【コメディー童話】デレイラ「帰らせて下さい!」
子供の夢を壊す童話です、お子さんの手の届かない場所に保管して下さい
魔法使いのお婆さんにお姫様のようなドレス姿にしてもらい、ピーマンの馬車で連れて来られた先は、お貴族様達が集う晴れやかな世界
そう私は今……お城の舞踏会場に居ます
───なんでこうなった!!
いやいやいやいや、無理ですからね!
一応私は貴族の娘ですけど、妾の子ですからね!家ではメイドとしての教育しか受けていないのですからね!
最低限の礼儀作法は知ってますけど、踊りなんか習ってないんですからね!
想像してみて下さい
台所で食事の下準備をしながら、「今夜はお城で舞踏会かー……いいなー、私も王子様と踊ってみたい、きっと素敵なんだろーなー」と、妄想をポロっと溢したとします
すると、何の脈絡もなく現れた魔法使いのお婆さんにドレス姿にされて、貴族様で溢れる舞踏会場へ放り込まれました。
楽しむ余裕あると思いますか?
───あるわけ無いでしょう!!
周りは知らない偉い人ばかりなんですよ!
うっかり身分がバレたら、良くて投獄、悪くて泥棒や暗殺者と疑われて処刑ですよ!
どこに楽しむ余裕があると言うのですか!!
……控え目に言って、あのお婆さんは悪魔ですね
妄想は頭の中で楽しむ物であって、実現させる物ではありません
妄想の中の私は世界一の美貌で踊りも上手ですけど、現実の私は踊りなんか知らない小娘なんですからね!
だいたい一人でどうしろって言うんですか!?
周りは貴族様ばかりで、当たり前ですが知り合いなんて……そうだ、腹違いの姉のお嬢様方が来てるはず!助けを……
ってダメですね
こんな豪華なドレス姿を見られたら絶対に、「そのドレスはどうしたの?」「どうやって城に入ったの?」と聞かれます
「魔法使いのお婆さんに、魔法でドレス姿にされて、バッタとピーマンの馬車で連れて来てもらいました」と言って信じて貰えると思いますか?
私なら鼻で笑いますよ
そして、お屋敷のお金を盗んだと疑われかねない……
…………なんとか自力で脱出する方法を考えなきゃ、軽く死ねますね
だいたい門番は何をしていたのですか!招待状も持たない小娘の侵入を許すとは職務怠慢ですよ!
今すぐ引っ捕らえて外に放り出して下さい!!
なーんて、内心大騒ぎしましたけど
実は、お城を抜け出すのはそれほと難しい事ではないんですよね
入る時は状況に付いていけず、流されるままに入城してしましたけど、職務怠慢な門番は何も言わなかったのです
ならば、出て行く時も何も言われない……はず
さぁ日常へ帰りましょう、あの扉を抜けたら外へ行けます
ありがとう魔法使いのお婆さん、絶対にもう関わり会いたくありませんけど、貴重な体験が出来ました
この豪華なドレスやアクセサリーは慰謝料として貰っておきますね
──しかし運命は、それを許してはくれませんでした
もう少しで出口っ!という所で声を掛けられたのです
「待ちたまえ、そこの美しいキミ」
あらあら流石は舞踏会と言う名の集団お見合いですね、後ろで誰かがナンパされてるみたいです
なんとなく私に声を掛けてる気もしますが、きっと自意識過剰でしょう
……気付かなかった振りをして、早足で逃げましょう
「待てと言っておろうが!」
ギュッ
腕を捕まれました!
どうしましょう、どうしましょうo(T△T=T△T)oどうしましょう、どうしましょう
混乱して動きが止まってる私の腕を、後ろの彼はクイッと引っ張ると、クルッと私の体は半回転させた
向き合う私と綺麗な少年……
───やだ可愛いっ!?
まるでサファイアのような青色のふわふわな髪に、ちょっとタレ目がちですけどエメラルドグリーンの瞳、私より背が低くいですけれど、ちょっとぽっちゃりした顔が保護欲を湧かせます
私より少し年下かな?十二歳くらいかしら、もろ私のストライクゾーンど真ん中ですよ!
あー、ふわふわな髪をナデナデしたいのです!
「やはり美しい……すまない、どうしても貴女と話がしたくて乱暴な真似をしてしまった」
「……(パクパク)…………(パクパクパクパク!)……(パーークーーーッ!?)」
喋れない!!
お気になさらずにと言おうとしたのに、不自然な程に声が出ません!
えっ何で?舞踏会へ来るまでは普通に喋れてたのに!?
【ふぉっふぉっふぉっ】
(そのゲスな笑い声は、魔法使いのお婆さん!)
【誰がゲスじゃ!……こほん、そうじゃよ私じゃよ魔法使いのお婆さんじゃよ。いい忘れていた事があったから、よくお聞き】
脳内に直接響く声にびっくりした私に、魔法使いのお婆さんはオドケて答えました
私のボケに突っ込んだと言うことは、こちらの声も聞こえてるみたいですね
(今すぐ家に帰してください)
【…………魔法とは代償が必要なのじゃ、所謂等価交換という物じゃな。今回は12時の鐘が鳴るまで、お主の声と引き換えにお姫様にしたから、12時の鐘が鳴ったら魔法は解けてしまうよ、じゃからそれまでに帰るのじゃよ】
(いやだから、今すぐ帰してください)
【では、さらばじゃ!】
(さらばらないで!お願いだから助けて!?)
思いっきり私の心の声を無視した魔法使いのお婆さんは、そのまま通話を切りました
……うん、悪魔で確定ですね
因みに、私が百面相をして悪魔と話をしている最中も、男の子は私を褒め称えながら、ホールの中心へと手を引いて移動しています
この子も相当自分勝手ですね
承諾もしてないのに無理矢理ダンスの輪に連れ出してますよ
「さあ踊ろう」
踊れません!
バカ言わないで下さい、庶民が踊れるわけないでしょう!
私の内心を他所に、男の子は私の腰を抱き締めて踊り始めました
ちょっ、何を勝手に踊り始めてるんですか!
──その時です、慌てて足を踏まないようによろけた私に、不思議なことが起こりました
なんと、私の足が勝手に動き出したのです!
流れるようにステップを踏み、手や体も足に操られるかのように動き、まるで一流のダンサーのように優雅に踊っているではないですか
これはまさか、見取り稽古!
お義姉様方の練習を見ていた私は、知らず知らずの内にダンスをマスターしていたのでしょうか!
……違いますね、この明らかに靴としては欠陥品の、ガラスの靴が勝手に動いているみたいです
滑りそう、割れそう、中身が丸見えのくせに、こんな隠し要素があったとは……後で高値で売れそうですね
私が心の中で値踏みしてる間も、ダンスは続きます
いつの間にか周りで踊る人はいなくなってました、みんな私達のダンスに見とれているのです
男の子も私の超絶テクに誘発されたのか、今の私達は羽が生えたかのように軽やかに踊っています
天井のステンドグラスから、月明かりが私達を───これも悪魔の魔法なのでしょうか?───スポットライトのように照らし続けています
まるで私が主役の舞踏会
いきなり踊れるようになった事と、感嘆の吐息を漏らす人達の輪に驚いて気付きませんでしたけど
目の前で楽しそうに微笑む彼は、サファイア色の髪が月明かりに輝き、本物の天使のようです
───ああ^~素敵
こんな可愛いらしい男の子と踊れるなんて夢のよう……少しだけあの悪魔に感謝したくなりました
普通に生きていたら、こんな体験は一生出来なかったでしょうから……
クルクルと踊る私と男の子
もう周りの視線は気になりません、お互いの顔を見詰め合って夢のような時間を過ごします
でも、どんな素敵な時間にも終わりは来るものです
曲の終わりと共にゆっくりとダンスを終えた私達は、踊り疲れて紅葉した顔をしながらも……名残惜しそうに手を離しました
「……」
「……」
無言でお互いの顔を見ながら、ゆっくりと一歩下がります
ダンスが終わったら、軽く会釈するのが礼儀なのですから……しかし……私達は余韻を反芻するかのように、見詰め合ったまま動く事が出来ませんでした
───きっと同じ事を思っているのでしょう
((こんな素敵な時間を……終わらせたく(ない)(ありません)))
でも、その余韻を打ち破るように、万雷の拍手が鳴り響きます
「「「ビューティフォォォォーーー!!」」」
歓声にビックリして顔を上げると、ホールは熱気に包まれていました
周囲を囲んで見とれていた人達が、名作オペラを見たかのようにスタンディングオペレーションしていたのです
そんな万雷の拍手が鳴り響く中、私達は周りの人達に軽く会釈をすると、その輪から抜け出しました
不思議ですね?
あんなに目立ったのですから、てっきり話し掛けられると思っていたのに、誰も私達に近付いて来ません
これも悪魔の魔法なのでしょうか?
「ふー、少し疲れたな……テラスへ行こう、夜風で涼みたい」
頬っぺたを赤く染めた男の子は、私の返事も待たずに手を引いて歩いて行きます
本当に自由ですね、そんな態度だと女の子にモテませんよ
……でも好都合です、テラスは確かお城の外へと続く階段へ繋がっていたはずです、入城するときに見えましたからね
夜風に涼む振りをして、隙を見付けて逃げましょう!
テラスに着くと、男の子は給士から飲み物を受け取り、私に一つ渡してくれました
ジュースかな?と思って口をつけたら、井戸水で冷やしたワインでした
初めて飲むお酒に思わずムセたのですが、悪魔の魔法は咳払いすら無音の吐息に変えてしまいました
「あっ、これワインだった、えーと……そういえばお互い名前も知らなかったね」
それどころじゃありません!心の中では、ゲッホゲッホ言ってますからね!
喉が渇いていたから一気に飲んじゃったじゃないですか!何してくれてるんですか!
「僕はプリンス・カワイー、この国の王子だ、良ければ君の名前を教えてくれないか」
盛大に心の中で吹き出しましたけど、顔は少し驚いた表情を作っただけでした
王子様がお供も付けずに一人で出歩かないで下さい!この国の防犯意識は本当にどうなっているんですか!初見の女性と踊るのを許してんじゃありませんよ!
こ、こうなっては仕方ありません、私も覚悟を決めました
私はニッコリ笑って、王子様のグラスを持ってない手に、飲み終わったグラスを渡して塞ぐと
一目散に逃げました!
あーばよ、とっつぁん坊や!
目指すはお城の外へ続く大階段、先ずはテラスを走り抜けて、端の階段を降りて真っ直ぐ進みます
後ろを振り返ると、王子様は呆然と立ちすくんでいました……よし!今のうちに距離を稼ぎましょう!
お城の横を走り抜けて、正面の大階段に到着すると、後ろから声が聞こえした
「ま、待ってくれ!」
これは王子様の声ですね、意外にも早く立ち直って追い掛けて来たみたいです
ですが待てと言われて待つ馬鹿は居ません!私は走りにくいガラスの靴を脱ぐと、全力で階段を駆け降りました!
少しずつ後ろの足音が遠ざかっていきます、どうやら身体能力では私に分があるみたいですね
よし、このまま逃げ帰って、ドレスと貴金属を売り払えば私の勝ち!
そう思った瞬間に、お城の鐘が大きく鳴り響きました
ゴーン……ゴーン……ゴーン
十二時の鐘が一つ鳴る毎に、私の身体からネックレスや宝石が消えていきます
それに動揺して、持っていたガラスの靴を片方落としてしまいました
あっ、と思いましたが、足を止める事は出来ません
何故なら最後の鐘の音と共に、着ていたドレスがどんどんメイド服に変わっていったからです
転がるように城門から出た私は、すぐさま近くの草むらに隠れました
魔法で作られたドレスや宝石は全て無くなって、お屋敷で下準備をしていた格好に戻っていました
残ったのは、手に持っていたガラスの靴が片方だけ──あのババアー慰謝料を踏み潰しやがった!
いや、私が勝手に慰謝料として貰うつもりだっただけなんですけどね……でも、あんな大変な目に会って、ガラスの靴が片方だけとか、誠意が足りないんじゃないですかねー!
「くそー、あの悪魔……あ、声が出るっ、て今頃出ても遅いよ!それより慰謝料払いなさいよ!」
はーあ、とタメ息をついて草むらから出ると、私はお屋敷まで歩いて帰りました
はい、ピーマンに繋がれたバッタは見つけましたけど、これでどうしろと?三時間かけて歩いて帰りましたよ!それも裸足で!
途中、誰かを探している衛兵がいっぱいいましたけど、私はさも関係ありませんという顔で通りすぎました
これが私が見た、夢のようで悪夢な一夜の物語です
───
──
─
それから数日は、何事もなく平和な日々が続いたのですが
同僚のメイドの話で、私は悪夢の足音が聞こえた気がしました
「ねえねえ聞いた?王子様がガラスの靴を履けた人を、お嫁さんにすると言ってるらしいわよ」
ウキウキしながら言っているけど、私は目眩を起こしかけましたよ
馬鹿なんでしょうか?私の足のサイズは小さめですけど、同じサイズの人なんて一杯いますよ、それ全部と結婚するつもりなんですか?
ははーん、体のいいハーレム宣言ですね……それにしても多過ぎますよ!
ガラスの靴だけ残ってたのか不思議に思ってましたけど、まさかこうなると読んでたんですか!
くっ、これは隠しているガラスの靴は見付からないようにしないといけませんね!絶対に面倒な話になります!
まー、流石に王子様の結婚相手なんで、私のようなメイドは対象外なんでしょうけど……顔を会わせないように注意しないと!
と、対策は練っていたんですけど、あの悪魔は斜め上にやりやがったんです!
三日後、王子様がお供にガラスの靴を持たせて我が家に来ました
私は(いや、お城に貴族の女性を集めて確認しなさいよ!)と心の中で絶叫しましたが、そこで初めて“ガラスの靴が履けた人と結婚する”と宣言した意味を知りました
隠れて聞いていたのですが、家のお嬢様は一人も履けなかったのです
多分悪魔の魔法でなのしょう、だってお嬢様方の足のサイズは私とほとんど同じなのですよ、無理したら履けるはずなのに履けないなんて、絶対にあの悪魔が何か仕込んでいますね!
これは不味いと感じましたけど、王子様は次の家に行くと言いいました
良かったとホッとした所で、とんでもない事が起こりました
──鳩時計が喋り出したんですよ!
「ポッポー、この家にはまだデレイラという美しい娘がいます、ポッポー、午後二時をお知らせしました」
「ん?まだ娘がいるのか?」
「は?……は、はい居ます!そうです、我が家にはまだデレイラが居ます!すぐに連れて参りますので、暫しのお待ちを!」
王子様が訪ねると、旦那様が慌てて頷きました
ハトォォォォォー!そこは鳩時計が喋った事に疑問を感じなさいよ!明らかに異常でしょうが!
って、突っ込んでる暇はありませんね
ここは台所の床下収納に隠れてやり過ごしましょう
「ポッポー、デレイラは台所の床下収納にいます、ポッポー、午後二時五分をお知らせしました」
ハトてめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
「おい床下だ、すぐに連れて来い!」
「はい旦那様」
……床下収納から出ようとした所を、従者に捕まって連行されました
気分的には罪人です……いえ、実際招待状も持たずに舞踏会に参加して、あまつさえ王子様と踊ったのですから、言い訳のしようがない罪人なんですけどね
ああ、天国のお母さん助けて下さい、ついでにあの悪魔に天罰を与えて下さい
うつむいてドナドナを口ずさんでいた私は、王子様の前に連れて行かれました
息を飲む音に顔を上げると、サファイア色の髪の愛らしい少年が驚きに目を開いていました
「君の名前はデレイラと言うんだね、やっと会えた……さあガラスの靴を履いてくれ!」
余りにも嬉しそうに言うから、思わず「はい」と言いそうになったけど──それは不味い!
だって私は平民なんですよ!そんなのが王子様と結婚したら、絶対に色々と面倒な事が起こりますよ!……実際にどんな面倒が起こるかは、学のない私には分かりませんけど
ただ、貴族が平民との間に子供が出来ただけでも、御家騒動が起こったなんて話は一杯聞いてますよ!というか、私がその平民との子供なんで、色々と黒い話を聞かされて育ったんですからね!
なので、王子様には悪いですけど、ガラスの靴は入らなかった事にします
靴を脱いでガラスの靴へ足の先端を入れますけど、フンッフンッと鼻息だけ荒くして入らない演技をしました
「すみません、私には履けないみたいです」
「そんなはずはない!おい近衛、彼女にガラスの靴を履かせろ!」
「はい殿下……では、おみ足を失礼します」
王子様のお供が私の足を掴みましたけど、意地でも履きませんからね!
フンヌっと全力で抵抗しようとしていたら、逆の足に何かがコツンと当たりました
何?と目線を向けると……バッタに引かれたピーマンの上に隠していたガラスの靴があり、それが当たっていたのです
バッタァァァァァ!あんた何持って来ちゃってんの!帰り道で役に立たなかったんだから、そのまま原っぱでピーマン食っときなさいよ!
「おおー、それはまさしくガラスの靴!」
「やはり君で間違いなかったのだな!」
「殿下、こちらのガラスの靴も入りました!ピッタリです!」
しまったぁぁぁぁ!バッタに気をとられている内にガラスの靴を履かされた!
「え、えっとこれはですね…」
「よくやったデレイラ!流石は私の娘だ、これで我が家も安泰だな!」
だ、旦那様……メイドの修行を始める時に、もう私の事は娘とは呼べないと泣きながら仰っていたのに、手のひら返しですか?
「安泰なのは王家もだ、父上もお喜びになるだろう」
「そうでしたな、魔女殿の選んだ相手に間違いはございませんからな」
朗らかに笑う王子様と旦那様はさておき、今聞き捨てならない言葉が聞こえた
「ま、待って下さい!あの悪……魔法使いのお婆さんを知っているんですか!」
「ん?ああそうか、デレイラは知らなかったか……あの魔女殿はな、王族に最も相応しい相手を見付けて下さるのだ」
「僕の母上は、魔女様に毒リンゴを食べさせられたと仰っていたな」
え?何それ?というか王妃様は毒を食べさせられたの!
「あの時は大変でしたな、結婚するなり魔女殿に賞金をかけて、絶対探し出しなさいと言われましたから」
「代々の伝統だな、だがそのお陰で我が王家には、跡目争いが起こった事が無いのだがな」
「魔女殿には頭が上がりませんな、私もこれでデレイラを、大手を振って娘と呼べますから」
なんかいい話に聞こえるけど、代々私みたいな目に会っている人がいるの!?
というか伝統になるくらい、毎回恨まれる行動をしないでよ!
「さあデレイラ行こう、父上と母上が君を待っている」
「デレイラ、帰って来たら貴族としての勉強を始めるぞ、結婚式までに身に付けなければならない事が、沢山あるからな」
「えっ、ちょっと待って下さい」
なんかトントン拍子に進んで怖い
まさか本当に王子様と結婚させられるの?そりゃ見た目はめちゃくちゃ好みだけど、本当にいいの?
「ああ、服がメイド服のままだったね、途中でドレスを仕立てよう」
「ドレスなら、娘達が詳しいので同伴させましょう……粗相のないようにな」
「「「はい、お父様」」」
お嬢様方、なんでそんなにすっごく優しい笑顔で接するんですか?
もしかして同情されてる!床下収納に隠れてやり過ごそうとしたのを!鳩時計にバラされて、ドナドナ言って連れて来られた私を哀れんでいるの!
待って、同情するなら助けて!小声で「がんばれ」とか「ほら、前向きに考えたら玉の輿だし」と言わずに助けて下さい!
ドレスに着替えた私は、お城で王様と王妃様に会った
王様は喜んでいたのに、王妃様は(また犠牲者が)という顔だった
後日改めて王妃様と会ったけど、即座に“魔女許すまじ”で意気投合したのは言うまでもない
その後逃げ場は無くなったけど、もう結婚に対しては文句を言うつもりはない
私に王子様の妻が勤まるかは不安だけど、みんなが手助けしてくれるみたいなので、何とかなるだろう
……でも、代々続いている魔女探しは私の代でもやるつもりだ
私で最後にしてみせる!絶対に捕まえて、二度と犠牲者を出させない!覚悟しときなさいよ魔女!
「ポッポー、フォッフォッフォッ無駄じゃよ、ポッポー、午後三時をお知らせしました」
とりあえず鳩時計は燃やした
魔法使いのお婆さん「今度は王女様の相手か……よし、猫に変身してあの男の子に無理やり手柄を立てさせよう!」