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最初は友達っていう話でした。7

 「では、さっそく来週から一緒に友達作りを始めてもらいますので」

 「央紀君も友達が必要なの? 」


 「はい、彼も親しくされているご友人等がいないようでして」

 少し伏し目がちに綾女さんが彼女に告げる。

 「そうつまり、央紀君と一緒というわけね」


 「そうでございます」

 そう綾女さんが答えると、

 「分かったわ、私も友達を作る努力をするわ、央紀君一緒に頑張りましょう」

 そう言って俺に向けられた笑顔にますます惹かれていく。

 「下がっていいわ」

 「失礼いたします」

 

 「こちらへどうぞ」

 綾女さんに連れられ、案内されたのは応接間だろうか、和室だった。

 「お座りください」

 俺はこういう時は正座だろうと考えて正座で座り姿勢を正す。


 綾女さんは俺の向かいに座り、

 「どうぞ楽にしていただいて結構ですよ」

 と言ってくれたが俺はそのままの姿勢を続けた。単に崩し方があまり分からなかったのである。

 綾女さんは少し待ってくれたが、俺に姿勢を崩す気がないことを悟ると、口を開く。

 「鳥飼さん、本日はありがとうございました」

 手をついて頭を下げてお礼を述べてくる。

 俺はどのように反応していいのかわからず、


 「いえ」

 とだけ返すのが精一杯だった。

 それに俺は善意で綾女さんの提案に乗ったわけではなく、下心からの協力だったのでそのお礼を素直に受け取ってしまうのは何となくばつが悪いような気がするのだ。


 「それでなんですが、先ほども申し上げましたがさっそく来週から一緒に過ごしてもらいますので」

 先ほど疑問に思ったところはそこである。

 一緒に過ごすというのはどういうことだろうか?


 まさか花陽と一緒にこの家に住むということなのか? やだ、両親にご挨拶しなくっちゃ。

 いやそれよりも花陽はそれでいいのか? 年頃の男子と同じ屋根の下なんて。

 でも花陽も先ほどの話を聞いて受け入れたみたいなので合意はあるということであろう。


 でも花陽の両親に何て説明しようか?

 俺が頭の中でシミュレーションをしていると、こほんと、咳払いがした。

 そう言えば話の途中だった。


 「すいません」と俺が言うと、綾女さんは先ほどの続きを話し始める。

 「ですので、今週中に鳥飼さんには花陽さまの学校に移っていただきます」

 「え? 」

 それは全く予想外の一言だった。思わす素直な一言が口から洩れる。


 だが綾女さんは俺の戸惑いの一言を気に留めることなく話し続ける。


 「失礼ですが、鳥飼さんの現状の学力では花陽さまの学校に編入することは、あと一歩というところです。 時間がありませんので僭越ながら試験当日まで私が勉強につき合わせていただきます」


 話の展開についていけないが、どうやら一緒に過ごすというのは、この家で住みこむということではないらしい。まあ冷静に考えればそうだろうなとは思う。年頃の男女が一つ屋根の下なんて、それなんてギャルゲ? 状態だからな。


 その代わり一緒に過ごすというのは彼女の学校に転入するということらしい。

 確かに思い出すと、綾女さんは「一緒に日々を過ごしていただけたら」みたいなことを言っていたような気がする。

 あれはそういう意味だったのか。

 というか、綾女さんは何で俺の成績を知っているのだろうか? 恐るべし光堂寺である。

 

 それにしても、一緒に過ごさせるということのために転入までさせるというのも十分にやり過ぎな気がしないでもないが。

 まあ、ここまで来て美少女と学園生活を送るチャンスをふいにするのもあれなので、俺は覚悟を決めた。

 「ちなみに、花陽さんが通っている学校ってどこなんですか? 」

 「レヴィン王立学園です」


 はい、無理ゲー。


 レヴィン王立学園、ここレヴィンの国に住むものならば、誰でも知っているこの国一番の伝統校にして難関である。あのお嬢様、美少女な上に頭まで良いとは、どうやら、天は二物を与えてしまったらしい。

 そんな学校に俺が転入? そもそも綾女さんはさっき俺の学力ならあと一歩みたいなことを言っていたが、お世辞が過ぎる。


 実際のところは後10歩くらいの差があるだろう。

 というか、そもそもレヴィンに転入できる制度なんてあるのか?

 俺はその辺のところを綾女さんに尋ねる。


 「実は鳥飼さんの通う学校と、レヴィン王立学園との間で、契約が結ばれまして希望する生徒は互いの学校にいわゆる交換留学という形で編入することができるようになるんですよ。もちろん試験はありますが。鳥飼さんにはその第一号としてレヴィンに受かってもらいます」


 なるほどそんな制度があるのかと一瞬納得しかけたが、おかしい点に気が付く。

 「その制度っていつからあるんですか? 」


 そう、俺自身は学校に通っていてもそんな話があることなど聞いたこともなかったのである。

 「今日これからできるんですよ」

 綾女さんは笑顔を絶やさず答えてくれる。

 いくらなんでもタイミングが良すぎないか? まるで俺をレヴィン王立学園に編入させるために作られたような制度ではないか。 


 なによりその制度ではレヴィン側にメリットがないように思える。


 そう思って、俺が改めて綾女さんを見ると、綾女さんは両目をつぶり一度頷いた。

 俺は綾女さんのその反応をみて確信した。本当に恐るべし光堂寺である。


 「では早速ですが、もうあまり時間もありませんので今日から早速始めていきましょうか」


 にっこりとそう告げる綾女さんの笑顔になぜか俺は恐怖心を覚えた。

 結局、光堂寺の別宅を出たのは、それからさらに2時間後のことであった。

 なお学費等は今の学校に通っているままでいいらしい。

 親にそのことも含めて、レヴィンに転校になるかもしれないということだけを告げると、とても喜んでくれた。

 その後、寝る前に幼馴染の意味だけ調べている途中に寝落ちした。

 こうして俺の人生でもトップクラスにいろいろあった一日は終わりを告げたのである。


今回も読んでいただきありがとうございます。よろしければ、ブックマークや評価、感想等よろしくお願いします。励みになります。

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