~?side~「兄になった日」
自分の妄想を書き込んでいます
ある少年は幼い時に不思議な夢を見た。
気が付くと満天の星空の下に立っていた。足元には薫り高いサフランが咲き乱れている。風も吹かず只々花々のむせ返るほどの芳醇な匂いで満ちた此処はどこなのか少年には分からない。辺りを見渡し少し歩いてみたが景色はずっと同じ景色が広がるばかり。
人の気配もないがふと誰かから見られている気配は感じるが、途切れ途切れでまるで順番に自分を品定めしているように。人から見られることには慣れているが、こうも複数の人間に品定めされるなどいい加減気が経ってきた。
「もう良いだろう。何処から見ているのかは知らないが出てきたらどうだ。」
気づかぬうちに腰元にあった愛用の剣に手を添えた瞬間に空に眩い光と共にオーロラが瞬く間にかかった。あまりの眩しさに眼を瞑ると同時に眼の前に人の気配が下りてきた。
美しすぎる女性が見覚えのある笑顔と共に此方を見つめている。両親と共に礼拝に訪れた聖堂でみた女神そのもの。その彼女の手には一輪の花。
微笑みを浮かべこちらに差し出してきた。
「この花は?」
見たことも無い花を受け取り間近で見て見るが記憶にないものだった。
一体なぜこの花を渡してきたのだ、と彼女の顔を見る。
「貴女に世界から祝福を差し上げましょう。その花から愛されることが私達からの贈り物です。」
すると小さな光の粒が花にまとい段々と小さな幼子に変わったのだ。
自分にできる筈もない妹ができた。
産まれたばかりのそれはとてもとても小さくそれでいて暖かい存在だった。
純白のシーツに包まれた存在は比喩ではなく本当に輝き眩しかった。小さく産声を上げ涙で潤むアンバーの瞳は同じ血筋を証明していた。
現実には妹などいないのに夢の中の自分は小さい存在に心惹かれていた。なんとも小さい手で自身の指を握ってくるのだろう。同時に怖くなってきた。悪夢を見ているのか。自分の腕で眠っているのは丁寧に職人が磨き上げた至高のガラス細工なのだ。
少しでも重さを与えてしまえば一瞬で壊れるだろう。
夢の中の母は言った。兄なのだから彼女を守り慈しみ片時も離すな、と。
夢の中の父は何も言わなかったが、その瞳からは母以上に妹を絶対に守り愛せと語っていた。
普段ならば「何故自分」などと文句の一つでも言っているはずが夢の中だからか、はたまた自分の意識がそうさせたのか分からないが大きく頷いてた。1番の
段々とこれが夢なのか分からなくなってきた。