「……え? は? 主婦?」

「え? え? 左右田、って……まさか!?」


 その場の学生全員の視線が、この場にただ1人いる男性教師に向いた。

 生徒達の視線を一身に浴び……男性教師は、思わずといった様子でスッと視線を逸らした。


「左右田ぁ!! 貴っ様ぁ!!」

「こんの淫行教師がぁぁーー!!」

「このロリコン野郎! 俺達のアイドルを返せ!!」


「キャーー!! 禁断の恋!?」

「学生結婚!? しかも相手は教師!? キャーイヤー!!」

「マ~ジで? 2人ともやるぅ~!」


 反応は、男女で綺麗に二分された。嫉妬と怨嗟に満ちた声を上げる男子、好奇とトキメキも露わに黄色い悲鳴を上げる女子。

 その頭上で、突如黒い渦が発生した。


「こ、この禍々しい気配は……まさか!?」

「バカな! なぜここに!?」


 禍々しい気配を放つ黒い渦を見て、驚愕の声を上げる魔術師たち。彼らの見つめる先で、黒い渦の中から曲がりくねった角と深紅の瞳を持つ美丈夫が出現した。


「魔王……!! どうやってここに!?」


 老人が身構えつつ絞り出すようにそう叫ぶと、宙に浮かぶ美丈夫はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「クッ、フハハハハ!! なに、貴様らの使徒召喚の術式につけ込み、我自身を召喚に割り込ませたまでよ。さ~て、忌々しい異界の使徒共よ。成長する前に、この場で殲滅してくれよう!!」


 邪悪な笑みを浮かべ、魔王は眼下の天敵たちに殺意を向ける。が……


「そこをどけぇ! 俺はそのクソ教師を殺さなければならないんだぁ!!」

「うっさい男子! 教師と教え子のラブロマンスに余計な野郎はいらないのよ!!」

「せめて一発殴らせろ!」

「可奈美に最初っから相手にされてない男子は黙ってなさい!!」

「うるっせぇ! 余計なお世話だこのブス!!」

「あ? やんのかゴラァ!!」


 ガン無視である。そもそも出現自体に気付いていなさそうである。

 自身の存在を完全に無視されるという生まれて初めての経験に、魔王は呆気に取られる。その肩に、不意に横からポンと手が置かれた。


「分かるぜ、その気持ち」


 当然のように宙に浮きながら魔王に肩ポンしたのは、我らが二周目勇者くんだった。その瞳に、魔王は目の前の少年もまた同じ悲しみを背負う者だと理解し、哀切に満ちた表情になった。

 そんな魔王に、勇者くんは哀愁を漂わせた表情で頷きかけると……当然のように、魔王の腹に光り輝く剣を突き刺した。


「は?」


 魔王は呆然と自身の腹部を見下ろし、その表情のまま数秒で灰となって消える。

 所詮は一周目魔王。既に魔王討滅の経験のある二周目勇者には勝てるはずもなかった。

 直後、大広間に再び光が溢れ、役目を果たした30数名の召喚者達は、1時間も経たない内に元の世界へと送還された。


「お、帰ってきた。ちょうどいいや。このことは校長先生に報告させてもらうぜ!」

「やってみなさいよ! この学園の理事長はあたしのおじいちゃんよ!」

「ステータスにも載ってない設定をこんなとこで出してくんじゃねぇ!」


 しかし、その召喚されたことで生じた波紋は大きく……しばらくは治まる様子を見せないのだった。




 ちなみに、思わせぶりだった巻き込まれ召喚者の佐藤少年は、結局最後まで空気だった。

エッチな宇宙人さんと聞いて、角が生えてる方を思い付くかしっぽが生えてる方を思い付くかで、その人の年齢がバレると思う。

ちなみに作者はしっぽが生えてる方でした。

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― 新着の感想 ―
これは先生を主人公にしたラブコメを書いて欲しいかも?
[良い点] wwww、賑やかなクラスですね。
[気になる点] 角の宇宙人もしっぽの宇宙人も 両方とも思い浮かべた上に 両方とも原作の連載をリアルタイムで読んでいる 俺はどうすればいいんだ?
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